蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第十六章 一匹狼の将

16-3 ユミルサイド

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 コルネリア軍がセシル王国へ攻めてきて、ソフィア城付近が戦場になってしまいましたわ。

   わたくしとソフィアさんは、何とか、セシル城から脱出して、それから、わたくしとソフィアさんは、追ってから逃げているところですわ。

 現在、わたくし達はセシル王国にある山中にいますわ。

「はぁ、はぁ、疲れましたわ」

 ずっと、自分の足で坂道を登っていましたから疲れましたわ。わたくしは鳥人族で翼が生えっていますから、空を飛んで行けばよろしいのですが、空からでは敵側に見つかる恐れがある上に、ソフィアさんは鳥人族ではなく、竜人族だから、空は飛べません。

「ユミル様、大丈夫ですか?」
「ええ。それよりも、お父様達は大丈夫でしょうか?」

 どうやら、あの不審者さんが、わたくしのお父さんだったみたいでしたわ。まともに顔を見ていなかったから、お父さんの顔を忘れていましたわ。

「多分、心配ないでしょう。あの方は、賢王と呼ばれていた時代が多分ありましたので、多分、大丈夫でしょう。多分」

 余計に不安になりましたわ。だって、多分を四回言いましたから。

「いたぞ!」

 背後から、人の声が聞こえましたわ。そこには、たくさんのコルネリア兵の姿が見えましたわ。

「ちっ! 追ってか!」

 ソフィアさんは、ナイトを取り出し、その刃から、バチバチと雷を纏っていますわ。

「ユミル様! 私から離れないでください」
「あ! はい!」

 鋭い目つきをしたソフィアさんの背中へ隠れるわたくし。

 わたくしも、ソフィアさんに頼り切りではなく、戦いますわ。鞘に納めている刀を抜こうとしましたわ。

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!」

 どこから、叫び声が聞こえてきましたわ。でも、この声、エドナさんの声に似ているような。

  坂道の上から、何が転がって、こちらへ向かってきています。

「止まらないんだよ!!!」
「え!? エドナさん!?」

 坂の上から、エドナさんが転がってきましたわ。というよりか、何で、エドナさんがこちらに?

 わたくしとソフィアさんは、転がるエドナさんから避けましたわ。あれ? エドナさんが転がって行った先は……。

 ドカーーーン!!!

「ぐわあああああああ!!!」

 転がるエドナさんは、わたくし達のことを追っている、コルネリア兵達にぶつかりましたわ。ぶつかったコルネリア兵達が宙に舞っていますわ。

 肝心のエドナさんはそのまま、転がりながら、坂を降って行っていますわ。

 殆どの、コルネリア兵は、エドナさんが倒してました? ですが、まだ、コルネリア兵が残っていますわ。

 やはり、戦わないと。そう思っていましたが。

 あれ? また、坂の上から、誰が。

「待って~。エドナちゃ~ん」

 さらに、坂の上からカチュアさんが走りながら、降りてきましたわ。

 エドナさんが倒した? とはいえ、その先には、まだコルネリア兵がいますわ。カチュアさんはそのまま、コルネリア兵に突っ込んでしまいますわ。

「ぐわあああああ!!!」

 カチュアさんは走りながら、大剣でコルネリア兵を薙ぎ払いましたわ。

 薙ぎ払れたコルネリア兵は、またもや、宙に舞っていますわ。

 カチュアさんは、そのまま、エドナさんを追いかけていきましたわ。

 それにしても、何で、カチュアさんもいるのでしょうか?

「お待ちください! カチュア殿! エドナ殿!」

 また、誰かが、坂の上から降りてきましたわ。わたくし達から通り過ぎた時に、少し見えましたが、見慣れない方でした。獣のような、耳をしていましたから、獣人族の方ですわ。でも、何となく、レオさんに似ていましたわ。

  成り行きかもしれませんが、何とか、追ってのコルネリア兵を、カチュアさんとエドナさんが倒してくれましたわ。

 それにしても、あの獣人族の女性の方は誰でしょうか? カチュアとエドナさんの名前を言っていたのが聞こえましたから、敵ではないようですね。

「無事か! ユミルに、ソフィア」

 そこには、サリナさんの姿がありましたわ。

「あ! サリナさんですわ。サリナさんも走りながら降ったりしませんですの?」
「何で、私まで、カチュア達に釣られて、やることになるのよ!」
「そんなことよりも、何で、あなた方がセシルに? ダグザに向かったのでは?」
「話は後だ。エドナはカチュアが追いかけているからひとまず、ルナ達と合流しよう」
「ルナさん達もこちらへ?」
「後は、マリンとメリア、スイレンが来ている」
「皆さん、こちらへ来ていたんですね」
「さっき、通り過ぎた、レオ殿に似た獣人族も味方と捉えてもよろしいですか?」
「彼女は、オリーで、若く見えるが、レオの叔母にあたる」
「なるほど。彼女もそれなりの実力は持っているようですね」

 ソフィアさんの指を刺した方を見ると、地面に埋もれている、コルネリア兵がいますわ。転がったエドナさんに押し潰されてしまったのでしょうか?

「あれをやったのは、オリーですね。カチュア殿を追いかける際にさりげなく、コルネリア兵を踏んでいたようですね」
「でも、踏んだだけで、あそこまで埋もれるか? いや、カチュアなら、粉砕できそな気がする」
「カチュア殿も強いですが、彼女からも、とんでもない実力を秘めています」
「さすがは、元傭兵にし、現代、セシル王国に使えるお姫様の側近のことだけあって、素晴らしい戦略眼を持っているね」
「これぐらいなら、英雄と呼ばれていた、あなたなら感じ取れると思いますが」
「あいにく、英雄と呼ばれる前までは、戦いには、無縁だったんだ」
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