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しおりを挟む両親から手紙が届いたのは次の日のことだった。
その内容は「倒れたと聞いて心配している。もしフィオナの都合が合えば、一度屋敷に顔を見せにきてくれないか」というものだ。
手紙の内容にわたしは驚いた。だって実際のところ、わたしと両親の仲はそこまで良い方ではなかったからだ。
わたしとしては別に両親のことは嫌いではない。むしろ両親と仲の良い姉のことを羨ましいと思うほどだ。幼い頃はわたしも両親と距離を縮めようと頑張ってはいたが、どうにも上手くいかなかったので、いつしか諦めてしまった。
だから今回両親から手紙が届いたのは意外ではあったけれど、両親からの誘いは初めてのことだったから嬉しくも思う。
(……でもエドモンドに聞いてからじゃないといけないわよね?)
本当は直接聞けたら良いのかもしれないが、今は顔を見る機会すらないのだから仕方がない。
いそいそと王城に居るエドモンドに手紙を送って、許可を得ようとしたのだがーー待てど待てどエドモンドからの手紙は返って来ない。
そうしている間に、両親から催促の手紙が届く。本来であれば、エドモンドに確認してからだろうと思っていたが、使用人に伝言を頼んだが、それにすら返答が貰えなかったことに、半ばなげやりな気持ちになって了承することにした。
別に実家に帰って両親にわたしの顔を見せるだけだ。わたしが住んでいる場所から実家までの距離はさして遠くはない。昼に行っても夕方には帰って来られるだろう。
(……どうせ、エドモンドは帰って来ないものね)
いくら忙しいといえど、まさか返答すら貰えないとは思ってもみなかった。それほどわたしの存在なんか彼の中ではどうでも良いものなんだろうかと思うと胸がチクチクと痛む。
それでも、念のため実家に帰る旨をエドモンドの私室に書き残していったのは、もしかしたら帰ってくるかもしれないという気持ちがまだあったからか。
馬車に揺られながらわたしはずっとエドモンドのことを考えていた。
仕事が忙しいと人伝てに聞いてはいるが、それは本当のことなんだろうか。わたしと会いたくないからそういう嘘を付いているのではないかと疑ってしまう自分が嫌だった。
(だって仲違いした翌日から帰ってこないんだもの。こんなの疑って下さいって言っているようなものじゃない)
不貞腐れた気持ちで俯く。ここで泣くのはなんだか負けたみたいで悔しかった。手の甲をつねって痛みで誤魔化し、いつまでもウジウジしていられないと気分転換がてらに、家族のことを思い返そうとした。
だというのに、気がつくとエドモンドのことばかり考えてしまう自分が確かにいたことにひどく動揺するのだった。
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