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お茶会の相手1

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「ニルギス子爵令嬢、申し訳ありませんが中にお入りください。このまま部屋に入らず帰られると、ニルギス子爵様の評判が落ちます」

イグニス様が困惑しながらも、私を気遣うように中へ、と促してきた。

評判、と言われれば従うしかなく、渋々中へ入ると直ぐに扉が閉められた。

「待ってたよ」

椅子から立ち上がり、楽しそうに笑う銀色のイケメンが得意げに立ち上がった。

ちっ。

「今、ちっ、て言ったか?」

白シャツに黒いパンツというシンプルな服装なのにとても様になる。軽く首を傾げ近づいてくる整った顔。

一足一足歩く度に軽く揺れる銀の髪が太陽の光を浴びて、よりキラキラと光り、眩しいくらいだ。

確信した。

イケメンは怪しい奴が多い、

という事だ。

「とんでもございません」

にっこりと微笑み会釈したが、ここからは動きません。

部屋を見回すと、私を含め3人しかいない。

つまり、私だけが呼ばれたんだ。

それに、テーブルに菓子が並べられていると言うことは、この男性と2人でお茶会をする段取りになっているという事だ。

冗談じゃない。

「恐れ入りますが、王子よりの招待状でしたが、違いましたでしょうか?」

帰りたい。

「俺がアトラスの名前を借りたんだ。立って話もなんだから、こっちでお茶にしようぜ」

アトラス、と王子を呼び捨てにした時点で、普通の貴族では無い。それもいつの間にか離れてしまった、イグニス様よりもずっと上の人だ。

絶対に、帰るべきだ!

「恐れ入りますが、招待主以外の方とはお茶をする気はございません」

角をたてず、柔らかに断った。

すっ、と目の前で止まり、身長的に私を見下ろす格好になるが、その瞳に揶揄や、見下しはなく、ただ子供のように目を輝かせ私を見てきた。

それが、また胡散臭く見えた。

やはり、この間ダンスを踊った人だ。

だから、また、と言ったのか。

「アトラスが良かったのか?」

探るような言い方に、首を振った。

「そうではありません。招待状に参加、不参加を選ぶ言葉がありませんでしたので、渋々、参りました」

「そうだろうな。あえて、そこは書かなかったんだ。不参加に丸をしてもらっら困るからな」

「ああ、そうですか」

にこにこ。

「まあアトラスに興味があるのなら、意地でもアトラスと踊る為にもっと前に出ただろうな。あんな隅にいないだろうな」

「分かってるなら、わざわざ聞かないで下さい」

にこにこ。

「それに王子を狙ってるのなら、俺を知っているだろうが、知らないんだな」

「知りたくありません」

にこにこ。

「その作り笑い、似合ってないぞ」

「本心が顔に出ているのです」

にこにこ。

「ともかく、座ろうか。珍しい菓子を用意したんだ」

いらんわ。

「恐れ入りますが、」

そこで言葉を切り、これでもか、という程満面の微笑みを見せた。

「興味のない殿方とお茶をしたくありません」

ハッキリ、キッパリ、言ってやった。

一瞬、真顔になったかと思うと笑いだした。

「くっくくくくくく、いいな、その素直な顔と、さっきからの素直な言い方。いいぜ、いい。やっぱり、いい女だな、気に入ったよ」

「気に入らなくて結構ですので、帰ってもいいですか?」

「いや、駄目だ。まだ、俺の紹介が終わってないだろ」

「いりません。先程言いましたよね。興味の無い殿方ですから、紹介はいりません」

私の言葉に、また楽しそうに目を細めた。

「聞いて損はないぜ」

「だったら、他の令嬢に教えて上げてください。貴族が損得勘定を出してくるのは、野心を持っている方です。私には、無縁ですので権力が欲しい令嬢に教えてあげてください」

「おれは、スティールを気に入って呼んだんだ」

「残念ですが私は興味ありませんから、必要ありません」

「だが、俺がスティールを知っているのに、スティールが俺を知らないのは平等じゃないだろ?」

「いいえ。貴方様と私の立場は雲泥の差。つまり、始めから平等ではありませんので問題ありません」

「何言ってるんだ。俺がそんな事気にしていないんだ」

ああ言えばこう言う、ということわざ通り、のらりくらりと躱すので、さすがに腹が立ってきた。

「しつこい!私は、貴方に興味無いの!関わりたくないの!私は、穏やかに過ごしたいの!!」

 堪忍袋の緒がとうとう切れて言ってしまった

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