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北部の物資について6
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「ガルマン侯爵のそのお気持ち、お察し致します。私も同様にこれなら全ての民に渡せば、少しでも食糧難を解決する事ができる、と興奮致しました」
この方、演劇でも習ったのだろうか?
絶対詐欺師になれると、拍手喝采したいくらい真剣な顔が上手すぎて蹴りたくなるくらいだった。
「だが、ここでまたスティールの助言を頂いたのです。安易に期待を持たせてはいけない。場所が変われば、育ち方、実の付け方が違う。そうなった時、どれほど民が絶望するかを考えて欲しい。まずは貴族と、何人かの民に実験と称して進めるべきだ、と。その際はキャーデイ男爵家ならば、ニルギス子爵様と懇意なる仲のため、指導者として相応しいでしょうし、領民と手を取るキャーデイ男爵ならばその言葉を聞きいれてくれる」
あぁ・・・。
ごめん、おじ様。今度ゆっくり謝るよぉ。
あの方も表舞台に立ちたい人では無い。お父様と同じ、領地だけを考えたい人だ。
はぁ。
「公爵子息のように、上辺しか知らない上級貴族の言葉はどうしても民の心に響きません、ととても辛そうに教えてくれました。スティールは慈愛に満ちた叱責を私にしてくれたのです」
公爵子息の、またまた、崇めるうな甘い眼差し、
ガルマン侯爵様の、羨望に変わった眼差し、
お父様の、どういう事だ!?と言う相も変わらず睨みをきかした眼差しに、
認めざるを得なかった。
この人、
私を、いや私達を巻き込んで来てる!
私がちゃんと、穏やかに過ごしたい、と言ったのに、
全部、
全部、
私のお陰だ、と、お膳立てしている!
ああ・・・。
何故、アトラス王子とイグニス様があんなに私を憐れんだ顔で見ていたのかわかった。
「という事で、夜はニルギス子爵家で晩餐を考えております。その時、ニルギス子爵様よりご指導ご鞭撻を承りたいと思います」
にっこりと無邪気微笑む公爵子息に、
「はぃぃぃぃ!?」
お父様が真っ青な顔で悲鳴あげ立ちがった。
「そ、そんな晩餐など、やった事ありません!!」
悪魔がここにいる、と本気で思ったのは私だけでなく、お父様、そしてアトラス王子、イグニス様も同じ気持ちなのだ、皆の顔を見て、頭が痛くなってきた。
「御心配いりません。ニルギス子爵様が屋敷を出発された後、入れ違うように王宮より手配した者達が屋敷に到着しております。私の家より向かわせた騎士団、そしてアトラス付きの騎士団が警備を万全にし、また、晩餐の食事も王宮専属の料理長を手配しております。料理も、ニルギス子爵様の屋敷に保存している野菜をふんだんに使用し、ニルギス子爵様の領地の素晴らしさをガルマン侯爵殿に振る舞うよう指示しております」
恐ろしい程に用意周到だ。
「あ、あの、ですが、我が屋敷程度では、部屋にしても召使いにしてもご満足頂けないと思います」
「心配するな!私はニルギス子爵殿の屋敷がいい!!色々話しを聞きたい!!」
ガルマン侯爵様が揚々と言った言葉と、爛々と輝く瞳に、お父様は言葉を飲み込んだ。
「いやあ、この資料の内容は素晴らしい!こいつが考えたのなら胡散臭いと認めなかったが、ニルギス子爵殿とその令嬢の案と聞き、また、このニルギス子爵殿の領地での手腕、全てに置いて素晴らし!!いやあ、何を叱咤されるか楽しみだ。さあ、行くぞニルギス子爵!!」
「ええ!??」
思いっきり拒否の顔と言葉だったが、我関さずとばかりに、ガルマン侯爵様はお父様に近くに行くと腕を引っ張った。
「我々は先に向かう。お前らは後から来い!!」
「はい、ガルマン侯爵殿」
公爵子息は、まーた胡散臭い微笑みを浮かべ、頭を下げた。
そうして、お父様は、
連れだされた。
お父様、ごめんなさい。
今謝っとくから、許してね。
後で怒らないでね。
この方、演劇でも習ったのだろうか?
絶対詐欺師になれると、拍手喝采したいくらい真剣な顔が上手すぎて蹴りたくなるくらいだった。
「だが、ここでまたスティールの助言を頂いたのです。安易に期待を持たせてはいけない。場所が変われば、育ち方、実の付け方が違う。そうなった時、どれほど民が絶望するかを考えて欲しい。まずは貴族と、何人かの民に実験と称して進めるべきだ、と。その際はキャーデイ男爵家ならば、ニルギス子爵様と懇意なる仲のため、指導者として相応しいでしょうし、領民と手を取るキャーデイ男爵ならばその言葉を聞きいれてくれる」
あぁ・・・。
ごめん、おじ様。今度ゆっくり謝るよぉ。
あの方も表舞台に立ちたい人では無い。お父様と同じ、領地だけを考えたい人だ。
はぁ。
「公爵子息のように、上辺しか知らない上級貴族の言葉はどうしても民の心に響きません、ととても辛そうに教えてくれました。スティールは慈愛に満ちた叱責を私にしてくれたのです」
公爵子息の、またまた、崇めるうな甘い眼差し、
ガルマン侯爵様の、羨望に変わった眼差し、
お父様の、どういう事だ!?と言う相も変わらず睨みをきかした眼差しに、
認めざるを得なかった。
この人、
私を、いや私達を巻き込んで来てる!
私がちゃんと、穏やかに過ごしたい、と言ったのに、
全部、
全部、
私のお陰だ、と、お膳立てしている!
ああ・・・。
何故、アトラス王子とイグニス様があんなに私を憐れんだ顔で見ていたのかわかった。
「という事で、夜はニルギス子爵家で晩餐を考えております。その時、ニルギス子爵様よりご指導ご鞭撻を承りたいと思います」
にっこりと無邪気微笑む公爵子息に、
「はぃぃぃぃ!?」
お父様が真っ青な顔で悲鳴あげ立ちがった。
「そ、そんな晩餐など、やった事ありません!!」
悪魔がここにいる、と本気で思ったのは私だけでなく、お父様、そしてアトラス王子、イグニス様も同じ気持ちなのだ、皆の顔を見て、頭が痛くなってきた。
「御心配いりません。ニルギス子爵様が屋敷を出発された後、入れ違うように王宮より手配した者達が屋敷に到着しております。私の家より向かわせた騎士団、そしてアトラス付きの騎士団が警備を万全にし、また、晩餐の食事も王宮専属の料理長を手配しております。料理も、ニルギス子爵様の屋敷に保存している野菜をふんだんに使用し、ニルギス子爵様の領地の素晴らしさをガルマン侯爵殿に振る舞うよう指示しております」
恐ろしい程に用意周到だ。
「あ、あの、ですが、我が屋敷程度では、部屋にしても召使いにしてもご満足頂けないと思います」
「心配するな!私はニルギス子爵殿の屋敷がいい!!色々話しを聞きたい!!」
ガルマン侯爵様が揚々と言った言葉と、爛々と輝く瞳に、お父様は言葉を飲み込んだ。
「いやあ、この資料の内容は素晴らしい!こいつが考えたのなら胡散臭いと認めなかったが、ニルギス子爵殿とその令嬢の案と聞き、また、このニルギス子爵殿の領地での手腕、全てに置いて素晴らし!!いやあ、何を叱咤されるか楽しみだ。さあ、行くぞニルギス子爵!!」
「ええ!??」
思いっきり拒否の顔と言葉だったが、我関さずとばかりに、ガルマン侯爵様はお父様に近くに行くと腕を引っ張った。
「我々は先に向かう。お前らは後から来い!!」
「はい、ガルマン侯爵殿」
公爵子息は、まーた胡散臭い微笑みを浮かべ、頭を下げた。
そうして、お父様は、
連れだされた。
お父様、ごめんなさい。
今謝っとくから、許してね。
後で怒らないでね。
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