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会議後6
しおりを挟む「・・・お陰、なんて私は頼んでいません。はあ、もうわかりました。確かにドレスは無いので助かります。お揃い以外は無いんですか?」
確かに今日着てきたこのドレスが1番豪華だから、
「ない。あ、今度は一緒に見に行く、というのもいいな」
いい事を思いついた、と同意を求めてくるところが図々しい。
「行きません」
「それとも俺ん家に来るのがいいかな?おかかえの仕立て屋が何人かいるから、好きなのを作って貰う」
「行きません」
「では、何処の店に行く?」
「だから行きません」
「そうか!宝飾品や小物も欲しいんだろ?やっぱり出掛けないといけないな」
「・・・違います。はぁ、もういいですよ。ともかく、何時からですか?」
「遅めにしたから20時からだよ」
アトラス様に言われ時計を見ると、もうすぐ17時。
会議は13時から始まったが、会議自体が早く終わったから、ここでつまらない時間を過ごしている方が長い。
「もうこんな時間か。支度をしないといけないな」
「そうですね」
やっと、解放される。
「そうだ、ニルギス子爵様は酒に強いの?」
「まあまあ、ですね。領地に行くと必ず飲み会が始まるのでそれなりに飲めます。どちらかというとお母様の方が強いかもしれませんね」
「それなら大丈夫だろう。クソじじいはバカみたいに酒飲むからな」
「それならもう飲んでいるかも知れませんね」
「そうかもな。そうそう、ニルギス子爵家の馬車は先に返したから、俺の所の馬車を用意しているからそれに乗って帰れよ」
はい?
「な、何でですか?」
「スティールが俺の馬車に乗るのは当たり前だろ?」
このくだりは長くなりそうだ、と公爵子息の微笑む顔を見て理解した。
そうして、まだ手を握っている公爵子息の手をさすがに叩き、離してもらった。
「いつまで触っているんですか。分かりました。では、乗って帰ります」
さっさと立ち上がった。
「それじゃあイグニス、呼んできてくれ。そこに居るはずだ」
「かしこまりました」
イグニス様は深々と頭を下げ、部屋を出ていった。
「この後、また誰かとお話があったのですね」
「いいや、スティールの為の護衛がいるだろ」
はい?
「失礼します」
直ぐに騎士の制服を着た方とイグニス様が入ってこられ、その騎士の方は入口で綺麗な背筋で立った。
「グラリン、後は頼んだ」
「お任せを」
すっと頭を下げると、私の前に来た。
「お初にお目にかかります。ヴェルディ公爵家第2騎士団副団長をしております、グラリン・フォスターと申します。これより、ニルギス子爵令嬢、スティール様を御守りするよう主より任命されました。以後宜しくお願い致します」
ふんわりと優しく微笑んだ。
「は、はあ。宜しく、お願い致します」
公爵子息よりももう少し背が高いのと、騎士の制服を着ているからとても素敵だった。
それと、これまた何故?と思うほど騎士、と言うには可愛らしい顔をしてる上に、公爵子息のキリッ、としたイケメンとは違うが、美男子だ。
公爵子息の周りには、もっと普通の顔はいないの?
「スティール」
「なんでしょうか、公爵子息?」
呼ばれて振り向く、私の顔を見るなり、くっくくく、と笑いだした。
「失礼じゃないですか?人の顔をみて笑うのは」
「いや、いつもながら顔が良い奴には興味が無いんだな、と思ってな。第2騎士団とあと第5第6騎士団は俺専属なんだが、第2騎士団は選りすぐりの顔がいいヤツらを選んだんだ集まりだ。勿論腕も充分たつ」
「そうですか。私が興味無いなら興味ありそうな男性にして貰えません?」
「俺がいるのに?」
「ご自分で言いましたよね?私に、顔よし、と。それなら私が興味ないと分かってるでしょ?」
ふっ、と背後から笑う声が聞こえた。
「いや、申し訳ありません。なかなかはっきりした方ですね」
「だろう?そのつれない所がまたいいんだ」
ちっ。
「今、ちっ、と言われましたか?」
「はい。グラリン様。さっさと帰りましょうこれ以上ここにいると白髪が増えそうです」
にっこり真面目に、本気で答えると、背後から大爆笑が聞こえグラリン様も笑いだした。
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