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46屋敷の庭園

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ヴェンツェル公爵家の敷地内なら、2人で歩いてもおかしくないから、気を使ってくれたのね。
一応まだ、殿下の婚約者だ。
相手が帝国皇子であっても、2人きりは、よろしくない。
「歩こうか、スティング」
恥ずかしそう微笑みながら、フィーが歩き出した。
「うん。何だか懐かしいわ。殿下のパーティーで出会った時の事を思い出すね」
日が落ち、庭園の灯りが灯り、足元を照らしてくれた。
「そうだな。時期的も同じだから、あの時と同じで少し蒸し暑いな」
「だから、あの時のお茶が冷たくて美味しかったわ」
「それなら、うろうろしたかいがあったな」 
傾げながら微笑むフィーの金色の髪が灯りの光を受けキラキラと光る。
優しい瞳で、いつも私に優しく声かけてくれる。
綺麗すぎて、一緒に歩くのがなんだが似合わないような気がする。
「ねえ、フィー。私は・・・前の私と変わったわ。今朝もそうだった。今まで殿下に嫌われたくなくて穏やかに側にいたのに、今はそうでは無い」
殿下を護る事を捨てた時から、非道となっていく。それは、きっとこれまでの、私ではない。
「そうかな?カレンが言っていただろ?スティングはとてもいい顔になったし、何も本質は変わってない。昔はまるで綺麗な人形のようだった。感情全て押し込み、誰かに操られているかのように、非の打ち所のない完璧な人形だった」
「・・・人形か。いい表現かもね。いつも私は殿下の婚約者として相応しく生きる事が全てをだった。私的な感情等切り捨て、殿下の為だけに行動していた」
「でも、たまに見せる辛そうな顔を俺は見逃して無い」
「そんな顔していたのね。自分では気付かなかったわ」
直接話す事が少なかったのに、本当に私を見てくれていたのだ、と嬉しかった。              
「・・・スティングは変わらない。たとえどんな事を言っても、どんな状況になっても、スティングはスティングだ。確かに、これまでスティングからは思いもしない行動だろうけど、今朝の姿を見て、俺は嬉しかった」
私の右腕を掴んできた。
足を止め見ると、フィーの顔がとても近くにあった。
「スティングに、あの王子の気持ちはないと、そうはっきりわかった」
自分を見つめる金色の瞳に吸い込まれそうになり、目が離せなかった。
「俺的には結構すっきりした。嫌な部分じゃない。それがスティングの本心なんだ。俺はスティングのどんな姿でも楽しく思える。知らないスティングを見せて欲しい」
掴んでいた手が、いつの間にか指を絡め握られていた。
体の芯から熱く、動悸が激しくなる。
もう片方の手が私の頬にあてられ、フィーは何も言わずっと私を見つめていた。
これ、
これって!
もしかして!?
少しづつフィーの顔が近づいてきた。
「早く抱き合いなさいよ!!ああ、イライラする!!」
「カ、カレン!?」
ガサッと音がしたかと思うと、草むらから湧いて出てきた。
本当に湧いて出たように、ニョキ、と出て来たの!
「・・・私達はやめましょう、とお止めしましたよ」
リューナイトがため息混じりに木の影から出てきて、違う木からザンが出てきた。
「何やってるんだ、カレン!!」
慌ててフィーが私から離れた。
よ、良かった。
屋敷の敷地内だから皆味方だけど、一応まだ、殿下の婚約者だもの
「こんな面白いもの見ないわけに行かないでしょう」
「見なくていい!どおりで大人しく去っていったなと思った」
「フィーがあまりにもスティングと2人きりになりたそうだから、してあげただけじゃない。それなのに、何なのよそのつまんない奥手は!もっとぐいぐいいかなきゃ見てるこっちがつまんないでしょ!?」
「はあ!?お前の為に何でそんな事しなきゃいけないんだ。と言うよりも覗くな!」
「こんな楽しいの覗かない訳ないじゃない。けど、覗く価値もなかったわ。あそこまできて抱きしめないなんて、本当につまんない男」
けっ、と意地悪そうに笑うカレンに、当然そこから2人の兄妹喧嘩が始まった。
少しして、夕食の時間だと呼びに来たクルリを見て、渋々大人しくなり屋敷へと入った。
夕食後お父様とお兄様、お母様に、レインの事を話すと、とても驚かれ、私の観察力を褒めてくれた。
だが、レインを含めお祖母様もお母様もこれまで何も出て来なかった。これから監視を強めても、何か出てくると思えない、とはっきり言われた。
でも、私はそうは思わない。
小さな綻びは、
必ず大きくなる。
その綻びをまた、
大きくするのは、
私だ。
ともかくお父様達はお父様達で探って貰い、私は私で少し違う目線で動こうと思う、と伝えた。
何かあれば報告し合う事を約束した。
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