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屋敷に入っても大わらわだった。

多分私を待っていたと思うんだけど、叔父様と叔母様、兄様3人が揃っていた。

でも、意表を突く訪問者に、目が点になり、その上馬から落馬したと聞くと、侯爵家専属の医師が怪我を見ます、と顔真っ青でどこかへ連れていった。

私は私で、ガタルを助けた時に服が泥だらけになっていたので、お着替えを、と召使いに連れていかれ、着替えさせられた。

何も無ければ、3時のお茶にはついていたから、皆で和やかにお話を、という流れだったのに、あれやこれやで、やっと落ち着き応接間に座ったのが、もう夕方になってしまった。

ソファに座ったら何故か隣に当たり前のように、ガタルが隣に来た。

前に座る叔父様と叔母様、その横に座る兄様達が、何を聞いていいのか、相手が相手だけに、目配せしながら困惑しているのが手に取るようにわかった。

いや、私も同じです。

屋敷の下で聞いた、衝撃的な言葉が頭の中で繰り返し、そして、いや、あれは幻聴だった、と何度も言い聞かせていた。

冷静に考えて、こんな短い間でそんな言葉が出てくる訳が無い。

きっと、私があの屋敷から出れて、嬉しさのあまり変な妄想を、脳内変換をしたせいだ。

私ってば、本の世界のように王子様と運命的な出会いを夢見る少女だったんだ。

以外に可愛い性格持ってたわね。現実主義者だと自負していたけど、普通に感情豊かな女の子だったんだわ。

うん、きっとそうだ、と納得させていた。

「ガタル様、もうこんな時間ですが、王宮に帰られますか?それとも、ここに泊まって行かれるのですか?普通に考え、お供を巻かれたということは、王宮に帰られるのは、飽き飽きだということもありますが、ご主人様を見つけられた以上、お側にいることが宜しいかと思いますので、泊まって行かれますよね」

このいたたまれない空気を読んでいるのか読んでいないのか、シャオレがぶち壊した。

なんとも流暢に言葉を紡ぎ出す、私のはっきりと物言う召使いが後ろで控えているにも関わらず、一国の王子に対して、本当に澱みなく言った!

その上シャオレの言葉に、満足そうにガタルが笑う。

「確かにその通りだ。お前、俺が王子だとわかっいたんだろう」

「勿論でございます。その胸につけたブローチで一目見て分かりました。ミヤ様は社交界や貴族のことに疎いお方です。ですが仕方ありません。前の伯爵家では、派手な妹君の為ひっそりと慎ましくしておられた為、あえて、愚鈍を演じておいででした」

いい言い方をしたな、と素直に感心した。

こういう口の上手さは抜群だ。

「もともと聡明で賢き、そしてたおやかで美しい方です。これまで日々修行のような生活を送っていたお嬢様に、やっと降り注いだ、幸運を何故、私が邪魔をするでしょう。いい落とし物拾いましたね、ミヤ様」

珍しく褒めてくれた、と感心したのもつかの間、やっぱり、落としてくるな、と感心した気持ちを返してよ、と思った。

「ああ、いい拾い物したな。ミヤ」

「だから、拾ってない!助けたの!」

「お待ちなさい!」

急に割って出た、叔母様の声。

「ガタル殿下。つまりは、ミヤを気に入った、という事ですか!?それはつまり」

真摯な言葉と射抜くような顔で、叔母様はガタルを睨んだ。

その表情に押されるように言葉を失った。

叔母様?

見た事のない真剣な顔に驚き、不安になった。



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