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本編

803 スライム人口衛星化計画

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 無事に憤怒の怒りも収まったことを確認し、俺たちはギリスに戻った。
 アイスに関しては、パインのおっさん系列で販売することが確約。

 食べながらボソッと呟いた俺の案が採用される形である。
 別々の種類ごとにアイスを容器に入れておき。
 食べれるタイプの器に乗っけてお好みで選べるようにして販売する形だ。

 うん、要するにコーンの上にアイスを乗っけて食べるアレだ。
 俺の元いた世界にもあった某アイスクリーム専門店のアレだ。

『トウジは相変わらず神かよ』

 散々考えて桶アイスを作成したおっさんは、ガクガクブルブルと震えながらそう呟いていた。
 神というか、一個にまとめるよりもバラバラの方が絶対良いだろ。

 アイス屋用の什器に関しては、いつも通りうちの商会で設計製作。
 自社で全部まかなえるって、ぶっちゃけとんでもないことだよな。

 そんなことを思いながら、改めて本題のビシャス対策を検討……する前に。

「どうしたん急に、昨日の今日で」

「ちょっとやりたいことがあってね」

 俺はマイヤーを、商会の建物に足を運んでいた。

「もうちょっと休んでも誰も何も言わんのに」

「休むのは終わってからだよ」

 商会内に入りながら、マイヤーとそんなことを話していた。
 帰路につく時、俺はみんなに今の目的を全て告白した。
 異世界から来たこととか、それも全て隠し通すことは不可能。
 そもそもアドラーあたりが俺を召喚勇者の一人として扱ってる。
 だから、知ってる人はもう知ってるんだよな……。

「で、何するん? オスローも呼んどるみたいやし、飛空船のアップグレードとかなん?」

「まあ、それもやるっちゃやるけど」

 飛空船でダンジョンコアと戦いに行くのは、もうしばらく後だ。
 別の目的のために、俺はこの商会を訪れているのである。

「神みたいな人と約束したんだよ、ひねくれたダンジョンコアたちを助けるってね」

「なんかそんな話もしとったなぁ」

「で、できるだけ危険を孕むことはしたくないんだけど、そこで考えた」

「ふむふむ?」

「抑止力ってのを手に入れて、戦わずして勝つんだよ」

「抑止力? 今でも十分えげつないけどなあ?」

 めっちゃ強サモンモンスターに、めっちゃ強装備。
 さらにはダンジョンコアを近場に二つと個人でもコア所有。
 なんともこの世の派遣を握れそうな勢いであるが、まだ足りない。
 これらは全て、ダンジョンコアと同じステージに上がるための物。

「土俵が同じじゃ、まだ安心できないだろ?」

「せやね。けど、死んでも生き返るなら同じちゃうよね」

「自分の命を危険にさらしてまで何かをするのはNGだって、イグニールが」

「こないだはえらい塞ぎ用やったしなあ。まあ、うちもそんなことしたら怒るで?」

 風呂で全部見てました、みたいなことは言わないようにしておく。
 もしかしたらローディが話したのかもしれない。
 その上で何も言わないでいてくれるのかもしれない。

 地味にどうなのかわからないってのが、なんとも言えない怖さを秘めていた。
 ま、そんなことは今はどうでも良いか。
 やることを必要なだけこなすぞ!

「で、抑止力のことなんだけど」

 話を戻す。

「浮遊結晶を使って、上空に目を打ち上げるんだ」

「目を打ち上げる? なんやそれ」

「衛星だよ、衛星」

「……星?」

 異世界では通じづらいかもしれんが、空に浮かぶ月を想像すれば良い。
 日中でも見える月と同じような感覚で空にぶち上げる。
 そして、そこを通してまずは敵の情報を察知するのが重要だと考えた。

「空から監視するってのはわかったけど、星を作るって……想像できへん」

「まあ完成したらわかると思う」

「そもそも、そんなに上空に打ち上げてどうやってみるんよ? ラブちゃんのダンジョンみたいに、別の場所を映し出すガーディアンでも作るっていうのん?」

「そりゃダンジョン内だけだから無理だね」

「まさか、この世全てをダンジョンにする気なんトウジ!」

「いやいや違う違う」

 例題を出すとすれば、ロイ様が呼び出す王室諸君、キングスたちを想像すれば良い。
 あいつらって、どんな距離でもどこでも、感覚が繋がってて相互連絡できる。

 つまりだね。
 最上位のスライムを浮遊結晶に乗せてぶち上げてしまえば良いのだ。
 そこに望遠鏡でも取り付けて下を観れるようにしておく。

 人工衛星技術を冒涜するような稚拙な考え方だが、異世界だからね。
 異世界だからなんでもありって理論で武装しておくことにしよう。
 もっとも、できるという確証はない。
 が、やってみる価値はあると思えた。

「スライム乗っけていつでも連絡できる監視の目って、相変わらず発想が面白いわぁ」

「リアルタイムの情報ってかなり重要なんだよ」

 連絡手段に時差が発生するこの異世界では武器になる。

「ぶっちゃけ偵察監視用に作るんだけど、飛空船事業がスタートした場合にも使えるでしょ?」

「せやね」

 今どの位置にいるのかとか、別の飛空船の位置とか。
 当初の予定では、船を操作する人の都合上、1隻ずつってことになってるけど。
 こうすりゃ何隻飛ばしてもそこまで危険はないし、事故った際の対処が楽になる。

「飛空船事業以外にも、他のことにも色々と使えるやん……」

「マイヤーは、例えばどんなことだと思う?」

「うーん、色々あるけど。連絡手段ってところに着目を置けば、商売の在庫管理がしやすくなるで」

「うんうん」

 それも重要なことだ。
 だからこそ、マイヤーも交えてこの辺の話をしておきたかったってのがある。

 ちなみに国に売れば面白いことになるぞ。
 中にスライム入ってます、なんてことを言わずに、とんでも技術でできてますってことにすれば、使ってくれたら国家機密レベルの情報が俺たちにバンバン流れてくる状況になる。

 やって良いものか、悪いものか……。
 俺は金になるならなんでも良いんだけどな。

「ってことで、オスローにその辺をうまく良い感じに伝えて欲しい」

「ん? もう、どっか行くん?」

「手頃な最上位種のスライムをスカウトしに行かなきゃいけないからね」

 俺のサモンモンスターのスロットが3体までという都合上。
 どうしても野良で言うこと聞く奴を引っ張ってこなきゃいけない。

「いやトウジ、スライム進化させるスライム持っとるやろ?」

「うん、フォルのことだね」

「適当なスライムにそれ使えばええんやないの? キングの言うことやったら並みのスライムは怖くて聞くしかないやん」

「あっ」

 確かに。
 早けりゃ3日くらいで完成してしまうな……。
 でも、ロイ様がそれを許すかどうか。
 そこは交渉しましょう。






=====
お ま た せ 。
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