装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

本編

８０５ コールドランド

「ようこそコールドランドへ！」

　俺たちは例のスライムの情報を得て、ギリス北側に存在する一番大きな都市へやってきていた。

「地味に初めて来たなあ」

「そうなの？」

「うん。ギリスの行動範囲って中央山脈と断崖凍土とデリカシ島だけだったから」

　しかも、断崖凍土はデリカシ島の転移ポータルを通っての移動。
　その後はワシタカくんでひとっ飛び。
　ギリス北側に足を運ぶ用事は何もないし、仕方のないことだった。

「ォン！」

「ん？　ああ、羊肉か」

　ポチの興味を示した方向には、羊マークの料理屋がある。
　街に入った際にもらった観光ガイドを見る限り。
　羊の魔物が多く生息する北側では、豚や牛、鳥よりも安いそうだ。

「いいね、羊肉」

　羊肉といえば、ジンギスカン。
　トガルのタレを用いれば、容易に作り出せそうな予感がした。

「ねー、ここには甘いものはあるし？」

「あるんじゃない？」

　フードの中からそんなことを聞くジュノーに適当に返しておく。
　きっとあるだろ。
　北国ってほら、ベリーが気候的に育ちやすいっていうし。

「アォン」

「えっ！　コールドランドの伝統的なデザートがあるって？」

　すでにポチがリサーチしているようだった。
　食い道楽にかけては余念がないな、こいつ。

「アォン」

「えっ！　コールドランドで有名なコールドウイスキーに浸したオートミール、ホイップクリーム、はちみつ、コールドベリーが使われた美味しいデザート！？　トウジ！　そこ行くし！　食べるし！」

「はいはい」

　本当にすごい情熱だな……。
　しかし、旅に食い道楽はつきものだから俺も乗っかろう。

「よし、羊肉とそのデザート食べに行こう」

「ねえ、スライムは？」

「アォン！」

「そんなの後！」

「……相変わらずね」

　ま、イグニールよ。
　食べながら情報をまとめて効率よく探していけば良いじゃないか。
　俺らにはコレクトがいて、俺の求めるものをすぐ見つけてくれる。

「コレクト、食べながらも例のスライムを探ってくれ」

「クエッ」

　今回は初めての街だということで、ゴレオは出していない。
　図鑑のメンツとしては、ポチとコレクト。
　そして俺とイグニールでの捜索だ。

「マイヤーとボンちゃんにコールドウイスキーでも買ってってあげましょ」

「そうだね」

　ギリス首都ではすでに販売されているかもしれないが、持って行こう。
　本場の味って結構重要だしね。
　アイテムボックスがあれば、余裕で出来たてデザートもオッケーさ。

　ウイスキーに浸したオートミールを使ったデザート。
　これならマイヤーだって喜ぶだろう。

「アォン！！！！！」

　どこか良い店はないかとコールドランドの通りを歩いていると、ポチが強烈な反応を示した。

「ど、どうした？」

「ォン！」

　プニプニの肉球がついた小さな指が示す方向には、伝統料理を多く扱った店。

「ここがどうしたの？　ここに行きたい感じかな？」

「ォン！」

「羊の各種内臓ミンチを茹でて、玉ねぎとかオートミールを混ぜ合わせて、ハーブと塩胡椒で味付けして、胃袋に詰めて焼いた料理を食べてみたいってさ。これが一番ここで有名な料理なんだって言ってるし」

「お、おう……」

　その「ォン」にそこまでの意味が含まれているとは。
　魔物言語おそるべし。

　しかし、内臓系か。
　まあ、モツ煮とか普通に食べるし、焼肉屋でもホルモンは好きだ。
　羊ならば、どうってことないだろうってことで入ることにしよう。

「行こっか」

「アォーン！」

　両手を上げて万歳。
　喜ぶポチである。

「別に伝統料理がそれだけってわけじゃないしな？」

　色々あるだろ、他にも。
　そんなわけで、コールドランドの羊、いただきます。