装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

809 なんかとんでもないスライム

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 イグニールがスキンヘッド軍団の股間を燃やしている間。
 彼らに絡まれていた例のスライムはずっとその場に佇んでいた。
 去ることもなく、じっと俺たちの様子を観察しているのだ。

「……その様子だと、しっかり話し合いができそうだな」

 そう告げると、

「見つけたぞ」

 その女は一直線に駆け寄って来た。

「コボルトとダンジョンコアを連れた、黒い髪の冒険者!」

 見るからにスライム属性っぽいものを秘めた水色の髪。
 そして瞳が俺を射抜く。

「探したぞ!」

「へ?」

 なんとも。
 探していた様で、実は探されていたということなのだろうか。

「私はブルー」

 名乗りながら、彼女は矢継ぎ早に言葉を続ける。

「太初の生まれ変わりである伝説のスライムを求め、わざわざ人間の領域まで来たのだ!」

「な、なるほど……」

 詰め寄られ、露出多めの豊満な胸が揺れる。
 ぷるん。
 というか、俺の体にぶつかって潰れてる。
 ぶにぃ。

「ちょっとトウジ」

 ──ザンッ。と鋭い刃物で切った様なイグニールの視線を感じた。
 玉ヒュンしたので、両肩掴んで体を話すとすぐに話を進めることに。

「太初の生まれ変わりの伝説のスライムを求めてとは、どういうことかな?」

 俺の話題は協力してくれと頼むことだけど。
 向こう側に何か話がありそうなので、そっちを優先する。
 相手の意見をまずはにこやかに聞くことが重要だ。

「そのままの意味だ。私はずっと探し求めていた、伝説の王を!」

「ほ、ほう……」

「ちなみに太初の海とは、全てのスライムの源の様なもので伝説だ!」

 さらに、と彼女は俺の襟首をぐいぐいと揺すりながら言う。

「王とは、太初の海に至れる資質を持ったスライムの中のスライムのことで!」

「ちょっ、揺らさないで脳が揺れる」

 二の腕の肉とともに胸がぷるんぷるんしている。
 鼻息も荒いし、目も若干血走っている。
 その姿を見た瞬間、こいつは狂信的な何かに囚われていると思った。

 酒を前にしたマイヤー。
 パンケーキを前にしたジュノー。
 未知を前にしたオスロー。
 そんな感じの類であることが垣間見えた。

「それにしても、なんだかスケールのでかい話だな」

「当たり前だ! 人間にとってみれば勇者にも値するのが我々の王!」

 聞いてるかキングさん。
 普通のスライムからも、王というお墨付きをいただいてるっぽいぞ。

「とにかく落ち着いて話しなさいよ! あんた近い!」

「ふむ? なんだいきなり。ひょっとして番か?」

「ちょっと番って言い方なんとかならないわけ? そうだけども……ってか、あんたどこの何スライムよ」

「系譜のことか?」

「ま、まあそうね」

 自分で聞いたイグニールも、ややその発言違和感を感じている様だった。
 スライムに出身地とかあるのかなあ……。
 どっか遠くの森とか、どこかの下水とか。
 そんな程度だろうと思うんだけど。

「ふはは、聞いて驚くなよ?」

 ブルーはニヤリと笑いながら、胸をデンッと張って言う。

「私は太初の海が最初に生み出したスライムの一体から派生した由緒正しいスライムだ!」

「……んー? ちょっとよくわからないけど、どういうこと?」

 意味わからなかったので聞き返す。

「わからないのか? だったらしっかり書いて教えてやろう」

「あ、はい」

 その辺にあった木の棒で地面に家系図の様なものを書き出すブルー。
 太初の海から直接生み出されたスライムの一つの10段くらい下に彼女の名前があった。

「この右端のここが私だ」

「……こ、これはすごいのか?」

 例えば、ご先祖様が太初の海と呼ばれるスライムだったとして。
 大体のスライムがそうだ。
 そもそも時代背景が、太初とかめっぽう前の話になる。

 先代勇者がいた頃、ダンジョンコアが活躍した頃。
 そんな時代よりもさらにさらにずっと前である。
 この間、魔力の海で出会ったユノも太初の力だと自分を名乗っていた。
 すなわち、この世の神と呼ばれる存在と同レベルな部分で……。

 ……ん?
 そこまで考えて、10段目という位置に対して俺の中で意見がガラリと変わる。

「わりかしすげぇな」

「すごいのかしら?」

「うん、すごいよ」

 イグニールの声に首を縦に振る。
 このブルーってスライム。
 軽く1000歳を越す長寿スライムなのではないか?

「ふふん、すごいだろうすごいだろう?」

 素直に認めた俺の言葉を聞いて、鼻を高くするブルー。

「太初が世界に満ちてから、スライムは自然発生する様になった。仲間を生み出すものもいれば、魔力溜まりからポッと湧き立つ種類もいる。そんな中、私は唯一残されたきっかけを知るスライムの名前と意思を受け継ぐ直系の子孫とも言える存在のスライムなのだ!」

「……ん? このブルーってのじゃないの?」

「いや、これは厳密に言えばものっすごい過去のスライムで私ではない」

「ブルーさんって今いくつ?」

「人間の年に換算すれば10歳だ」

「やっぱりすごくねぇ!!!」

「なんだと! すごいんだぞ! 生まれ持って意思を持ち上位に立つスライムなんだぞ!」

 キャラが濃いって部分では、ある意味すごいスライムかもな。
 すごいのかすごくないのかよくわからなくなってくるけど。






=====
10月25日発売予定の4巻書影。
ツイッターにて公開しています。
発売日過ぎれば、書影等にも上げておきます。
更新ペースもできれば上げていきたいと思います。
頑張ります。
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