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本編
839 De.R
しおりを挟むいったいどれだけ魔力を込めたのかわからんが、イグニールの全体攻撃魔法は起動しっぱなしだった。
込めた魔力、もしくは敵対する存在。
そのいずれかが魔法陣の前から消えた時に一緒に消滅するそうだが、状況的には魔力が尽きるまで続きそう。
その間に、さっさと天界神塔の最上階に飛空船を止めて降りることにした。
「わあー! なんかふわってした! ふわんって!」
「空気の層を作ってる障壁とかかな?」
最上階には半球状の障壁のようなものが貼られており、中で息苦しくなるとかはない。
一応、その辺は配慮しているっぽいね。
試しに環境ダメージ無効化するアクセサリー装備を外してみても、なんともなかった。
ちなみにだが、高高度状態で俺が全ての装備を外すと苦しくて動けなくなる。
「で、ダンジョンに侵入はできたけど……ここからどうするのかしら?」
「待機で」
東京ドームよりも明らかに広い最上階には、何もなかった。
居住空間があるのかと思っていたが、本当に何もない。
そこで俺はただ待つことを選択した。
「マイヤーは下から上がってくるんだし! 迎えに行ってあげないと!」
「いや、結局上がってくるだろ?」
ダンジョンコアなんだから、直通で来れるに決まってるじゃん。
便利なテレポート機能搭載してるんだし。
いちいちこの縦に長いダンジョンを下まで降りる気にはならなかった。
「それに、俺たちが侵入したことに気づいてないわけがない」
「さっきまで襲われいたものね」
「相手がのこのこやってきたら、マイヤー助けて叩けばいいよ」
そんなわけで、この辺で一旦ティータイム挟みます。
ポチを召喚し、食卓を囲む準備をする。
このポチの料理は作戦の一つでもあった。
今までの経験則から、ダンジョンコアに有効な可能性が高い。
邪竜にも効くんだぞ。
ダンジョンコアにも効け。
そう思っていると、俺の意識が伝わったのか右手がぶるぶるしていた。
はいはい、次男が怒ってますね~。
「もっとも……叩く前に一旦話し合いの場を儲けさせてもらうよ」
「そんなの意味あるし?」
「ある」
断言しておく。
「こっちに寝返ってくれれば、今後がすごく楽になるからね」
戦わずして面倒ごとを解決できるならば、それに越したことはない。
もし、予想通り国ごとダンジョンの範疇だとしたら……。
敵対すること=タリアスの国全体を敵に回すことになりかねない。
勝手も負けてもどっちかが破滅だなんて、ここに住む人はどうなる。
だから、お互いの落とし所を探った方が一番良いと思っていた。
もっとも、できることなら全員倒すとかそんな結末は迎えたくない。
生き返る時に、約束したからだ。
非常に面倒くさい約束だけど、なんとなくその先に何かがあると俺は見ていた。
あーだこーだ言いながら、戦力を準備すると言いながら。
後回し、後回しにしてしまう理由も、それを思ってのことだったりする。
正義のヒーロー、正義マンを気取る気は無い。
それでもできる限りのことはさせてもらうつもりだ。
「──ふむ、目覚めたばかりの憤怒や暴食から聞いていた通り……であーる」
飯の準備をしていると、声が聞こえた。
声の方を向くと、鼻の下にちょび髭を生やした細身のジェントルマンがいた。
「お前は」
「いかにも、我が天界神塔のダンジョンコア……傲慢のアローガンス、であーる」
案外、強くなさそうな雰囲気の男だった。
傲慢という名。
名前負けしているのでは無いか、と感じるほど。
憤怒も暴食も名前負けしてないやばさだったからね。
「今、失礼なことを思った、であーるか?」
「いえ、そんなことは思ってないです」
「我は、明らかに弱そうな奴だな、と、思った、であーる」
独特な言葉の切り方。
今までに無いタイプのダンジョンコアだ。
「お前だって弱そうだし!」
ジュノーが負けじと言い返す。
「人を見かけで判断するな、であーる」
「そっちじゃん!?!?」
……なるほど、傲慢。
そういうことか。
「そうだ。最上階まで到達したものには、我、から、取って置きのプレゼントを進呈するの、であーる」
「なんだし、とりあえずプレゼントはもらっとくし」
師匠、もらっちゃうのね。
傲慢のアローガンスが指を鳴らす。
俺らの前にポンッと生み出されたのは「De.R」と書かれたTシャツだった。
「プレミア物、であーる」
「よ、よかったなあジュノー」
「小さな体にもジャストフィット、であーる」
「だってさ。着れるってよ。きてみたら?」
「こんなのいらない!」
「同じ刻印をしたペアマグカップとタオルもある、であーる」
=====
であーる=De.R
ちなみに、ダンジョンコアにはまともな奴がいないってのが適当に設定メモった場所に書いてました。
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