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本編
840 傲慢のアローガンス
「そもそも、ここまでこれる奴いなくて在庫余ってるからくれてやる、であーる」
「どうも」
話が通じるのか、通じないか、いまいちわからないダンジョンコアだった。
向こうがくれるって言うのなら、もらってコミュニケーションを取る。
そう、これも作戦のうちだ。
「だから余すことなく全部もらっとけよジュノー」
「いらんし!」
「タオルはお前が俺の枕使う時に下に敷けよ」
「あたしが汚いって言ってるんだし!?」
「うん」
食べ物のカスとか、パンケーキのシロップとか。
そもそもなんかシワができてるなって思ったら、飴がくっついて絡んでる時があった。
それで汚くないだなんて、ははっ、笑いが止まらんのだが?
「そんな状況でフードの中は不問にしている俺の広い心を知れ」
「えー、でもこのセンスの無いタオルはあんまり……」
「え、センス無い、であーるか……?」
ジュノーの心の底から興味ない言葉を聞いた傲慢のダンジョンコアは落ち込んでいた。
「ちょっと、そんな話よりさっさと本題に移らないと」
「え、そ、そんな話程度、であーるか……?」
「……めんどくさいわね、このダンジョンコア」
イジける傲慢のダンジョンコアには、イグニールもため息をつくしかないのだった。
いいぞ、無事に殺伐とした状況を回避する空間が出来上がりつつある。
これだよ、これこれ。
今ならいけるんじゃないか。
マイヤーのことを話題に出して、交渉できるんじゃないか?
「すいませんアローガンスさん。うちのダンジョンコアが失礼で」
そんな言葉を皮切りに、いざ交渉。
「うちのマイヤーを攫った理由はわかりませんが、返してもらえないですかね?」
「……マイヤー、であーるか?」
「はいそうです」
「ふむ、何を勘違いしているのかわかんが、そのような者は知らん、であーる」
……あれ?
知らない?
だとしたら、イグニールとジュノーが見た横顔はマイヤーではない。
もしくは、この件と傲慢のダンジョンコア、アローガンスは関係ない。
そういうことになるのだが……。
「ならなんで、飛空船にのった俺たちを攻撃したんですか?」
先にそれを尋ねておこう。
「ああ、それであーるか……」
膝を抱えていたアローガンスは立ち上がり、言った。
「興味があった、ただそれだけであーる」
「ええ……」
「この我に、それ以外の理由はいらん。何かと理由をつけるのは性分ではない、であーる」
「つまりは、俺がマイヤーを追ってる状況とは全く関係ない立場ってことですか?」
「貴様が誰を探そうが我には関係のないこと。そもそも人間の名前を覚える気もさらさら無い」
「……ビシャスから何か聞いたりとか、そういうのは?」
「聞くだけで反吐が出る名前であーる。この我が、唯一の我が、雑魚の言葉に耳を傾ける?」
鋭い視線となりゾッとするような殺気を向けて、アローガンスは続ける。
「笑止。我が唯一認める憤怒も言っていたが、雑魚が地上で幾ら群れようが我には関係ない」
「……そうですか」
じゃー誰だよ、と言いたいのだが、それも知らんの一点張りなんだろうな。
くそ、何かわかるかと思ってここに来たが、ただの徒労で終わった。
「だったらもう良いです。失礼します」
幸運なのは、目の前にいる男がビシャスと手を組んで敵対するようなタイプじゃない。
わかったのはそれだけだが、それで割と十分なのかもしれない。
「待つであーる」
さっさと踵を返して、地上に戻ろうと思った最中。
アローガンスが俺を引き止めた。
「ちょっと立て込んでるので、後にしてもらえます?」
「我の要件は後回しにする、であーるか?」
「急ぎの用件があるので。嘘じゃないです」
「ふむ」
アローガンスはつまらなそうな表情で鼻を鳴らすと、デコピンするように指を弾いた。
その瞬間、とんでもない衝撃みたいなのが俺の顔すれすれを通って行き……。
──ゴバッ!
奥で止められていた飛空船がバラバラになって崩壊した。
竜樹を基本素材として作られ、大容量のバッテリーで圧倒的防御性を実現した飛空船。
それが、一瞬で、バラバラ。
「なっ!?」
「もう一度我を後回しにすれば、次は貴様の嫁にこれを打つける……であーる」
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