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本編
844 傲慢の能力
しおりを挟む「うおおおおおおあああああああああああ!!!」
地に両膝をつきながら、頭を抱えて怒号をあげるアローガンス。
「我のさっきからダサいだのなんだの! 我が一生懸命考えたんであーる!」
「そっちか」
煽り文句よりも、単純に奴のマイデザイン、そしてマイ必殺技。
それに文句をつけた時のことの方が頭にきているらしい。
「え、これで一生懸命考えてたし……」
ジュノーの言い分もごもっともだ。
「De.Rとか、デコピン攻撃とか、その場のノリでつけるレベルだろ」
「うん、少し時間が経ってから『あっ……』と我に返ってへこむんだし」
俺が言いたいことをジュノーが全部言ってくれた。
いいぞ、こう言う時のジュノーは強いぞ。
調子こいて失礼ぶちかます時もあるが、今は無礼講だ。
「ならばさっきその場のノリで閃いたから、問題ないのであーる」
「「……」」
しかし、アローガンスは胸を張る。
これには俺もジュノーも呆れて何も言えなかった。
「ここまでコケにされたら、我としても本気を出すであーる」
で、ふざけた空気から一転。
再び殺気をまとい始めるアローガンスである。
雰囲気がコロコロと変わって、掴めない。
油断を誘っているのだとしたら、逆に策士かもしれない。
もっとも傲慢という性質から、この部分はナチュラルなのだろう。
まだガーディアンによる強襲や、デコピン攻撃しかしていない。
本気を出せば一瞬で俺たちなんか殺せると、心の底から思ってるんだ。
「疲れるからあんまりやりたくないであーる……が──」
──ボンッ。
突然、細身だった奴の体躯が膨張した。
衣服が破れんばかりの筋骨隆々への変貌。
「久方ぶりの骨のある相手。本気を出すであーる」
オーガの身体強化と似ている。
でも、こいつの場合は元が細身のおっさんなので変身に近い。
「でっかくなっただけだし? そんなのオーガでもできるし」
また俺の言いたいことを言ったジュノー。
彼女を一瞥しながら、アローガンスは鼻で笑った。
「小さいクソ雑魚には、そう見えるだけかも知れんであーる」
「クソ雑魚!? な、なんだし!!」
「しかし、違う」
アローガンスは右足をあげると、床を踏み抜いた。
その瞬間。
「うおおおおおおおおおおお!?」
「な、ななな! なんだし!?」
「きゃっ!?」
さっきまでのデコピンとは比べものにならないほどの衝撃。
床が崩壊した。
「真髄は、魔力を力への単純変換。オーガの能力とは質が違うのであーる!」
「一緒だし!」
似てるが、違うな。
ゲーム感覚の説明でいうと、オーガの身体強化はMPを消費した一部ステータスの上昇スキル。
一定時間、STR、VIT、AGIを上昇させ、その間HPを継続回復させる。
……そう考えると、割ととんでもないスキルだな。
で、アローガンスのスキルは、おそらくMPをSTRのみに変換するような形か。
スキルって万能系の能力だと、上昇値はそこまでではない。
しかし、こういったピーキーな能力だと度を越した上昇幅を得られるもんだ。
どのくらいの上昇幅かは知らんが、MPを変換というところがポイント。
ただの人間が使えば、オーガの身体強化の下位互換でしかないのだけど。
ダンジョンコアの魔力は、生物には到底たどり着けない圧倒的な代物だ。
すなわち、超絶パワーを発揮できるスキルへと変貌を遂げる。
「でもそれ、本当に本気なのか?」
ぶち抜かれた最上階、落ちながら俺は尋ねた。
「……なぜ、そう思えるのであーる?」
「普通に考えるとそのスキルは弱い。で、ダンジョンコアになる前はただの人間だろ?」
ユノから聞いた話だと、確かそうだ。
昔の厄災に立ち向かった強い奴ら。
人だった頃に、ただMPをSTRに変換するだけのスキルで魔物と戦えない。
力(STR)が強くとも、耐久(VIT)や速さ(AGI)がなければただの的だ。
「なぜそれを知っているか、に関しては、貴様は憤怒とつながっていた、であーるな」
「ま、そんな感じ」
「ならば我の手の内を知っていてもおかしくないか。よし、もう1段階ギアを上げるであーる!」
「いや、上げないでいいんですけど……」
「我にはこのスキルに追加して、もう一つスキルがある、であーる!」
なんか勝手にしゃべり始めてるけど、言わない方がよかったかも。
でも、負けそうになったら最終奥義っぽいものを出してくるかも知れないし。
先に相手のカードを全て切らせる選択は、間違いじゃないよな?
「むしろ、二つしかスキルを持っていないのであーる!」
だが、とまだまだ落ちていく中で、アローガンスは続ける。
どこまで落ちるんだろう……。
ぶち破られたのは最上階だけじゃないっぽい。
「しかし、最強。天に選ばれし、いや我が天。それを象徴する万能!」
「早く言うし! っていうかどこまで落ちるんだし!」
ほんとだよ。
もっと言ってやれジュノー。
「トウジ! さすがに骨折だけじゃ済まないわよ!」
「地面が見えたら浮遊結晶に魔力込めてくれ!」
落下対策にワシタカくん戦法もあるが、防御性では浮遊結晶に分がある。
無重力空間を作るから、上から降ってくる瓦礫にも対応できるからね。
キングさんとロイ様は落下でも平気そうだが、ゴウソツだけは戻しておくか。
「見えたよ! 地面だしっ!」
「タイミングよく使ってくれ!」
「了解!」
「それが我が真髄──」
みんながふわっと着地した中、アローガンスだけ素の状態で着地。
ドゴッと床を突き破って消えてしまった。
「な、なんなんだしあいつ……転移もしないで自爆だし……」
「そ、そうね。でも、まだ生きてるんでしょ?」
「たぶんね」
さすがに死なないと思う。
バカでもダンジョンコアだから。
「ってか、自分のダンジョンなんで壊したし……」
「それは知らん」
傲慢故に、力の誇示とやらか。
「──壊す? 違う。リソースの解放。階層をぶち抜けば、その分魔力に空きがでる、であーる」
そんな会話をしていると、自分で空けた穴の中から這い上がってきたアローガンス。
「我のスキルは魔力の力への変換。そして、力を魔力を除いた全ステータスへの上乗せ」
「全ステ強化ってことか……」
「その通り。我にはこの二つしか必要ない」
=====
でてきたダンジョンコアの基本能力!
憤怒=素のステータスがバカみたいに高いのと、怒りにより死ぬまでステが上昇し続ける※我を忘れる
暴食=食えば食うだけステ増えるし回復するし、飢えたらHP減少でステ全部上がる。※我を忘れる
傲慢=MP1をSTR5で変換、STRの数値をMPを除いた全てのステータスに上乗せ。※我が強い
怠惰=待機時間によって■■■を大幅■■、年数分の先送りによって全ての■■■■■を■■。
傲慢はSTRにも上乗せされる。
回復阻害系とかは、トウジはダンジョンコアの能力だと思ってますが、個々の能力です。
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