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本編
848 ふざけんなし
※イグニール視点
「──ふむ、一発は一発だが……やはり、一発で終わってしまったであるか?」
アローガンスは、塔の側面にぽっかり空いた巨大な穴を見ながらそう呟く。
「いや、違う」
だが、すぐにその言葉を訂正した。
召喚主を殺せば、召喚されている魔物は消滅するが……まだ残っていたからだ。
キング、ロイ。
トウジが戦闘において、一番信頼をおくサモンモンスター。
「あれでまだ生きているとは、かなりしぶとい奴である。憤怒が一目おくのも当然か」
「プルァッ!!」
私たちを完全に無視して遠くの景色を眺める様子に、キングが飛び込んだ。
体の一部を拳に変形させ、風を切る強烈な音を立てながらのフック。
「おっと、やめておくであーる」
アローガンスは軽々と避けながら言った。
「さっきの速さにもついて来られなかった貴様らにもう我は倒せんのであーる」
「いいや、倒す。貴様は、我が倒す」
怒気を孕んだキングの言葉。
それをアローガンスは鼻で笑っていた。
「ふん、勝利がどうとか言っていたが、主人も守れない従魔に説得力はない」
「……プルゥ」
核心を突かれて、押し黙るキング。
今のままではどうやっても勝てない、と本人も理解しているのだろう。
巨大化や進化という切り札も、トウジがいなければ使えない。
トウジを先に潰されれば、対抗策が取り辛い。
私たちの弱点が如実に表れていた。
「……私も加勢を」
「やめておけ、イグニール」
杖を持つ手に力を込めると、私たちを守るように下がっていたロイが止める。
「盟主には無限に近い即時回復能力があるが、イグニールにはない」
「そうだけど。ここで何もせずに逃げるのは嫁失格よ」
さっきだってそうだ、あまりに一瞬の出来事だったから何もできなかった。
それが悔しい。
何もできなかった状況が悔しくて、それはきっとキング同じだろう。
「どういう夫婦仲なのかわからんが、いや撤退するのが一番だ」
キングとアローガンスの戦いに目を向けて、ロイは言葉を続ける。
「現状、勝てない。私も王の中の王も、それを理解している」
「……でも逃げ場なんて……どこにもないじゃない」
「ある。盟主がぶっ飛ばされてできた大穴、あそこから飛び降りるんだ」
「大穴。そう、浮遊結晶があれば死なないものね」
キングは戦う振りをして、あの大穴の前からアローガンスを遠ざけた。
そういうことだろう。
「私たちには次がある。しかし、イグニールにはない。ここは杖を収めて欲しい」
「……わかった」
「奴が言っていた通り、私たちがいるということは、盟主は生きている。だから降りて向かうことだ」
トウジと合流し、再びアローガンスを倒す。
いや、多分もう2度と来ないわね。
トウジなら、そんな判断を下す。
それよりもっと大事なことがあるんだから。
「もしもの際の殿は私が努めよう」
「ありがとう。ジュノー、話聞いてた? 行くわよ──」
「──ふざけんなし!」
ロイの言うことに従って、ジュノーを連れて下に降りようとした時である。
今まで黙って話を聞いていたのかと思っていたら……。
「何が一発は一発だし! 先に攻撃したのはあんただし!」
小石を拾ってアローガンスの元へ向かっていた。
絶句する私たちを他所に、ジュノーは小石を投げながら叫ぶ。
「態度が横暴なのはトウジもたまにそうだから許すとして!」
「なんだこの雑魚、今は楽しい避けゲームの最中である」
「プルァ!」
「目の前のスライムほど力があるならともかく、小石を投げられても避けるものが増えるくらいで楽しくないである」
「──ふむ、一発は一発だが……やはり、一発で終わってしまったであるか?」
アローガンスは、塔の側面にぽっかり空いた巨大な穴を見ながらそう呟く。
「いや、違う」
だが、すぐにその言葉を訂正した。
召喚主を殺せば、召喚されている魔物は消滅するが……まだ残っていたからだ。
キング、ロイ。
トウジが戦闘において、一番信頼をおくサモンモンスター。
「あれでまだ生きているとは、かなりしぶとい奴である。憤怒が一目おくのも当然か」
「プルァッ!!」
私たちを完全に無視して遠くの景色を眺める様子に、キングが飛び込んだ。
体の一部を拳に変形させ、風を切る強烈な音を立てながらのフック。
「おっと、やめておくであーる」
アローガンスは軽々と避けながら言った。
「さっきの速さにもついて来られなかった貴様らにもう我は倒せんのであーる」
「いいや、倒す。貴様は、我が倒す」
怒気を孕んだキングの言葉。
それをアローガンスは鼻で笑っていた。
「ふん、勝利がどうとか言っていたが、主人も守れない従魔に説得力はない」
「……プルゥ」
核心を突かれて、押し黙るキング。
今のままではどうやっても勝てない、と本人も理解しているのだろう。
巨大化や進化という切り札も、トウジがいなければ使えない。
トウジを先に潰されれば、対抗策が取り辛い。
私たちの弱点が如実に表れていた。
「……私も加勢を」
「やめておけ、イグニール」
杖を持つ手に力を込めると、私たちを守るように下がっていたロイが止める。
「盟主には無限に近い即時回復能力があるが、イグニールにはない」
「そうだけど。ここで何もせずに逃げるのは嫁失格よ」
さっきだってそうだ、あまりに一瞬の出来事だったから何もできなかった。
それが悔しい。
何もできなかった状況が悔しくて、それはきっとキング同じだろう。
「どういう夫婦仲なのかわからんが、いや撤退するのが一番だ」
キングとアローガンスの戦いに目を向けて、ロイは言葉を続ける。
「現状、勝てない。私も王の中の王も、それを理解している」
「……でも逃げ場なんて……どこにもないじゃない」
「ある。盟主がぶっ飛ばされてできた大穴、あそこから飛び降りるんだ」
「大穴。そう、浮遊結晶があれば死なないものね」
キングは戦う振りをして、あの大穴の前からアローガンスを遠ざけた。
そういうことだろう。
「私たちには次がある。しかし、イグニールにはない。ここは杖を収めて欲しい」
「……わかった」
「奴が言っていた通り、私たちがいるということは、盟主は生きている。だから降りて向かうことだ」
トウジと合流し、再びアローガンスを倒す。
いや、多分もう2度と来ないわね。
トウジなら、そんな判断を下す。
それよりもっと大事なことがあるんだから。
「もしもの際の殿は私が努めよう」
「ありがとう。ジュノー、話聞いてた? 行くわよ──」
「──ふざけんなし!」
ロイの言うことに従って、ジュノーを連れて下に降りようとした時である。
今まで黙って話を聞いていたのかと思っていたら……。
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小石を拾ってアローガンスの元へ向かっていた。
絶句する私たちを他所に、ジュノーは小石を投げながら叫ぶ。
「態度が横暴なのはトウジもたまにそうだから許すとして!」
「なんだこの雑魚、今は楽しい避けゲームの最中である」
「プルァ!」
「目の前のスライムほど力があるならともかく、小石を投げられても避けるものが増えるくらいで楽しくないである」
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