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傷つけたい
傷つけたい・・・その8
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感情の歪みが、雪子の中にあるっていうのは、今の私には分かるような気がする。
でも、もし、去年の年末のあの夜の雪子を知らなかったら、分からなかったかもしれないわね。
私だって、あんな雪子なんて今までに一度だって見た事がなかったんだから。
あの夜の雪子が、本当の雪子の姿なのだろうか?
それとも、今の生活の中で生きている雪子の姿が本当の雪子なのだろうか?
もう50歳を過ぎているというのに、あの夜の雪子は、まるで、あの頃のような・・・。
いえ・・・。
もっと幼い頃の人見知りを覚えたばかりの子供が、親の前でだけ見せる無邪気な仕草のように、
夏樹さんにまとわりつきながら好きなだけ甘えているような・・・そんな雪子だった。
「あの・・・この先、雪子はどうなっていくと思いますか?」
「この先・・・ですか・・・」
「ええ・・・」
「その、夏樹様という方次第では?・・・と、思います」
「はぁ~・・・やっぱり・・・」
「ため息をつかれるということは、何か気になる事でも・・・?」
「ええ・・・。正直、色々あることはあるんですが。その中でも一番気になるのが、ほとんど不可能と思えるんです」
「不可能ですか・・・?」
「ええ・・・。それ以外の問題なら、いくらでも相談にのってあげれるし、協力だって出来るんですけど」
「いくらでもということは、もしかして、ご家族の方に雪子様が疑われているのですか?」
「ええ・・・まあ・・・。その一歩手前というか、なんていうか、そんな感じと言えばそうなんですけど・・・」
「という事は、まだ、ご家族の方たちには知られてはいないんですね?」
「ええ・・・今はまだ、週に一度のメールのお付き合い程度なので・・・」
「それだけで、知られる一歩手前という事は、問題は、雪子様の精神状態の方ですか?」
「それもあります・・・。なにせ、雪子の今の旦那さんは、優しくて、家族思いで、非の打ちどころのないマイホームパパタイプというのも問題と言えば問題なのですが・・・」
「なるほど。とても良いお人柄の旦那さんであり、とても暖かい家族のために、雪子様が自分の感情を押し殺してしまうのではないかと心配されているのですか?」
「ええ・・・確かにそれはあると思います。雪子は、自分の家族を裏切るような行為は出来ない性格ですから」
「雪子様は、とても優しいお人柄ですから。そのために、素直な自分の感情と、今の雪子様の家庭との間で、板挟みになってしまうかもしれませんね」
「それでも、もし、雪子が・・・。その時は、私なりに相談にものれますし、協力も出来るんですけど・・・」
「という事は、裕子様の協力でも、どうにも出来ない問題があるのですね?」
「ええ・・・そうなんです・・・」
「それは・・・その夏樹様という方の方に問題があるみたいですね?」
「ええ・・・まあ・・・」
「もしかして、夏樹様という方も、ご結婚されているとか・・・?」
「いえ・・・。もう10年くらい前だったかしら?その頃に離婚して、今は、独身で一人暮らしなんですけど」
裕子はそこまで言うと、急に、今の夏樹を思い出してしまったらしく、思わず、少し笑ってしまった。
「おや・・・何か、思い出されたのですか・・・?」
「あっ・・・すみません。ちょっと思い出してしまって・・・。実は、夏樹さんって、今は、女性なんです」
「はい・・・?あの・・・その・・・今は、女性というは・・・?」
夏樹が、今は、女性になっている・・・。これには、さすがにマスターも驚いたようである。
「女性といっても、女の格好をしているだけの女装家っていうんですかね?でも、夏樹さんは、自分の事を女性化って言ってますけど・・・ふふっ」
「はは・・・。面白い方のようですね」
「面白いって言えば、確かに、昔から面白い人なんですけど。私も30年ぶりに夏樹さんと再会した時には、まさか、夏樹さんが女装をしているとは、夢にも思いもしませんでしたし。それに、男性が女装をしているというより、もう、どこから見ても女性にしか見えないんですよ。だから、私が夏樹さんとメル友で知り合ってから半年くらいまで、普通の女性とメールをしているとばかり思っていたくらいなんですから。夏樹さんが、時々、送ってくれる自分を写した写真を見せられても、私は、その写真を見ても、普通に綺麗な女性だな~って、思っていたんですよ」
「それじゃ、雪子様も、さぞ驚かれたでしょう?」
「それが、全然・・・。やっぱり、そっちいったのね~!なんて、笑っていました。あっ・・・でも、雪子が、そんな女装をしている夏樹さんの写真を初めて見た瞬間に、すぐに夏樹さんだって分かったっていうんですから。しかも、その写真って、夏樹さんがマスクをしている写真だったんです。それで分かっちゃったって言うんですから。そんな雪子にも、私は驚かされました」
喫茶店のマスターは、自分が想像もしていなかった夏樹の女装の事を裕子に聞かされて、
笑っていいものか、悩んでいいものか、ある意味、少し変わった戸惑いに、飲み終えたコーヒーカップの中でスプーンを遊ばせていた。
でも、もし、去年の年末のあの夜の雪子を知らなかったら、分からなかったかもしれないわね。
私だって、あんな雪子なんて今までに一度だって見た事がなかったんだから。
あの夜の雪子が、本当の雪子の姿なのだろうか?
それとも、今の生活の中で生きている雪子の姿が本当の雪子なのだろうか?
もう50歳を過ぎているというのに、あの夜の雪子は、まるで、あの頃のような・・・。
いえ・・・。
もっと幼い頃の人見知りを覚えたばかりの子供が、親の前でだけ見せる無邪気な仕草のように、
夏樹さんにまとわりつきながら好きなだけ甘えているような・・・そんな雪子だった。
「あの・・・この先、雪子はどうなっていくと思いますか?」
「この先・・・ですか・・・」
「ええ・・・」
「その、夏樹様という方次第では?・・・と、思います」
「はぁ~・・・やっぱり・・・」
「ため息をつかれるということは、何か気になる事でも・・・?」
「ええ・・・。正直、色々あることはあるんですが。その中でも一番気になるのが、ほとんど不可能と思えるんです」
「不可能ですか・・・?」
「ええ・・・。それ以外の問題なら、いくらでも相談にのってあげれるし、協力だって出来るんですけど」
「いくらでもということは、もしかして、ご家族の方に雪子様が疑われているのですか?」
「ええ・・・まあ・・・。その一歩手前というか、なんていうか、そんな感じと言えばそうなんですけど・・・」
「という事は、まだ、ご家族の方たちには知られてはいないんですね?」
「ええ・・・今はまだ、週に一度のメールのお付き合い程度なので・・・」
「それだけで、知られる一歩手前という事は、問題は、雪子様の精神状態の方ですか?」
「それもあります・・・。なにせ、雪子の今の旦那さんは、優しくて、家族思いで、非の打ちどころのないマイホームパパタイプというのも問題と言えば問題なのですが・・・」
「なるほど。とても良いお人柄の旦那さんであり、とても暖かい家族のために、雪子様が自分の感情を押し殺してしまうのではないかと心配されているのですか?」
「ええ・・・確かにそれはあると思います。雪子は、自分の家族を裏切るような行為は出来ない性格ですから」
「雪子様は、とても優しいお人柄ですから。そのために、素直な自分の感情と、今の雪子様の家庭との間で、板挟みになってしまうかもしれませんね」
「それでも、もし、雪子が・・・。その時は、私なりに相談にものれますし、協力も出来るんですけど・・・」
「という事は、裕子様の協力でも、どうにも出来ない問題があるのですね?」
「ええ・・・そうなんです・・・」
「それは・・・その夏樹様という方の方に問題があるみたいですね?」
「ええ・・・まあ・・・」
「もしかして、夏樹様という方も、ご結婚されているとか・・・?」
「いえ・・・。もう10年くらい前だったかしら?その頃に離婚して、今は、独身で一人暮らしなんですけど」
裕子はそこまで言うと、急に、今の夏樹を思い出してしまったらしく、思わず、少し笑ってしまった。
「おや・・・何か、思い出されたのですか・・・?」
「あっ・・・すみません。ちょっと思い出してしまって・・・。実は、夏樹さんって、今は、女性なんです」
「はい・・・?あの・・・その・・・今は、女性というは・・・?」
夏樹が、今は、女性になっている・・・。これには、さすがにマスターも驚いたようである。
「女性といっても、女の格好をしているだけの女装家っていうんですかね?でも、夏樹さんは、自分の事を女性化って言ってますけど・・・ふふっ」
「はは・・・。面白い方のようですね」
「面白いって言えば、確かに、昔から面白い人なんですけど。私も30年ぶりに夏樹さんと再会した時には、まさか、夏樹さんが女装をしているとは、夢にも思いもしませんでしたし。それに、男性が女装をしているというより、もう、どこから見ても女性にしか見えないんですよ。だから、私が夏樹さんとメル友で知り合ってから半年くらいまで、普通の女性とメールをしているとばかり思っていたくらいなんですから。夏樹さんが、時々、送ってくれる自分を写した写真を見せられても、私は、その写真を見ても、普通に綺麗な女性だな~って、思っていたんですよ」
「それじゃ、雪子様も、さぞ驚かれたでしょう?」
「それが、全然・・・。やっぱり、そっちいったのね~!なんて、笑っていました。あっ・・・でも、雪子が、そんな女装をしている夏樹さんの写真を初めて見た瞬間に、すぐに夏樹さんだって分かったっていうんですから。しかも、その写真って、夏樹さんがマスクをしている写真だったんです。それで分かっちゃったって言うんですから。そんな雪子にも、私は驚かされました」
喫茶店のマスターは、自分が想像もしていなかった夏樹の女装の事を裕子に聞かされて、
笑っていいものか、悩んでいいものか、ある意味、少し変わった戸惑いに、飲み終えたコーヒーカップの中でスプーンを遊ばせていた。
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