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032 コボルト洞窟②
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『コボルト洞窟』中層の一角にようやくスペースを確保できた僕たちは、ここでコボルトの討伐を試みることにした。ルイーゼたちにとって、初めてのレベル2相当ダンジョンのモンスターとの対戦だ。
僕が指名できる【勇者】の数は2人。ルイーゼの他にもう1人指名できる。正直、過剰戦力だと思うけど、もう1人【勇者】に指名しておこうということになった。話し合いの結果、2人目の【勇者】に選ばれたのは……。
「うっ…!? これは…!?」
ラインハルトだ。ラインハルトが戸惑いの声を上げて己の両手を見ている。そして両の拳を握り、僕を見た。
「これが、【勇者】の力なんですね?」
ラインハルトが、まるで何かを決意したような真剣な顔で僕を見る。そんな顔で見られると、僕にそっちの気は無いけど、ちょっとムズムズする。
「そうだよ。今、君を【勇者】に指名した」
「たいへんな力なのだろうと予想していましたが……まさか、これほどとは…!」
感嘆の表情を浮かべるラインハルトに、なぜかルイーゼが得意げに言う。
「すごいでしょ?」
「すごいなんてものではありません。この無限にも感じられる力は……あぁ、危険です……私が私でなくなってしまいそうなほどの……圧倒的全能感ッ…!」
分かるなー。【勇者】になると、なんでもできそうな強い全能感を感じるんだ。しかも、実際になんでもできそうなほどの力を得てしまっている。気を強く持たないと、力に自我が流されそうになってしまうんだ。【勇者】って、こんな力を人の身で使おうとするバカ共に贈られた称号なのかもしれない。英雄でもなければ賢者でもない。その勇気ぐらいしか褒めるところが無いから【勇者】。
「すごいよねー。お腹の奥からどんどん力が溢れてくる感じで。お腹の奥をずっと消えない炎が舐めてるみたいに気持ちが良いの」
そう言って下腹部を撫でるルイーゼの顔にはサッと朱が走り、まだ幼さの残る顔には不釣り合いなほどの艶があった。思わず見惚れてしまうと、ルイーゼと目が合う。ルイーゼは僕と目が合うと、バチコーンとウィンクを決めてみせた。
「えへへ……」
恥ずかしそうにはにかむルイーゼかわいい!
「【勇者】ねー。あーしも興味はあるかなー」
「そうね。そこまで言われると、どんなものなのか興味深いわね」
「私、も…!」
マルギット、イザベル、リリーも【勇者】の力に興味があるらしい。今回は直接モンスターと殴り合う前衛陣を強化した方が良いだろうとルイーゼとラインハルトを【勇者】にしたけど、彼女たちにも【勇者】になれるチャンスがあってもいいと思う。
「ふぅー、ふぅー、はぁー…。では、狩りを始めましょうか」
「そうね」
荒い息を吐くラインハルトの言葉にルイーゼが頷く。
「じゃあ、始めるわよ!」
「「「「「おー!」」」」」
まぁ、そんなに気合を入れなくても楽勝だと思うけどね。
◇
「つまんなーい!」
果たして、僕の予想は的中した。ルイーゼとラインハルトの2人は、一太刀でコボルトを次々と仕留め、周囲のコボルトを殲滅した。今はコボルトのリポップ待ちだ。
「たしかに、手応えがありませんでしたね」
「私なんてまだ1回も魔法を使ってないわよ」
「ルイルイとハルハル強すぎっしょ」
「強、い…!」
やっぱり【勇者】が2人もなんて、こんな低レベルダンジョンには過剰な戦力だったね。
「さて、どうしましょうか? このまま待っているのも手ですが……」
通常は、周辺のモンスターを殲滅したら次の狩場へと移動する。でも、今回はダンジョンに人が多過ぎる。おそらく、次の狩場にも人が居るだろう。また狩場を探す苦労を思えば、一度確保できた狩場を手放すのは愚行かもしれない。このまま敵がリポップするするのを待つ選択肢は、十分に現実的だ。
「このまま下層に行ってしまうという手もあります」
「へぇー」
いつも慎重なラインハルトには珍しく、強気な発言だった。今日の冒険の目的は、ここ『コボルト洞窟』の中層でコボルトを狩ることだ。自分たちの力がレベル2相当ダンジョンで通用するかどうか確認するためである。そういう意味では、今回はもう冒険の目標は達成している。焦る必要は無い。
「ようやくこの体にも慣れてきました。今の私たちなら下層でも通用すると思います」
そう言ってグッとこぶしを握ってみせるラインハルト。僕も一度だけ体験したから分かる。【勇者】の体は、予想以上に軽く、速く動き、そして力強い。過敏な体の操縦には、慣れが必要だと思っていた。ラインハルトはこの短時間でそれをモノにしたらしい。
「いいじゃない! やってみましょ! 元々そのつもりだったんだし!」
そう言って強気な笑顔を見せるルイーゼ。かわいい。
そんなルイーゼに僕たちは頷いて返す。中層で余裕があるなら下層にも挑戦してみるのも予定通りだ。そのために今日は『コボルト洞窟』に来たと言っても過言ではない。上層から下層まで、レベル1からレベル3まで選んで挑戦できる数少ないレベル可変ダンジョンの1つ。自分たちの実力を試すにはうってつけのダンジョンだ。『コボルト洞窟』がこんなにも人気なのは、訳があるのである。
僕が指名できる【勇者】の数は2人。ルイーゼの他にもう1人指名できる。正直、過剰戦力だと思うけど、もう1人【勇者】に指名しておこうということになった。話し合いの結果、2人目の【勇者】に選ばれたのは……。
「うっ…!? これは…!?」
ラインハルトだ。ラインハルトが戸惑いの声を上げて己の両手を見ている。そして両の拳を握り、僕を見た。
「これが、【勇者】の力なんですね?」
ラインハルトが、まるで何かを決意したような真剣な顔で僕を見る。そんな顔で見られると、僕にそっちの気は無いけど、ちょっとムズムズする。
「そうだよ。今、君を【勇者】に指名した」
「たいへんな力なのだろうと予想していましたが……まさか、これほどとは…!」
感嘆の表情を浮かべるラインハルトに、なぜかルイーゼが得意げに言う。
「すごいでしょ?」
「すごいなんてものではありません。この無限にも感じられる力は……あぁ、危険です……私が私でなくなってしまいそうなほどの……圧倒的全能感ッ…!」
分かるなー。【勇者】になると、なんでもできそうな強い全能感を感じるんだ。しかも、実際になんでもできそうなほどの力を得てしまっている。気を強く持たないと、力に自我が流されそうになってしまうんだ。【勇者】って、こんな力を人の身で使おうとするバカ共に贈られた称号なのかもしれない。英雄でもなければ賢者でもない。その勇気ぐらいしか褒めるところが無いから【勇者】。
「すごいよねー。お腹の奥からどんどん力が溢れてくる感じで。お腹の奥をずっと消えない炎が舐めてるみたいに気持ちが良いの」
そう言って下腹部を撫でるルイーゼの顔にはサッと朱が走り、まだ幼さの残る顔には不釣り合いなほどの艶があった。思わず見惚れてしまうと、ルイーゼと目が合う。ルイーゼは僕と目が合うと、バチコーンとウィンクを決めてみせた。
「えへへ……」
恥ずかしそうにはにかむルイーゼかわいい!
「【勇者】ねー。あーしも興味はあるかなー」
「そうね。そこまで言われると、どんなものなのか興味深いわね」
「私、も…!」
マルギット、イザベル、リリーも【勇者】の力に興味があるらしい。今回は直接モンスターと殴り合う前衛陣を強化した方が良いだろうとルイーゼとラインハルトを【勇者】にしたけど、彼女たちにも【勇者】になれるチャンスがあってもいいと思う。
「ふぅー、ふぅー、はぁー…。では、狩りを始めましょうか」
「そうね」
荒い息を吐くラインハルトの言葉にルイーゼが頷く。
「じゃあ、始めるわよ!」
「「「「「おー!」」」」」
まぁ、そんなに気合を入れなくても楽勝だと思うけどね。
◇
「つまんなーい!」
果たして、僕の予想は的中した。ルイーゼとラインハルトの2人は、一太刀でコボルトを次々と仕留め、周囲のコボルトを殲滅した。今はコボルトのリポップ待ちだ。
「たしかに、手応えがありませんでしたね」
「私なんてまだ1回も魔法を使ってないわよ」
「ルイルイとハルハル強すぎっしょ」
「強、い…!」
やっぱり【勇者】が2人もなんて、こんな低レベルダンジョンには過剰な戦力だったね。
「さて、どうしましょうか? このまま待っているのも手ですが……」
通常は、周辺のモンスターを殲滅したら次の狩場へと移動する。でも、今回はダンジョンに人が多過ぎる。おそらく、次の狩場にも人が居るだろう。また狩場を探す苦労を思えば、一度確保できた狩場を手放すのは愚行かもしれない。このまま敵がリポップするするのを待つ選択肢は、十分に現実的だ。
「このまま下層に行ってしまうという手もあります」
「へぇー」
いつも慎重なラインハルトには珍しく、強気な発言だった。今日の冒険の目的は、ここ『コボルト洞窟』の中層でコボルトを狩ることだ。自分たちの力がレベル2相当ダンジョンで通用するかどうか確認するためである。そういう意味では、今回はもう冒険の目標は達成している。焦る必要は無い。
「ようやくこの体にも慣れてきました。今の私たちなら下層でも通用すると思います」
そう言ってグッとこぶしを握ってみせるラインハルト。僕も一度だけ体験したから分かる。【勇者】の体は、予想以上に軽く、速く動き、そして力強い。過敏な体の操縦には、慣れが必要だと思っていた。ラインハルトはこの短時間でそれをモノにしたらしい。
「いいじゃない! やってみましょ! 元々そのつもりだったんだし!」
そう言って強気な笑顔を見せるルイーゼ。かわいい。
そんなルイーゼに僕たちは頷いて返す。中層で余裕があるなら下層にも挑戦してみるのも予定通りだ。そのために今日は『コボルト洞窟』に来たと言っても過言ではない。上層から下層まで、レベル1からレベル3まで選んで挑戦できる数少ないレベル可変ダンジョンの1つ。自分たちの実力を試すにはうってつけのダンジョンだ。『コボルト洞窟』がこんなにも人気なのは、訳があるのである。
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