【勇者の友人】~【勇者】のギフトの本体が、僕だった件について~戻って来いって言われたって、今更君たちを“友人”だとは思えないよ。

くーねるでぶる(戒め)

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038 客

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「トーマス、客が来たぞ」
「あん?」

 仲間の声に振り向けば、ボス部屋の入口がオレンジ色に照らされているのが見えた。松明の明かりだ。ダンジョンのモンスターは、夜目が利くのか松明なんて使わない。使うのは人間、冒険者だ。つまりはご同業なわけだが、また面倒なことになったな。

「チッ」

 オレは舌打ちして記憶の中の小娘を呪う。こうなったのも、あの小娘が原因だ。

 あの巷では【勇者】なんて呼ばれてる小娘の立身出世物語が広まるにつれて、それに影響されたバカなガキ共が大挙として『コボルト洞窟』に押し寄せた。今、『コボルト洞窟』の上層と中層は大賑わいだ。そのバカ共が後々オレたちの邪魔をしに来るのかと思うと、今から頭が痛い。いったい何人殺せばいいのやら。

 こんなことになるなら、2年前のあの時、小娘を殺しておくべきだったな。たった2人のパーティで『コボルト洞窟』のボス部屋までたどり着いた実力に警戒し、ボスのドロップアイテムが金鉱石ではなかったこと、一度のボス討伐で引き上げたことから殺すのを見逃してやったが、あれは間違いだった。

 2つの松明に照らされた人影が6つ、コボルトキングのポップするボス部屋へと侵入してくる。ダンジョンの最奥であるこの大空洞には、コボルトキングしかポップしない。相手の狙いは間違いなくコボルトキングだ。相手からもこちらの明かりが見えているはずだが、引き返す様子もない。面倒だな。

「どうするリーダー?」

 オレは明らかに面白がった様子のパーティメンバーたちに肩を竦めて返す。

「最初は警告してやるさ」
「ぐふふ、お優しいこって」
「面倒事が嫌いなだけだ」

 オレは本気で言っているのに、パーティメンバーの奴らは下卑た笑みを浮かべてみせる。初めは殺しに戸惑ってたとはとても思えない面だ。血の味を覚えるなんて言葉があるが、そんなに美味いのかねぇ?

「ハンス、来い」

 オレはパーティメンバーの1人を呼ぶと向こうに見える明かりへと歩いていく。

「へいへい」
「ハンス、ちゃんと女が居るか見てこいよ?」
「たりめぇよ」

 やれやれ、女が目的か。たしかに、もう長いことダンジョンに潜ってるから、とんとご無沙汰だったな。意識を向ければ腰が熱く重い気がする。溜まっているな。

 そんなことを考えていたからだろうか、ハンスを連れて向かった先、松明に照らし出された少女たちが、やけに眩しく見えた。

「止まりなさい!」

 オレたちに対峙するように金髪の少女が前に出てくる。こいつがパーティリーダーか? 見たところ男2女4のパーティだ。女の発言力の方が大きいのだろう。それにしても若い。そして、どいつもこいつも装備が新品のようにピカピカだ。もしかしたら、成人したばかりの新人かもしれないな。

「ん?」

 他のメンバーが初心者のような格好しているのに、2人だけ雰囲気が違う。1人は黒髪の女。胸元が大きく開いた黒いドレスを着てやがる。なぜダンジョンでドレスなんだ? 宝具の類か? 見たところ武器の類は持っていない。神官服を着た女が別に居るから、おそらくマジックキャスターだろう。厄介だな。

 そして、もう1人は黒いローブを着た黒髪の男。気を付けて見なければ、洞窟の闇に溶けてしまいそうなほど気配が希薄だ。腰の左右に1本ずつ剣を佩いた双剣士。双剣は扱いが難しい。それでも双剣を使うってことは、それなりの腕なのだろう。こっちも厄介そうだ。

 この2人だけ異質だ。初心者パーティに同行して冒険のいろはを教えてやってるとか? 世の中にはそんなお人好しがいると聞いたことがあるが……。

「何の用か言ってみなさい」

 黙って観察していると、金髪の女が声を上げる。気の強い女だ。見たところ、こいつは間違いなく初心者だな。だからこそ注意が必要だ。普通はここまでくるまでに、もう少しマシな格好になるものだ。ここはレベル3ダンジョンのボス部屋だぞ? よほど戦闘向きのギフトでも貰ったのか、それとも単に黒髪2人のおかげか……分からんが注意が必要か。初心者は一番強い奴をリーダーにしがちだからな。

 まったく、人間相手は戦力が読めんから苦手だ。オレにとってはダンジョンのモンスターの方がよほどマシだな。

「あー……」
「いやいや、ただの挨拶だよ。あんたらもボス狙いだろ? どっちが狩っても恨みっこなしだぜ?」

 帰るように警告しようとしたら、ハンスが爽やかな笑顔を浮かべて饒舌に語り出す。その見た目は気の良いお兄さんといった感じだ。先程浮かべていた下卑た笑みはどこいったんだか。

「おいハンス」

 勝手なことを言うハンスの肩を掴んで咎めると、ハンスはオレと肩を組んで強引に回れ右して歩き出す。

「いいじゃんかよ。じゃあな、また会おうぜ」

 ご丁寧に手を振って別れを告げるハンス。こちらを警戒するように睨み付けていた金髪の女は、きょとんとした顔を晒しているのが見えた。

「ったく、勝手なこと言いやがって……」

 せっかくオレが穏便に済ませてやろうとわざわざ出向いてやったってのに……。

「いいじゃねぇかよ。それより見たか? すっげぇ上玉揃いだったぜ。数も4人で丁度良いしよ」

 たしかに上玉だったが……まさか、女に目が眩んで勝手なことしたのか?

「あのドレス着た女の乳見たかよ? 今にも零れそうだったぜ? あぁ、早く揉みしだきてぇなぁ。ドレスもひん剥いてよぉ。愛撫もしねぇでぶち込んで、あの綺麗な顔をぐちゃぐちゃにしてやりてぇぜ」
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