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046 姫
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「私は、リーダーにはルイーゼが良いと思います」
「そうね。私もそう思うわ」
「えぇ!?」
ラインハルトとイザベルの言葉に、ルイーゼがいつもより一段高く驚きの声を上げた。彼女にとって、それほど意外なことであったらしい。
「でもでも、あたしはみんなを危険に……」
「ルイーゼは忘れているようですが、賊を討伐することはパーティメンバー全員の決定でした。ルイーゼ1人だけが罪を背負う必要は無いのです。今回の件は、全員の責任です」
「でも、でも……」
「それに、ルイーゼが先走りがちなことは知っていました。今回の件もそうです。本来なら、私かイザベルがストッパーになるべきだったんです。今回は止めよう、もっと準備してからにしよう。そう言えれば良かったのですが……」
「自覚は無かったけれど、私たちも浮かれていたのでしょうね……」
ラインハルトとイザベルの視線が僕へと注がれたせいか、皆の視線が僕へと集まる。こんなに注目されると、小心者の僕は緊張してしまうよ。
「え? 僕?」
僕が自分の顔を指して問うと、ラインハルトとイザベルが揃って頷いた。
「ええ。正確にはクルトさんのギフトの力ですが……」
「あの力を知ってしまうと、レベル3ダンジョンを根城にしている賊ぐらい、その程度の賊くらいならなんとでもなると思ってしまったの。勇者の力は強力無比だけど、同時に私たちの戦力基準を壊してしまう危険な毒だったわ……」
毒って……酷い言い様だ。だけど、イザベルの言うことも分かる。一度でも勇者を経験してしまうと、その力の大きさに驚き“あの力が味方に居る、しかも3人も”と考えてしまう。そして、負けるはずがないと油断してしまうのだ。事実、勝敗だけで論じるなら、賊相手に順当に勝っている。負けるはずがないというのは、間違いではない。ただ……。
「私たちは自分たちの強さではなく、弱さにもっと目を向けるべきだったのよ。勇者になれない3人をどう守るのか。そこをもっと考えるべきだったわ。特に、クルトだけは絶対に守らないといけないわね」
「僕を?」
守ってもらえるのは嬉しいけど、そんな特別扱いする理由でもあるのだろうか? 疑問に思っていると、イザベルが真剣な表情で僕を見据える。
「ねぇクルト、勇者の力は、貴方が死んでしまっても有効なのかしら?」
「あー…どうだろう…?」
死んだことが無いので分からない。
「最悪を想定するべきだわ。クルトが死んだら勇者の力が消えるとしましょう。クルトが死んでしまったら、私たちにはもうなす術が無いわ。クルトを蘇生する方法が無いのよ。でも、死んだのが他の人だったらどう? 勇者の力で蘇生ができるわ。今回の私のようにね。だからクルト、貴方の命は他の人よりも重いのよ。そのことを忘れないで」
「うん……」
命の価値は平等ではない。それくらいのことは分かっているつもりだった。でも、これまでいくらでも代わりの居るポーターもどきとして軽く扱われてきたからか、自分の命が重いという言葉に少し違和感を覚えてしまう。
「じゃあ、あーしらは全力でクルクルを守ればオッケーてこと?」
「そうね。死んでも守りなさい」
「え!? それは……」
さすがに他の人が自分を護るために死ぬのは抵抗が……。
「辛いでしょうけど、我慢なさい」
僕の葛藤などお見通しだろうイザベルが、僕の言いかけた言葉をあっさりと切って捨てた。
「イザベルの言葉は厳しいようですけど、間違ったことは言っていません。私たちに必要なのは、クルトさんのために躊躇わず命を捨てる覚悟でしょうね。一度皆さんで殺し合ってみますか? 死ぬのにも人を殺すのにも慣れますし、良い訓練になるかと……」
「嫌よそんなの! 怖すぎるわよ!」
「そーだ! そーだ!」
「怖い、よ?」
「良い考えだと思ったのですが……」
「貴方は効率を求め過ぎなのよ。だから顔が良いのに恋人が居ないのよ?」
「くっ…!」
女性陣にボコボコにされたラインハルトが救いを求めるように僕を見たけど、僕はそっと目を逸らした。
「そんな…!?」
ラインハルトが、まるでひどい裏切りに遭ったかのような声を上げるけど……ひょっとして、僕もサイコパス仲間と思われていたんだろうか? さすがに心外である。というよりも、優しくて気配り上手なラインハルトの意外な一面にドン引きである。さすがにその思考は怖すぎる。
「ハルトのは行き過ぎてるけど、覚悟が必要なのは事実ね。そのあたりはゆっくりと学んでいきましょう。変な性癖が付いても嫌だし……」
「せいへき?」
「せいへきってなーにー?」
「気になる、ます…!」
「要らないところを拾うわね……。世の中にはいろんな人が居るというお話よ。これ以上はお子ちゃまには早いかしら」
「「「ぶーぶー」」」
ルイーゼ、マルギット、リリーの3人がブーイングする仕草は、なんだか小さな子どもみたいでかわいらしい。合図をしたわけでもないのに、3人とも揃って同じ仕草をするのは、これまでの歴史の積み重ねを感じ、言葉にしなくても分かり合えている様子はキラキラ輝いて見えた。僕も昔は……止めよう、虚しいだけだ。僕はそっと目を閉じた。
「そうね。私もそう思うわ」
「えぇ!?」
ラインハルトとイザベルの言葉に、ルイーゼがいつもより一段高く驚きの声を上げた。彼女にとって、それほど意外なことであったらしい。
「でもでも、あたしはみんなを危険に……」
「ルイーゼは忘れているようですが、賊を討伐することはパーティメンバー全員の決定でした。ルイーゼ1人だけが罪を背負う必要は無いのです。今回の件は、全員の責任です」
「でも、でも……」
「それに、ルイーゼが先走りがちなことは知っていました。今回の件もそうです。本来なら、私かイザベルがストッパーになるべきだったんです。今回は止めよう、もっと準備してからにしよう。そう言えれば良かったのですが……」
「自覚は無かったけれど、私たちも浮かれていたのでしょうね……」
ラインハルトとイザベルの視線が僕へと注がれたせいか、皆の視線が僕へと集まる。こんなに注目されると、小心者の僕は緊張してしまうよ。
「え? 僕?」
僕が自分の顔を指して問うと、ラインハルトとイザベルが揃って頷いた。
「ええ。正確にはクルトさんのギフトの力ですが……」
「あの力を知ってしまうと、レベル3ダンジョンを根城にしている賊ぐらい、その程度の賊くらいならなんとでもなると思ってしまったの。勇者の力は強力無比だけど、同時に私たちの戦力基準を壊してしまう危険な毒だったわ……」
毒って……酷い言い様だ。だけど、イザベルの言うことも分かる。一度でも勇者を経験してしまうと、その力の大きさに驚き“あの力が味方に居る、しかも3人も”と考えてしまう。そして、負けるはずがないと油断してしまうのだ。事実、勝敗だけで論じるなら、賊相手に順当に勝っている。負けるはずがないというのは、間違いではない。ただ……。
「私たちは自分たちの強さではなく、弱さにもっと目を向けるべきだったのよ。勇者になれない3人をどう守るのか。そこをもっと考えるべきだったわ。特に、クルトだけは絶対に守らないといけないわね」
「僕を?」
守ってもらえるのは嬉しいけど、そんな特別扱いする理由でもあるのだろうか? 疑問に思っていると、イザベルが真剣な表情で僕を見据える。
「ねぇクルト、勇者の力は、貴方が死んでしまっても有効なのかしら?」
「あー…どうだろう…?」
死んだことが無いので分からない。
「最悪を想定するべきだわ。クルトが死んだら勇者の力が消えるとしましょう。クルトが死んでしまったら、私たちにはもうなす術が無いわ。クルトを蘇生する方法が無いのよ。でも、死んだのが他の人だったらどう? 勇者の力で蘇生ができるわ。今回の私のようにね。だからクルト、貴方の命は他の人よりも重いのよ。そのことを忘れないで」
「うん……」
命の価値は平等ではない。それくらいのことは分かっているつもりだった。でも、これまでいくらでも代わりの居るポーターもどきとして軽く扱われてきたからか、自分の命が重いという言葉に少し違和感を覚えてしまう。
「じゃあ、あーしらは全力でクルクルを守ればオッケーてこと?」
「そうね。死んでも守りなさい」
「え!? それは……」
さすがに他の人が自分を護るために死ぬのは抵抗が……。
「辛いでしょうけど、我慢なさい」
僕の葛藤などお見通しだろうイザベルが、僕の言いかけた言葉をあっさりと切って捨てた。
「イザベルの言葉は厳しいようですけど、間違ったことは言っていません。私たちに必要なのは、クルトさんのために躊躇わず命を捨てる覚悟でしょうね。一度皆さんで殺し合ってみますか? 死ぬのにも人を殺すのにも慣れますし、良い訓練になるかと……」
「嫌よそんなの! 怖すぎるわよ!」
「そーだ! そーだ!」
「怖い、よ?」
「良い考えだと思ったのですが……」
「貴方は効率を求め過ぎなのよ。だから顔が良いのに恋人が居ないのよ?」
「くっ…!」
女性陣にボコボコにされたラインハルトが救いを求めるように僕を見たけど、僕はそっと目を逸らした。
「そんな…!?」
ラインハルトが、まるでひどい裏切りに遭ったかのような声を上げるけど……ひょっとして、僕もサイコパス仲間と思われていたんだろうか? さすがに心外である。というよりも、優しくて気配り上手なラインハルトの意外な一面にドン引きである。さすがにその思考は怖すぎる。
「ハルトのは行き過ぎてるけど、覚悟が必要なのは事実ね。そのあたりはゆっくりと学んでいきましょう。変な性癖が付いても嫌だし……」
「せいへき?」
「せいへきってなーにー?」
「気になる、ます…!」
「要らないところを拾うわね……。世の中にはいろんな人が居るというお話よ。これ以上はお子ちゃまには早いかしら」
「「「ぶーぶー」」」
ルイーゼ、マルギット、リリーの3人がブーイングする仕草は、なんだか小さな子どもみたいでかわいらしい。合図をしたわけでもないのに、3人とも揃って同じ仕草をするのは、これまでの歴史の積み重ねを感じ、言葉にしなくても分かり合えている様子はキラキラ輝いて見えた。僕も昔は……止めよう、虚しいだけだ。僕はそっと目を閉じた。
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