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第二章
056 慢心?
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「たしかにルイーゼの言ってることは滅茶苦茶です。ようやくレベル4のダンジョンを攻略した私たちが、次に攻略を目指すダンジョンがレベル7というのは正気の沙汰ではありません」
「うん……」
僕は、一瞬ラインハルトが壊れちゃったのかと心配したけど、その常識的な見解に安堵する。やっぱりラインハルトは頼りになるな。僕の言いたいことなんて全部分かっているようだ。どうかそのままいつものようにルイーゼの暴走を止めてほしい。
「ですが、こうも思うのです。はたして私たちにそのような正気など必要なのでしょうか?」
「うん…?」
なにか流れが変わったような気がした。僕の予想とは違い、ラインハルトはルイーゼではなく僕に言い聞かせるように言葉を重ねていく。
「そもそも、私たちは常識で計れるようなものなのでしょうか?」
「どういうこと?」
「私たちは常識から外れてしまったのかもしれません」
どういうことだろう? ラインハルトの言葉は抽象的過ぎて僕にはよく分からない。
「クルトさんが過去に『極致の魔剣』として『万魔の巨城』を攻略したことは知っています」
「え? うん……」
いきなりラインハルトの話が変わって驚くけど、たしかに僕は過去に『極致の魔剣』として『万魔の巨城』の攻略に同行したことがある。
「勇者アンナの攻略したダンジョンの中で最高レベルのダンジョンですね」
ラインハルトは相変わらずよく調べているなぁ。たしかに、『万魔の巨城』は『極致の魔剣』が攻略した最高レベルのダンジョンだ。たぶん、この時のアンナが一番調子が良かっただろう。その後のアンナは、調子を崩しがちになり、ダンジョンを攻略することよりも冒険者ギルドからのアイドル活動のようなクエストを受けることが多くなった。
「『万魔の巨城』の攻略にあたって、勇者アンナの働きが大きく、他のメンバーは居ても居なくても変わらなかったという噂は本当でしょうか?」
「それは……本当だよ」
ラインハルトが頷いて僕に続きを促す。
「モンスターを倒して道を切り開いたのも、ボスを倒したのも全部アンナだよ。レベル7のダンジョンだからね、モンスターもボスも一撃というわけにはいかなかったけど、他のメンバーはあまり役に立ってるようには見えなかったかな。むしろ、守らなくちゃいけない分、足手纏いだったと思う」
アンナと他のメンバーは、それほどまでに隔絶した力の差があり、そんな足手纏いを複数人連れていても、レベル7という高レベルのダンジョンを攻略してしまうほどの力が勇者にはあった。
「そんな圧倒的な戦力を持つ勇者を3人も擁する私たちは、もはや常識では計れない存在なのではないでしょうか?」
「………」
ラインハルトの言う通りかもしれない……。僕は無意識に挑戦するダンジョンのレベルは、1つずつ上げていくものだと思っていた。飛ばすにしても1つだけだと思っていた。2つも階級を飛ばすなんて考えもしなかった。無理だろうと諦めていた。でも、ラインハルトの言葉に納得してしまった僕が居る。もしかしたら、僕たちは『万魔の巨城』をも攻略できてしまうのでは……?
しかし、やはり時期尚早だとあくまで常識を訴える僕も居る。この前の轍は踏まない。ここは僕が強固に反対して、あくまでも翻意を訴えるべきではないかと。僕は答えを求めるようにルイーゼを見ていた。
「あたしたちと『極致の魔剣』、どっちが強いの?」
「ッ!?」
ルイーゼの自信に溢れた言葉に、僕は気付かされた。それはもちろん、勇者を3人も擁する『融けない六華』の方が強いだろう。戦闘力だけ見れば、既に『融けない六華』は『極致の魔剣』を超越している。
「………」
「罠のことならマルギットがいるし」
「りょっ! 罠ならあーしにお任せってね」
言葉を紡げない僕にルイーゼの言葉が重ねられる。たしかに、高レベルダンジョンには付き物のトラップは、【罠師】のギフトを持つマルギットが居れば怖くない。
「で、でも……その……やっぱり経験が……」
この前の『コボルト洞窟』で、僕たちは経験不足によって酷い目に遭ったばかりだ。勇者のリザレクションという規格外の奇跡があったから助かったものの、普通なら僕とイザベルは、2人とも死んでいただろう。
それに、リザレクションがあるからといって無茶をするのはよくない。一度リザレクションを使用すると、一定時間の間、勇者の力を失うことになるからだ。リザレクションという奇跡は、対象が死んだ直後にしか効果が無く、一時的な勇者の力の喪失、それによる戦力の大幅な低下……ダンジョンの中で使うにはリスクが高すぎるのだ。リザレクションは、安易に頼ってはいけない最終手段とするべきだろう。使わないに越したことはない。リザレクションがあるからと慢心していいわけでは決してないのだ。
「経験なら十分にあるわ」
そう言って得意げに胸を張るルイーゼはかわいいけど、不安になってしまう。レベル4ダンジョンがあまりにも簡単に攻略できてしまったから、ルイーゼは慢心してしまっているのではないだろうか?
「うん……」
僕は、一瞬ラインハルトが壊れちゃったのかと心配したけど、その常識的な見解に安堵する。やっぱりラインハルトは頼りになるな。僕の言いたいことなんて全部分かっているようだ。どうかそのままいつものようにルイーゼの暴走を止めてほしい。
「ですが、こうも思うのです。はたして私たちにそのような正気など必要なのでしょうか?」
「うん…?」
なにか流れが変わったような気がした。僕の予想とは違い、ラインハルトはルイーゼではなく僕に言い聞かせるように言葉を重ねていく。
「そもそも、私たちは常識で計れるようなものなのでしょうか?」
「どういうこと?」
「私たちは常識から外れてしまったのかもしれません」
どういうことだろう? ラインハルトの言葉は抽象的過ぎて僕にはよく分からない。
「クルトさんが過去に『極致の魔剣』として『万魔の巨城』を攻略したことは知っています」
「え? うん……」
いきなりラインハルトの話が変わって驚くけど、たしかに僕は過去に『極致の魔剣』として『万魔の巨城』の攻略に同行したことがある。
「勇者アンナの攻略したダンジョンの中で最高レベルのダンジョンですね」
ラインハルトは相変わらずよく調べているなぁ。たしかに、『万魔の巨城』は『極致の魔剣』が攻略した最高レベルのダンジョンだ。たぶん、この時のアンナが一番調子が良かっただろう。その後のアンナは、調子を崩しがちになり、ダンジョンを攻略することよりも冒険者ギルドからのアイドル活動のようなクエストを受けることが多くなった。
「『万魔の巨城』の攻略にあたって、勇者アンナの働きが大きく、他のメンバーは居ても居なくても変わらなかったという噂は本当でしょうか?」
「それは……本当だよ」
ラインハルトが頷いて僕に続きを促す。
「モンスターを倒して道を切り開いたのも、ボスを倒したのも全部アンナだよ。レベル7のダンジョンだからね、モンスターもボスも一撃というわけにはいかなかったけど、他のメンバーはあまり役に立ってるようには見えなかったかな。むしろ、守らなくちゃいけない分、足手纏いだったと思う」
アンナと他のメンバーは、それほどまでに隔絶した力の差があり、そんな足手纏いを複数人連れていても、レベル7という高レベルのダンジョンを攻略してしまうほどの力が勇者にはあった。
「そんな圧倒的な戦力を持つ勇者を3人も擁する私たちは、もはや常識では計れない存在なのではないでしょうか?」
「………」
ラインハルトの言う通りかもしれない……。僕は無意識に挑戦するダンジョンのレベルは、1つずつ上げていくものだと思っていた。飛ばすにしても1つだけだと思っていた。2つも階級を飛ばすなんて考えもしなかった。無理だろうと諦めていた。でも、ラインハルトの言葉に納得してしまった僕が居る。もしかしたら、僕たちは『万魔の巨城』をも攻略できてしまうのでは……?
しかし、やはり時期尚早だとあくまで常識を訴える僕も居る。この前の轍は踏まない。ここは僕が強固に反対して、あくまでも翻意を訴えるべきではないかと。僕は答えを求めるようにルイーゼを見ていた。
「あたしたちと『極致の魔剣』、どっちが強いの?」
「ッ!?」
ルイーゼの自信に溢れた言葉に、僕は気付かされた。それはもちろん、勇者を3人も擁する『融けない六華』の方が強いだろう。戦闘力だけ見れば、既に『融けない六華』は『極致の魔剣』を超越している。
「………」
「罠のことならマルギットがいるし」
「りょっ! 罠ならあーしにお任せってね」
言葉を紡げない僕にルイーゼの言葉が重ねられる。たしかに、高レベルダンジョンには付き物のトラップは、【罠師】のギフトを持つマルギットが居れば怖くない。
「で、でも……その……やっぱり経験が……」
この前の『コボルト洞窟』で、僕たちは経験不足によって酷い目に遭ったばかりだ。勇者のリザレクションという規格外の奇跡があったから助かったものの、普通なら僕とイザベルは、2人とも死んでいただろう。
それに、リザレクションがあるからといって無茶をするのはよくない。一度リザレクションを使用すると、一定時間の間、勇者の力を失うことになるからだ。リザレクションという奇跡は、対象が死んだ直後にしか効果が無く、一時的な勇者の力の喪失、それによる戦力の大幅な低下……ダンジョンの中で使うにはリスクが高すぎるのだ。リザレクションは、安易に頼ってはいけない最終手段とするべきだろう。使わないに越したことはない。リザレクションがあるからと慢心していいわけでは決してないのだ。
「経験なら十分にあるわ」
そう言って得意げに胸を張るルイーゼはかわいいけど、不安になってしまう。レベル4ダンジョンがあまりにも簡単に攻略できてしまったから、ルイーゼは慢心してしまっているのではないだろうか?
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