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035 ジャガイモ発見?
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「このマヨネーズ、絶対に売れるわ!」
シャルリーヌが両手をしっかり握って興奮したようにオレを上目遣いで見上げている。
正直に言おうか?
めちゃくちゃかわいいな! なんだこのかわいい生き物は!
「まさか王都にもないおいしいクリームに出会えるなんて! これ絶対に王都でも売れますわ!」
「売れると言われてもなぁ。どうやって売るの?」
一応、お抱え商人のエタンはいるけど、彼はまだ王都どころか辺境にも店を持ってない。王都の店で売るとなると、信用できる商人を探すところから始めないといけないな。
「そのあたりは大丈夫ですわ! ブラシェール伯爵家は商会をいくつも持ってますの! ぜひお父様とお話してくださいまし! 損はさせませんわ!」
「へえ」
なるほど。ブラシェール伯爵家の力を借りるのは良い手かもしれないな。シャルリーヌと結婚したら親族になるんだし、父上とも仲が良い。ぼったくられることはないだろう。
「そうだね。前向きに考えてみるよ」
「きっとですよ!」
それにしても、ブラシェール伯爵家がいくつも商会を運営してるのは初めて知ったな。たぶん、その商会がブラシェール伯爵家の財政面を支えているのだろう。
そんな裕福なブラシェール伯爵家でも飛空艇は高くて買えないらしいから、飛空艇を持っている貴族というのは、かなりの大金持ちだな。
まぁ、ヴィアラット家のような例外もあるが。
その後、意外にも短い時間で母上とのお茶会は終わった。
まぁ、お母様はつわりで苦しんでいるからね。お客様の前で吐いたりするのを嫌ったのだろう。
そんなこんなで、オレとシャルリーヌは本村と呼ばれる村の中を散策中だ。
「のどかなところね」
「そう?」
まぁ、一面に畑が広がっている光景は王都ではまず見れないだろうなぁ。
「そういえばわたくし、初めて王都の外に出たかも」
「そうなんだ」
「ええ! 王都の外ってこんなに緑が広がっているのね。空気がおいしい」
シャルリーヌが風でたなびく髪を軽く片手で押さえて、目を閉じて深呼吸している。その姿は、まるで映画のワンシーンのようにバッチリ決まっていた。
ムービーなんて贅沢は言わない。ああ、シャルリーヌをスクショしたい! なんでオレの目にはスクショ機能が無いんだ!
「ねえ、あれは何?」
「ん?」
シャルリーヌの指差した方向では、村人たちがせっせと畑の手入れをしていた。
「ああ、畑に水を撒いたり、雑草を抜いたりしているんだよ」
「? ここはあまり雨が降らないのかしら?」
シャルリーヌがこてんと首をかしげていた。かわいいなぁもう!
「どうしてそう思うの?」
「わたくしもジャガの花を育てているから、植物には水が必要だというのはわかるの。でも、それはわたくしがジャガの花を屋内で育てているから。でも外で育てるなら、雨が降るでしょう? 雨の水だけでは足りないのかしら?」
「そうだなぁ……」
意外と難しい質問だ。オレは農業に関してあんまり詳しくないんだよなぁ。
そして、オレの聞き間違えじゃなければ、めちゃくちゃ気になる花の名前が出てきたぞ!
「たぶん、雨が不定期だからじゃないかな? 雨が降るなら水を撒く必要ないけど、このところ晴れが続いたから、土が乾いてるんだと思うよ。それよりも!」
「ッ!?」
オレはシャルリーヌと向かい合って、その小さな肩に両手を置いた。
間近で見るシャルリーヌはやっぱり綺麗だ。まるで神様が創り上げた最高傑作だよ。目が大きいし、まつ毛長っ!
「な、なによ……?」
シャルリーヌは強気に言うが、その目はオレから逸らされているし、肩に置いた手からは、シャルリーヌが微かに震えているのがわかった。
怖がらせちゃったかな?
オレとシャルリーヌでは、身長差もあるからな。いきなり自分より大きな男に肩を掴まれれば怖いかもしれない。反省だな。
強気な態度が目立つけど、シャルリーヌの本質はゲーム通りの臆病な少女なのだろう。
「ごめん。怖かった?」
「こ、怖くなんてないわよ! それで? 何よ?」
「ジャガの花について知りたくて。それって根っこが大きく育たないか? まるで芋みたいに」
「よく知ってるのね。最近輸入されてきて貴族の間で流行ってるのよ。あなたも育ててるの?」
これ、ジャガイモじゃね?
ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』では料理をすることができるのだが、その材料にジャガイモが登場している。だから存在していることは知っていたし、エタンにも探させていたのだが、見つからなかった。
そうか。最近出回り始めたのか。貴族の間で取引されているなら、少し前までただの行商人だったエタンが見つけるのは難しかったかもしれない。
「いや、育ててないよ。それで、その芋の部分は食べられるの?」
「え? 知らないの? 芋の部分には死ぬほどではないけど毒があるらしいわよ? 食べたら腹痛になるらしいわ」
いや、もう確実にジャガイモだわ、それ!
オレは農業には詳しくないが、ジャガイモのことは知っている。ジャガイモは寒さに強い救貧作物の代表格だ。
北海道でも育てられるんだ。王国の北東部にあり、豪雪地帯であるヴィアラット領でも十分育てられるだろう。
ジャガイモは、歴史を変えた作物としても知られている。そのパワーをどうかこのヴィアラット領でも発揮してほしい。
シャルリーヌが両手をしっかり握って興奮したようにオレを上目遣いで見上げている。
正直に言おうか?
めちゃくちゃかわいいな! なんだこのかわいい生き物は!
「まさか王都にもないおいしいクリームに出会えるなんて! これ絶対に王都でも売れますわ!」
「売れると言われてもなぁ。どうやって売るの?」
一応、お抱え商人のエタンはいるけど、彼はまだ王都どころか辺境にも店を持ってない。王都の店で売るとなると、信用できる商人を探すところから始めないといけないな。
「そのあたりは大丈夫ですわ! ブラシェール伯爵家は商会をいくつも持ってますの! ぜひお父様とお話してくださいまし! 損はさせませんわ!」
「へえ」
なるほど。ブラシェール伯爵家の力を借りるのは良い手かもしれないな。シャルリーヌと結婚したら親族になるんだし、父上とも仲が良い。ぼったくられることはないだろう。
「そうだね。前向きに考えてみるよ」
「きっとですよ!」
それにしても、ブラシェール伯爵家がいくつも商会を運営してるのは初めて知ったな。たぶん、その商会がブラシェール伯爵家の財政面を支えているのだろう。
そんな裕福なブラシェール伯爵家でも飛空艇は高くて買えないらしいから、飛空艇を持っている貴族というのは、かなりの大金持ちだな。
まぁ、ヴィアラット家のような例外もあるが。
その後、意外にも短い時間で母上とのお茶会は終わった。
まぁ、お母様はつわりで苦しんでいるからね。お客様の前で吐いたりするのを嫌ったのだろう。
そんなこんなで、オレとシャルリーヌは本村と呼ばれる村の中を散策中だ。
「のどかなところね」
「そう?」
まぁ、一面に畑が広がっている光景は王都ではまず見れないだろうなぁ。
「そういえばわたくし、初めて王都の外に出たかも」
「そうなんだ」
「ええ! 王都の外ってこんなに緑が広がっているのね。空気がおいしい」
シャルリーヌが風でたなびく髪を軽く片手で押さえて、目を閉じて深呼吸している。その姿は、まるで映画のワンシーンのようにバッチリ決まっていた。
ムービーなんて贅沢は言わない。ああ、シャルリーヌをスクショしたい! なんでオレの目にはスクショ機能が無いんだ!
「ねえ、あれは何?」
「ん?」
シャルリーヌの指差した方向では、村人たちがせっせと畑の手入れをしていた。
「ああ、畑に水を撒いたり、雑草を抜いたりしているんだよ」
「? ここはあまり雨が降らないのかしら?」
シャルリーヌがこてんと首をかしげていた。かわいいなぁもう!
「どうしてそう思うの?」
「わたくしもジャガの花を育てているから、植物には水が必要だというのはわかるの。でも、それはわたくしがジャガの花を屋内で育てているから。でも外で育てるなら、雨が降るでしょう? 雨の水だけでは足りないのかしら?」
「そうだなぁ……」
意外と難しい質問だ。オレは農業に関してあんまり詳しくないんだよなぁ。
そして、オレの聞き間違えじゃなければ、めちゃくちゃ気になる花の名前が出てきたぞ!
「たぶん、雨が不定期だからじゃないかな? 雨が降るなら水を撒く必要ないけど、このところ晴れが続いたから、土が乾いてるんだと思うよ。それよりも!」
「ッ!?」
オレはシャルリーヌと向かい合って、その小さな肩に両手を置いた。
間近で見るシャルリーヌはやっぱり綺麗だ。まるで神様が創り上げた最高傑作だよ。目が大きいし、まつ毛長っ!
「な、なによ……?」
シャルリーヌは強気に言うが、その目はオレから逸らされているし、肩に置いた手からは、シャルリーヌが微かに震えているのがわかった。
怖がらせちゃったかな?
オレとシャルリーヌでは、身長差もあるからな。いきなり自分より大きな男に肩を掴まれれば怖いかもしれない。反省だな。
強気な態度が目立つけど、シャルリーヌの本質はゲーム通りの臆病な少女なのだろう。
「ごめん。怖かった?」
「こ、怖くなんてないわよ! それで? 何よ?」
「ジャガの花について知りたくて。それって根っこが大きく育たないか? まるで芋みたいに」
「よく知ってるのね。最近輸入されてきて貴族の間で流行ってるのよ。あなたも育ててるの?」
これ、ジャガイモじゃね?
ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』では料理をすることができるのだが、その材料にジャガイモが登場している。だから存在していることは知っていたし、エタンにも探させていたのだが、見つからなかった。
そうか。最近出回り始めたのか。貴族の間で取引されているなら、少し前までただの行商人だったエタンが見つけるのは難しかったかもしれない。
「いや、育ててないよ。それで、その芋の部分は食べられるの?」
「え? 知らないの? 芋の部分には死ぬほどではないけど毒があるらしいわよ? 食べたら腹痛になるらしいわ」
いや、もう確実にジャガイモだわ、それ!
オレは農業には詳しくないが、ジャガイモのことは知っている。ジャガイモは寒さに強い救貧作物の代表格だ。
北海道でも育てられるんだ。王国の北東部にあり、豪雪地帯であるヴィアラット領でも十分育てられるだろう。
ジャガイモは、歴史を変えた作物としても知られている。そのパワーをどうかこのヴィアラット領でも発揮してほしい。
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