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057 問題児?
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おそらくだが、テオドールは転生者じゃない。こいつはただのガキだ。
オレが自分よりも注目を集めているのが許せなかったのだ。
ゲームでも主人公に絡んだのも、自分より目立つ奴が気に入らなかったからだろう。
なるほどなぁ。これもオレがヴァネッサを手に入れたことによるシナリオ改変なのか。
ゲームとは違ってオレにヴァネッサを要求したことで、テオドールはかなりの負債を抱えてしまった。辺境伯に怒られることは確実。最悪の場合、廃嫡もありえるだろう。もしかしたら、学園を去ることになるかもしれない。
かわいそうだとは思うが、ここで甘い態度を取ればオレがナメられることになる。
テオドール、強く生きろ……!
◇
「はぁ……」
わたくし、コランティーヌは教員室に戻ると、ついに深い溜息を吐いてしまいました。
たった今、生徒同士の決闘騒ぎを立会人として収めてきたところです。
まったく、どうしてわたくしの担当する学年は問題ばかり起こるのでしょうか。まだ初日ですよ? こんな日々が卒業まであと三年間続くのかと思うと眩暈を起こしそうです。
決闘騒ぎを起こしたのは、今朝と同じくテオドール・ダルセー。その相手も今朝と同じくアベル・ヴィアラットでした。
テオドールは、今朝の敗北を取り戻そうと三年生のエルネスト・ラシーヌを代理人にしてアベルに挑んだようでしたが……相手が悪過ぎましたね。
エルネスト・ラシーヌ。三年生の中でも片手に入るほどの実力者ですが、アベル・ヴィアラットの実力はもはや学生の範疇にありません。先ほどの決闘を見て、改めてそう思いました。
アベル・ヴィアラットはやはり完全なる規格外。未だ十二歳という年齢に恐怖を覚えるほどの逸材です。
もうわたくしの手に負えないのは確実です。
わたくしにちゃんと指導できるでしょうか……。アベルくんがいい子なことを願うばかりです……。
「はぁ……」
思わず、また溜息を吐いてしまいました。
「コランティーヌ先生、お疲れのようですな。どうかなさいましたかの?」
声に振り向けば、背筋のしっかり伸びた隙のない老人の姿がありました。
御年八十を超える現役の武術教師、アンセルム先生です。
「アンセルム先生……。いえ、今年の一年生なのですが、まだ入学初日なのに二回も決闘騒ぎがありまして……。恥ずかしながら、教師としてやっていけるのか自信が……」
「ほっほっほ。コランティーヌ先生ならば大丈夫ですよ。私もできる限りお手伝いいたしましょう」
「ありがとうございます、アンセルム先生」
「しかし、初日から決闘とは。今年の一年生は元気いっぱいですな」
「そ、そうですね……」
元気? あれは元気と形容してもいいものなのでしょうか?
できればその有り余った元気を学業にも活かしてほしいところです。
「それで、どうでしたかな、ヴィアラットの小せがれは?」
「ヴィアラット、アベルくんですか?」
わたくしは一瞬口ごもってしまう。
「その……自分の目で見ても信じられない実力です。魔法も斬ってしまいますし、三年生のエルネストくんにも余裕で勝ってしまいますし……。正直、少し恐ろしいくらいです……」
「ほう。なるほど、なるほど」
しかし、アンセルム先生はわたくしの話を聞いても嬉しそうに何度も頷くだけだった。
なぜ、アンセルム先生が笑えるのかわかりません。アベル・ヴィアラットが問題児だった場合、かなり困ることになると思うのですが……。
わたくしは武術はからっきしなので、武術を鍛えている者同士にしかわからない何かがあるのでしょうか?
オレが自分よりも注目を集めているのが許せなかったのだ。
ゲームでも主人公に絡んだのも、自分より目立つ奴が気に入らなかったからだろう。
なるほどなぁ。これもオレがヴァネッサを手に入れたことによるシナリオ改変なのか。
ゲームとは違ってオレにヴァネッサを要求したことで、テオドールはかなりの負債を抱えてしまった。辺境伯に怒られることは確実。最悪の場合、廃嫡もありえるだろう。もしかしたら、学園を去ることになるかもしれない。
かわいそうだとは思うが、ここで甘い態度を取ればオレがナメられることになる。
テオドール、強く生きろ……!
◇
「はぁ……」
わたくし、コランティーヌは教員室に戻ると、ついに深い溜息を吐いてしまいました。
たった今、生徒同士の決闘騒ぎを立会人として収めてきたところです。
まったく、どうしてわたくしの担当する学年は問題ばかり起こるのでしょうか。まだ初日ですよ? こんな日々が卒業まであと三年間続くのかと思うと眩暈を起こしそうです。
決闘騒ぎを起こしたのは、今朝と同じくテオドール・ダルセー。その相手も今朝と同じくアベル・ヴィアラットでした。
テオドールは、今朝の敗北を取り戻そうと三年生のエルネスト・ラシーヌを代理人にしてアベルに挑んだようでしたが……相手が悪過ぎましたね。
エルネスト・ラシーヌ。三年生の中でも片手に入るほどの実力者ですが、アベル・ヴィアラットの実力はもはや学生の範疇にありません。先ほどの決闘を見て、改めてそう思いました。
アベル・ヴィアラットはやはり完全なる規格外。未だ十二歳という年齢に恐怖を覚えるほどの逸材です。
もうわたくしの手に負えないのは確実です。
わたくしにちゃんと指導できるでしょうか……。アベルくんがいい子なことを願うばかりです……。
「はぁ……」
思わず、また溜息を吐いてしまいました。
「コランティーヌ先生、お疲れのようですな。どうかなさいましたかの?」
声に振り向けば、背筋のしっかり伸びた隙のない老人の姿がありました。
御年八十を超える現役の武術教師、アンセルム先生です。
「アンセルム先生……。いえ、今年の一年生なのですが、まだ入学初日なのに二回も決闘騒ぎがありまして……。恥ずかしながら、教師としてやっていけるのか自信が……」
「ほっほっほ。コランティーヌ先生ならば大丈夫ですよ。私もできる限りお手伝いいたしましょう」
「ありがとうございます、アンセルム先生」
「しかし、初日から決闘とは。今年の一年生は元気いっぱいですな」
「そ、そうですね……」
元気? あれは元気と形容してもいいものなのでしょうか?
できればその有り余った元気を学業にも活かしてほしいところです。
「それで、どうでしたかな、ヴィアラットの小せがれは?」
「ヴィアラット、アベルくんですか?」
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「その……自分の目で見ても信じられない実力です。魔法も斬ってしまいますし、三年生のエルネストくんにも余裕で勝ってしまいますし……。正直、少し恐ろしいくらいです……」
「ほう。なるほど、なるほど」
しかし、アンセルム先生はわたくしの話を聞いても嬉しそうに何度も頷くだけだった。
なぜ、アンセルム先生が笑えるのかわかりません。アベル・ヴィアラットが問題児だった場合、かなり困ることになると思うのですが……。
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この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
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