【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)

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080 温もり

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「では、失礼する」
「失礼します」
「はい、ありがとうございました……。はぁ……」

 わたくし、コランティーヌは、職員室から出て行くフェルディナン殿下とエリクくんを見送り、大きなため息を吐いた。

 一応、予想はしていましたよ?

 予想はしていましたけど、まさか本当にアベルくんとジゼルさんが『嘆きの地下墳墓』を攻略してしまうなんて……。

 ジゼルさんは特待生で入った平民の生徒で、強力なギフトを持っています。アンセルム先生のお話では、とてもよく鍛えているようで、学年でも上位の実力を持っているというお話でした。

 そして、アベルくん……。

 ジゼルさんが強者ならば、彼は異常です。まるで、モンスターの中にたまに出現する異常個体のような生徒。いくら武に優れる辺境出身の生徒とはいえ、十二歳で魔法を斬るという偉業を成し遂げるのは、異常と形容するしかありません。

「しかも……」

 しかも、今日はなんと連続で二回も魔法を斬るという離れ業を披露したようで……。普通なら疑ってしまうような内容ですが、アベルくんだと妙に納得できてしまうのが嫌なところです。

 それに、報告者があのフェルディナン殿下だとすれば、そのご報告を疑うなど不敬になってしまいます。

 いくら教師と生徒の関係とはいえ、やはり王族の方の扱いは慎重にならなくてはいけませんからね。

「はぁ……」

 思わずため息が出てしまいます。

 元々、今回のダンジョン攻略は、一年生の能力と上級生の指導力を見るためのものです。頭の切れるフェルディナン殿下と実力の底が見えないアベルくんが組めば、それはもう『嘆きの地下墳墓』の攻略も当たり前なのかもしれませんね。

 優秀過ぎる生徒を指導する立場というのは、少し憂鬱ですね。

 そうではなくても、わたくしは強い人が苦手ですのに。

 ですが、これも実家から逃れるため。お仕事をがんばりましょう。


 ◇


「ひどい臭いだったな」
「ああ、想像以上だった」
「お前はどこまで潜れた? 俺たちは第四階層まで潜ったぜ」
「俺は第五階層だ!」
「わたくし、ボスに挑戦したのですけど、負けてしまって……」
「上級生の方はさすがの強さでしたね」

 夕方になると、ちょこちょことクラスメイトたちが帰ってきた。みんな疲労を浮かべた表情の中にキラキラしたものが見える。初めてのダンジョン攻略の興奮しているのかな?

「よお、アベル! 随分早いな。お前はどこまで潜ったんだ?」

 教室の扉を開けて、意気揚々とやって来たエロワ。その後ろには、疲れてはいるが、どこか誇らしげなテオドールの姿も見えた。

「攻略したよ。エロワはどうだった?」
「マジかよ!? すっげーな、さすがアベルだ。俺たちもあと一歩のところまでいったんだが、ワイトが倒せなくってよぉ。でも、上級生に褒められちまったぜ!」

 それでエロワはご機嫌なのか。いつもはエロいことばかり考えているどうしようもない奴だが、やる時はやる男なのだ。

 そんなエロワは、チラチラとジゼルを見ていた。自分の席に座られているから、邪魔に思っているのかな?

 そのことに気が付いたジゼルがエロワの席から立ち上がる。

「ごめんなさいね。アベル、あたしは戻るわ」
「おう、今日はお疲れ様」
「ええ、お疲れ様」

 ジゼルが去ると、すぐにエロワが自分の席に座った。

「あの子、かわいいな。平民の子だっけ?」
「ああ、ジゼルって言うんだ」
「ジゼルちゃんか。俺もかわいい子がパートナーならよかったぜ」

 そんなことを言ったエロワは、にへらと気持ち悪い笑みを浮かべた。

「でへへ。まだ椅子が温かい。これがジゼルちゃんの温もりか……。やべ、勃ってきた……」
「うわー……」

 エロワの気持ち悪い言葉に、思わず鳥肌が立ってしまった。こいつヤバ過ぎだろ。なんで逮捕されないんだ? もうこいつの隣の席は嫌なんだが……。早く席替えしてくれないかなぁ。
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