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再び
しおりを挟むツー……ツー……
凄い屈辱的な誤解された上に、電話を一方的に切られた。
確かに唐突な電話だったかもしれないけれど。
……な、なによ。
秘密を守ってるんだから、ちょっとくらい甘い汁を吸わせてくれてもいいじゃない。
今日の私は諦めが悪い。
会社を出ながら電話していたであろう、月山さんの行き先をちゃんと耳が捉えていた。
都営バスのアナウンスだ。
『秋葉原駅前行きです、出発します』
と。
ここから直ぐだよ。
月山さんの後を付けたところで、ヨシに会えるわけがないのに。
何故か、今日はへんな期待が胸を渦巻いていた。
それに、
″あちらの事情が変わったんだ″
ヨシのお母さんとの間に何らかの交流が生まれているのは間違いなくて、そちらの足取りだけでも掴めたら……。
そのうちお母さんにヨシの子供の頃の話とか聞けちゃうのってあり得るかなって。
ほら、よくあるじゃない。アーティストの実家が小売店やってるって。
あんな風に、ほっこりな出来事があるかもしれないじゃない。
なんて、妄想してたら、ほら、見つけた。
39歳にしてはスタイル抜群の完璧な後ろ姿。
月山さん、身長178くらいかな?
バス停から人混みに混じって、どこかへ向かっている。
月山さんにしてはお早いお帰りだよね?
サラリーマンや学生の波から少しはずれて、その目立つ後ろ姿は、ビルとビルの間に消えた。
追っちゃう?
尾行しているうちに何だか探偵になった気分。
あ、止まった。
颯爽と歩いていた月山さんの足がピタリと止まったのは、
『……富士医療センター?』
オフィス街の角にある大きな病院の前だった。
月山さんは腕時計を見て、それから意を決したように病院にツカツカと入って行った。
なに? あの人、病気なの?
どこが悪いの?
そのままUターンして帰ろうかと思ってたけれど、何となく気になってそのまま後を追う。
すると、月山さんは受付は通らずに、入院病棟の方へと歩き出した。
『なんだ……誰かのお見舞いか』
そこまで分かると、もう後を追う気にはなれなかった。
人の不幸な事は、あまり知らない方がいい。
そう思って、今度こそ引き返そうと、振り返ったその時……。
これまた長身で細身の男が、ベレー帽と眼鏡をかけて病院へ入ってきた。
グレーのジャケットがとてもお洒落な人。
後ろに束ねていたので、一瞬、ロン毛だと分からなかったけど、横をスッ……と通りすぎた時、私の体に電流が走ったみたいになった。
――――今の、ヨシ……だ。
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