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散る
しおりを挟むやっぱり、親子。
この前の月山さんのように、ヨシが私の手首を思い切り掴む。
まさか、父親のように、″処女の手″とかは言わないでしょうけど。
「お前、俺を嗅ぎ回って何したいんだ?」
冷たい――
手首から伝わるヨシの苛立ちが、確実に私から体温を奪っていた。
「……わ、私はずっと貴方のファンなんです、許されるなら、嗅ぎ回りたいです、後もつけ回したいです」
熱烈なファンだということを伝える的確な言葉が思い浮かばない。
「あー……。そういやこの間、ライヴとか何とか言ってたな、あんた」
「は、はい!九州にも行きます」
私は月山さんの犬なんかじゃない。
出来たら、貴方に可愛がられる犬になりたいです。
「ふぅん……」
数秒ほど、私を見つめたあと、ヨシが口を開いた。
「九州……日帰りじゃ無理だろ? 仕事休んで?」
「は、はい!」
憧れのヨシが、私の仕事まで気遣ってくれていると思うと嬉しい。
「 で、もうチケ届いてんの?」
「ええ、見ますか?」
「ーあぁ…」
ところが、私が見せたチケットを手にとるやいなや、
「……え」
目の前で、ビリビリ!と、あっという間にそれを破いてしまった。
――″ 九州に初上陸″
ツアーの延長が発表されたとき、Webのページに、そう大きく書かれて、
『ならば私もっ』
と、福岡行きの飛行機を直ぐに予約したのは、
ついこの前……。
【Virtue】のメンバーと、……ヨシと、日本全国回れたら凄い幸せだと、そう夢見させてくれたライヴチケットを、
「アイツの犬なんかに九州まで追ってきて欲しくねーよ」
ヨシが無惨に破ってしまった。
ヒラヒラと散っていく、私の理想――――
「アイツに言っとけ。俺の九州ツアーの最中に、母さんに馴れ馴れしく近づいたらぶっ殺すって」
消えていく、妄想の恋―――
″ 美しい容姿の者が中身もキレイだとは限らない ″
″ 性格に問題あるみたいだよ″
月山さんが言っていたのは、ヨシの、こういうところ?
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