24 / 172
一歩引いて
しおりを挟む
……きっと、ヨシは許せないんだ。
自分と母親を今まで放ってきた(と思っている)月山さんが、病院へお見舞いに来たりすることを……。
だから、同職場の私にも、″敵意″を剥き出しにして拒絶反応を示している……。
ヨシが病院の外へ出た後もしばらく呆然。
病院の床に散らばったチケットを見て、
『終わった』
と思った。
大好きなアーティストに、こんなに嫌われるファンなんて、きっと他にいない。
「はぁ?! やっぱり九州に行けなくなったぁ?!」
チケットが無いのだから、ライヴに行きたくても行けない。寧々に電話で再び現状報告。
「……うん、ちょっとミスッて破いちゃって」
「そんなアホいるの?! 大体、晶が仕事続けるから行けるようになったって言うから、彼氏との記念日そっちのけで色々計画してたのにさっ!」
「ごめん……」
ヨシの事は誰にも話せないので、こうやって謝るしかない。
「一人で九州まで行くの心細いよー!」
「マジごめん」
たとえ、チケットが無事だったとしても、あんなヨシを知ってしまった今となっては、もうライヴに行くことは、二度とないような気がしていた。
――――
【基本的な企画書の作り方】
【魅せる企画書とは】
【クライアントを頷かせる企画書】
そんな本を購入し、家ではもっぱらパソコンとにらめっこ。
作る事は難しくない。問題は企画書通りの宣伝販促活動が出来るかなのよね。
これは、やはり営業マンが作るべきモノじやまない?
大体なんで月山さんは私なんかにこんな指示をしてきたの?
イジメの一種?
……あの人もわかんないな。
「うーー……ん」
時間だけが経過。
真っ白なままのワード画面。
気分転換にテレビをつけると、
「今週のMスタジオには、人気上昇中の【Virtue】が登場! 生の音楽番組、地上波初出演!」
Webで話題になっていた、Virtueが出る音楽番組が始まっていた。
そうだ。録画予約もしてなかった。
……こんなに、急に気持ちって醒めるものなの?
淋しい気持ちでテレビを見守る。
彼らは、新人ぽく一番バッターだった。
通常は新人アイドル達が歌いだす始めの枠に、V系バンド【Virtue】が組み込まれていた。
熱は醒めつつも、彼らが、番組のオオトリを務める日が来ることを願わずにはいられない。
「では、今週オリコン初登場しました、Virtueの ″ 残像 ″ です!」
ヨシがライヴと同じように、コートを翻してマイクを持つと、スタジオの観客から黄色い悲鳴が聞こえてきた。
多くのVirtueファンがスタジオにいるみたい。
ライヴさながらになるように観客を入れているのかな?
けれど、ここからは、ライヴとは違って見えた。
ライヴでは、彼ら用のステージのセットやライティングが完璧に備わっているけれど、テレビでは限界がある。
大好きなバンドだけど、客観的に観ることが出来るようになった私は、ライヴだからこそ盛り上がった演奏や歌、彼らの世界観が、一般的なスタジオでは、まだまだ伝わらないなって感じとっていた。
メンバーの緊張もあったのか、存分にVirtueの魅力が伝わる三分間ではないことは確かだった。
ステージから雛壇の方へ異動するヨシたち。
その顔は、何となく不満がありそう……。
……こんな、メンバーは観たくなかったかも。
自分と母親を今まで放ってきた(と思っている)月山さんが、病院へお見舞いに来たりすることを……。
だから、同職場の私にも、″敵意″を剥き出しにして拒絶反応を示している……。
ヨシが病院の外へ出た後もしばらく呆然。
病院の床に散らばったチケットを見て、
『終わった』
と思った。
大好きなアーティストに、こんなに嫌われるファンなんて、きっと他にいない。
「はぁ?! やっぱり九州に行けなくなったぁ?!」
チケットが無いのだから、ライヴに行きたくても行けない。寧々に電話で再び現状報告。
「……うん、ちょっとミスッて破いちゃって」
「そんなアホいるの?! 大体、晶が仕事続けるから行けるようになったって言うから、彼氏との記念日そっちのけで色々計画してたのにさっ!」
「ごめん……」
ヨシの事は誰にも話せないので、こうやって謝るしかない。
「一人で九州まで行くの心細いよー!」
「マジごめん」
たとえ、チケットが無事だったとしても、あんなヨシを知ってしまった今となっては、もうライヴに行くことは、二度とないような気がしていた。
――――
【基本的な企画書の作り方】
【魅せる企画書とは】
【クライアントを頷かせる企画書】
そんな本を購入し、家ではもっぱらパソコンとにらめっこ。
作る事は難しくない。問題は企画書通りの宣伝販促活動が出来るかなのよね。
これは、やはり営業マンが作るべきモノじやまない?
大体なんで月山さんは私なんかにこんな指示をしてきたの?
イジメの一種?
……あの人もわかんないな。
「うーー……ん」
時間だけが経過。
真っ白なままのワード画面。
気分転換にテレビをつけると、
「今週のMスタジオには、人気上昇中の【Virtue】が登場! 生の音楽番組、地上波初出演!」
Webで話題になっていた、Virtueが出る音楽番組が始まっていた。
そうだ。録画予約もしてなかった。
……こんなに、急に気持ちって醒めるものなの?
淋しい気持ちでテレビを見守る。
彼らは、新人ぽく一番バッターだった。
通常は新人アイドル達が歌いだす始めの枠に、V系バンド【Virtue】が組み込まれていた。
熱は醒めつつも、彼らが、番組のオオトリを務める日が来ることを願わずにはいられない。
「では、今週オリコン初登場しました、Virtueの ″ 残像 ″ です!」
ヨシがライヴと同じように、コートを翻してマイクを持つと、スタジオの観客から黄色い悲鳴が聞こえてきた。
多くのVirtueファンがスタジオにいるみたい。
ライヴさながらになるように観客を入れているのかな?
けれど、ここからは、ライヴとは違って見えた。
ライヴでは、彼ら用のステージのセットやライティングが完璧に備わっているけれど、テレビでは限界がある。
大好きなバンドだけど、客観的に観ることが出来るようになった私は、ライヴだからこそ盛り上がった演奏や歌、彼らの世界観が、一般的なスタジオでは、まだまだ伝わらないなって感じとっていた。
メンバーの緊張もあったのか、存分にVirtueの魅力が伝わる三分間ではないことは確かだった。
ステージから雛壇の方へ異動するヨシたち。
その顔は、何となく不満がありそう……。
……こんな、メンバーは観たくなかったかも。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私の身体を揺らす彼を、下から見ていた。
まさかあの彼と、こんな関係になるなんて思いもしない。
今日は同期飲み会だった。
後輩のミスで行けたのは本当に最後。
飲み足りないという私に彼は付き合ってくれた。
彼とは入社当時、部署は違ったが同じ仕事に携わっていた。
きっとあの頃のわたしは、彼が好きだったんだと思う。
けれど仕事で負けたくないなんて私のちっぽけなプライドのせいで、その一線は越えられなかった。
でも、あれから変わった私なら……。
******
2021/05/29 公開
******
表紙 いもこは妹pixivID:11163077
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
こじらせ女子の恋愛事情
あさの紅茶
恋愛
過去の恋愛の失敗を未だに引きずるこじらせアラサー女子の私、仁科真知(26)
そんな私のことをずっと好きだったと言う同期の宗田優くん(26)
いやいや、宗田くんには私なんかより、若くて可愛い可憐ちゃん(女子力高め)の方がお似合いだよ。
なんて自らまたこじらせる残念な私。
「俺はずっと好きだけど?」
「仁科の返事を待ってるんだよね」
宗田くんのまっすぐな瞳に耐えきれなくて逃げ出してしまった。
これ以上こじらせたくないから、神様どうか私に勇気をください。
*******************
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる