美獣と眠る

光月海愛(こうつきみあ)

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「……なんでしょう?」

 最近、お互いに悪態つくこともないし何となく意識している月山さんと二人きり。

 応接室なんて殆ど使うことないから、余計に緊張してしまっていた。

 月山さんが、上衣の内ポケットから何やら封筒を取り出した。

 なんだろう?

 ほんの少しだけ、映画のチケット渡されて、デートのお誘いを受けるのか? と期待していた。


「これ、ヨシノリから俺を媒介に、お前に渡してくれって送られてきた」


「へ」

 予想外の名前が出て、反応する私の声もおかしくなった。

  ヨシノリ、え?  ヨシ?


「前に、後藤のチケットを破ってしまったお詫びだと。開けてみたら?」


「……お詫び?」

 今更なんなの?

 すっかり仕事モードで、あんなに熱を上げていた【Virtue】のヨシのことは忘れていた。

 それに、チケットを本人に破られ、嫌われたと思っていた私にとって、その詫びと名の付いた封筒は、正直、開けるのが怖かった。


「なんだ?  開けないのか? そのうすっべらいの、爆弾ではないと思うぞ?」

「あ、はい」

 月山さんに促され、恐る恐る開けてビックリ。


「え、え、えぇえ?!」

「なんだ? どうした?」

 月山さんが私の反応を見て、自ら近寄ってくる。

「こ、こ……こここ、」

「なんだ? ニワトリか?」

「ち、違います! 限定ライヴの幻のチケットですっ!」

「大袈裟な奴だな。ライヴなんてしょっちゅうやってるバンドじゃないか」

「普通のライヴじゃないんですよっ!」

 その限定ライヴのチケットを見て、一気にバンキャの血が甦る。

【Virtue】の限定ライヴの招待券。

 ツアーライヴの時に販売されるグッズのおまけに付いているトレカ(=トレーディングカード)の当たりクジみたいなもので、その当たりの中にも、メンバーのサイン付きカードと、限定ライヴへの招待券と、二種類が混じっているのだ。

 後者の方は、非常に稀。

 全国ツアーライヴの参加者の中から、強運を持った100人程がその限定ライヴへ招待される。

 ちなみにそのチケットは譲渡は許されていない。

「ほ、本当に、私なんかが行ってもいいんでしょうか?!」

「……いいんじゃね?」

 すっかりバンギャの血が甦った私は、月山さんとの二人きりの空間を、【Virtue】ラブ!の雰囲気に変えて、

「この日は絶対残業しませんから!」

「それはお前の力量次第だろ」

 美しき獣が仕掛けた罠に気付くこともなく、ただ、浮かれまくっていた。























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