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つまづき
しおりを挟む「俺、いい年して気持ち悪い事言ってるな……」
月山さんが、自嘲気味の笑みを見せる。
「いえ……私がハッキリとしときたかったんで」
「……ヨシノリと付き合うのか?」
「……わかりません」
写真のことは言えない。
言ったら、二人の仲はますます悪くなるかもしれないから。
「ヨシが何を考えてるのか分からなくて……」
「……だろぉな……」
「……はい……」
……シン……。
閑静な住宅街。
二人の話し声が途切れると、暗闇に飲み込まれてしまいそうでコワイ。
気まずい空気は苦手。それを察したワケではないだろうけれどわ月山さんが先に沈黙を破ってくれた。
「……もし、アイツが乱暴な事をしてたらゴメン」
「……」
その ″ もし ″、です。……貴方の息子。めちゃくちゃです。
「あれ? 後藤、頭の傷どうした?」
「え」
車の中で暴れたせいで、 ガーゼはいつの間にか剥がれてなくなっていた。
「ライヴで押されて倒れちゃって……」
「またか。お前、スタンディング向いてないんじゃないの?」
「そうかもです……」
恐る恐る傷に触れると、やっぱりちょっと痛い。
「かわいそーに」
月山さんが、私の頭部の傷を撫でるように優しく触れてきた。
こういうところは、親子そっくり。
……そっくりなのに。
ヨシは、あんなに父親を憎んでる。
「月山さんの方が可哀想ですよ」
「可哀想?……俺がか?」
「はい……」
「なんで? 俺、お前みたいにオッチョコチョイじゃないし、こんなケガとか殆どしたことないぞ?」
「月山さんの人生そのものがオッチョコチョイじゃないですか?」
「おい」
言った矢先、言い過ぎたと思ったら、
「……かもな。面白い事言うな、お前」
また、ギュッ……と抱き締められた。
「……月山……さん」
ヨシとは違ういい匂い……ーーー。
ズルいな。
私のこと好きになったらダメみたいに言ったくせに。
ーーー私の心は、こうやって捕まえておくんだ。
「過去のせいで、好きになった女と付き合えない……俺は確かにつまづいているな」
おまけに、ちゃんと線を引いている。
お互いに、まだ、踏み込み過ぎないように。
「つまづきなんて……ヨシがちゃんと生まれたじゃないですか、奥さん、ヨシのことちゃんと育ててくれたじゃないですか」
「ちゃんと?……かなりヒン曲がってるみたいだけどな」
「それは否めないけど……」
「それに、俺はヨシノリが生まれてきて良かったなんて、思ったことはないんだ」
「え……」
「義務や責任感はそれなりに湧いたけど、成長してから姿を見たせいか、俺からのり子を奪った男としてか見れない時があるんだよ」
「……それ……」
思わず、回そうとしていた腕を引っ込める。
「なのに、またアイツは後藤にまで手を出そうとしてるんだ」
月山さんも、ちょっと、歪んでる……?
――わからなくなった。
″ 全部奪ってやる ″
ヨシが私に近付いてきたのは、月山さんに大事にされてる女だからだと言うし、
「後藤が誰かに恋をして変わっていくの、見たいようで見たくない」
月山さんからは、私とは恋は出来ないけれど、彼女との障害になったヨシと私がそうなるのは不本意だと、そう言われて、
私は誰と恋を、したらいいのかーーー
もしかしたら、しちゃいけないのかもしれない。
「後藤から、……アイツの匂いがする……」
こんな私こそ、つまづいている。
―――月山さんから、再び抱擁された夜から数日後。
手掛けていたKanedo化粧品のメイクアップ部門のイメージキャラクターに、【Virtue】のヨシが決まる。
男性のタレントやアーティストが初めて起用されるとあって、とても話題になった。
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