美獣と眠る

光月海愛(こうつきみあ)

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意識

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 笑っていた本山さんたちの動きが一瞬止まる。

「……え」

 私も驚いて、加納さんの方を向くと、


「俺、バージン大好きなんだ」

 真剣な顔で、堂々とゲスな発言をしていた。

  ……引く。

 本山さんたちも、それ以上会話に入ることなく自分の仕事の続きを始める。


「なので早速、今夜一緒に飯でも食わない? 会社周辺の食い処、俺知らなくてさぁ」

 なので、ってなに。
 めっさ身体目的だと分かって誘いに乗るか。
 そんなの、あの男だけで充分。


「同じく新入りの戸崎さんと行ったらいいじゃないですか」

 面倒くさくて、お色気たっぷりの大人の彼女に押し付けようとしたのだけど、


 「あー。彼女は、ダメ。年上興味ねーし。それに、あれだ、月山所長に夢中だから」


「えっ」

 心中、穏やかで居られないことまで耳にする。


「彼女は面食いな上に、上昇志向だからね。自分を上げてくれる男に月山さんはもってこいなんだって」

「……もってこい……」


 チラリ、と月山さんの方を見ると、

「今度皆さんにCM制作のキャスティング研修したいと思ってるので予定教えてくださーい」

 ベッタリと彼に張り付くように話をする戸崎さんの姿が目に飛び込む。

 あ、あんなに胸を押し付けて話す必要ある?!
唖然としてそれを見ていた私に、


「な、いいじゃん。俺は誰よりも後藤さんと仲良くなりたいんだよ」

 加納さんはしつこくデートのお誘いをしてくる。
 もう、それどころじゃないんだよ。

「スミマセン。四時からまた打ち合わせなので帰社時間も未定で無理です」

 ヨシ抜きの打ち合わせがあるのは、本当だ。

「えー、マジぃ??  残念だねー 、せっかく二人だけの歓迎会しようと思ったのに!」

 自分で自分の歓迎会企画する?
 呆れて、もう返事をする気にもなれなかった。
 同じナルシストでも、まだヨシの方がまし。

 私の方を振り向かない月山さんの背中を見ていたら、何だかちょっぴり、ヨシに会いたくなった。

 私の方こそ、面倒臭くてダメな奴だ。


――――

  再びKanedo本社宣伝部にて、今回は撮影について細かく打ち合わせ。

 今まで発売されている【Virtue】のMVを参考にしながら、ヨシのソロプロジェクトのイメージを何となく決める。

「バンドがゴシックな感じだったから、ヨシにはもっと白っぽい、女性っぽい感じで装ってもらってCMも作ろうか」

  ヨシの事務所側が提案してきた。


「どうだろうな、売れ筋のアイメイクのCMは、今までダークなイメージが強かったからなぁあまりに変えすぎると消費者が戸惑うかも……男っていうだけで違和感あるのに」

 まだまだ、保守的なクライアント側と、意見が正反対。
 まだ、ぺーぺーで口出しは出来なかった私は、

『今までと違う感じにしてほしいってヨシ言ってたじゃん』

 と心の中で主張していた。

 なにせ、広告代理店側は、クライアントが売りたい商品を売れるための広告を作るのであって、起用タレントの心情は管轄外だから。

 おまけに、うちは、映像に詳しくないので、飯田くんも他の営業マンもウンウンと頷いてばかり。

 きっと、近いうち、担当に加納さんが追加される予感は半端なかった。
 
 方向性がなかなか決まらない中、

「あ、もしもし? ヨシ? レコーディング終った? 途中でもいいからちょっと来てくれない?」

 ヨシの事務所の人が、とうとうヨシを呼び出してしまった。

 なぜか、あの傲慢なヨシに少しだけ会いたいと思っていた私は、その電話のあとから何となくソワソワ……。

「後藤さん、トイレ行きたいんじゃないの?」

 飯田くんが心配してくれている。

「そんなんじゃないよ……」

 ソワソワを隠すように、皆さんの紙コップにお茶を注ぎ出す。

「あ。おねぇさん、僕にも頂戴」

 少し離れた下座席の、クライアント宣伝担当の方が自らコップを差し出してきたので、

「は、はい…」

 ペットボトルを持ってイソイソとそちらへ移動していると、ドアを静かに開けて、ヨシが部屋に現れた。

「遅くなりました……」


 ドキッ!
 としてしまうあたり、この前よりも、ヨシを男として意識してる証拠だ。


「あー、ごめんね。突然呼び出して、なかなか決まらなくてね、ソロプロジェクトのこともあるので急遽……わっ!、あんた、お茶っ!お茶、こぼしてる!」

 一瞬、ヨシに目を奪われて、注ぐお茶を溢れさせてしまった。

「す、スミマセン!!」

 慌てて側にあったティッシュでそれを拭く私を、ヨシが冷ややかな目で見ていた。

「いくらヨシがカッコいいからって、おねぇさん見とれすぎ!」

「申し訳ありません、うちの後藤はデビュー当時からVirtueのファンでして」

「知ってる知ってる。企画書見て気づいてたよ!」

 ワハハ……!
と、何となく和む空気の中、ヨシは私の隣に着席。

 小声で、

「ばかか…」

  と呟かれる。

 くそー、と、思ったけれど……入室した時から思っていたけれど、
……ヨシ、なんか、やつれてる?















 







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