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揺れる
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――――Kanedo化粧品。
老舗で高価なイメージや、危険成分の含有量の問題で一時期消費量が低迷していたけれど……。
Kシリーズで女性が憧れるカリスマ性のあるアーティストや女優をイメージキャラクターとしてCM起用し、悪いイメージを払拭することができた。
ライヴの時しかメイクしない私も、そのダークなCMに憧れて、アイラインやマスカラを購入したことがある1人だ。
「イメージソングもね、Virtueじゃなくて、ヨシのソロの新曲を使おうかと思ってるんだよ」
「……はぁ……」
「今までは小悪魔的な感じに演じて貰ってたんだけど、ヨシは男だし、バンドのイメージもあるからCMに関してもどんどん意見を述べて欲しいんだよね。企画書はベースだから、かならずしも生かさなくてもいい」
「……はぁ…」
生かさないなら、企画した私、ここに居る必要ないじゃない?
複雑な心境で話を聞いていた私の横で、ヨシは、
「…全部お任せます」
何ともやる気のない返事ばかり。
ワガママで傲慢な一面はどこへ?
一体、どうしちゃったんだろ?
わざわざ呼んだのに、全て委ねるというヨシの言葉に、クライアントも事務所の人も驚いている。
「あれだけ自分がどう見られるか拘ってきたバンドのセンターなのに?」
特に、いつも一緒に仕事してる事務所の女性はヨシのおでこに手を当てて熱がないか確認したりしていた。
それをヨシが、鬱陶しそうに払いのけている。
「あー、えーと、じゃ企画書を作った大電広告代理店の後藤さん、ファンだとおっしゃるし、広告プランに沿ったCMのイメージを発言してもらっていいですか?」
クライアントもとりあえず私に振ってくる。
「え…」
そんな重要な発言していいの?
テンパって立ち上がる私を、ヨシが黙って見ていた。
こんな時こそ、
″ こんなただのバンギャに大事なこと発言させるんじゃねぇ ″
とか、悪態ついて欲しいのに。
……ただ、見上げて、私を見つめている。
メイクをしてなくても、吸い込まれそうな大きな瞳で、私の言葉を待っている。
その目。
ステージに立っている時のより、好きかも。
老舗で高価なイメージや、危険成分の含有量の問題で一時期消費量が低迷していたけれど……。
Kシリーズで女性が憧れるカリスマ性のあるアーティストや女優をイメージキャラクターとしてCM起用し、悪いイメージを払拭することができた。
ライヴの時しかメイクしない私も、そのダークなCMに憧れて、アイラインやマスカラを購入したことがある1人だ。
「イメージソングもね、Virtueじゃなくて、ヨシのソロの新曲を使おうかと思ってるんだよ」
「……はぁ……」
「今までは小悪魔的な感じに演じて貰ってたんだけど、ヨシは男だし、バンドのイメージもあるからCMに関してもどんどん意見を述べて欲しいんだよね。企画書はベースだから、かならずしも生かさなくてもいい」
「……はぁ…」
生かさないなら、企画した私、ここに居る必要ないじゃない?
複雑な心境で話を聞いていた私の横で、ヨシは、
「…全部お任せます」
何ともやる気のない返事ばかり。
ワガママで傲慢な一面はどこへ?
一体、どうしちゃったんだろ?
わざわざ呼んだのに、全て委ねるというヨシの言葉に、クライアントも事務所の人も驚いている。
「あれだけ自分がどう見られるか拘ってきたバンドのセンターなのに?」
特に、いつも一緒に仕事してる事務所の女性はヨシのおでこに手を当てて熱がないか確認したりしていた。
それをヨシが、鬱陶しそうに払いのけている。
「あー、えーと、じゃ企画書を作った大電広告代理店の後藤さん、ファンだとおっしゃるし、広告プランに沿ったCMのイメージを発言してもらっていいですか?」
クライアントもとりあえず私に振ってくる。
「え…」
そんな重要な発言していいの?
テンパって立ち上がる私を、ヨシが黙って見ていた。
こんな時こそ、
″ こんなただのバンギャに大事なこと発言させるんじゃねぇ ″
とか、悪態ついて欲しいのに。
……ただ、見上げて、私を見つめている。
メイクをしてなくても、吸い込まれそうな大きな瞳で、私の言葉を待っている。
その目。
ステージに立っている時のより、好きかも。
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