美獣と眠る

光月海愛(こうつきみあ)

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 今まで観た、どのVirtueのライヴよりも、ヨシは、圧倒的な歌唱力と迫力を放った。

 フェスで他のバンドのファンだった観客が、すっかりVirtueの虜になったのは間違いなかった。


 仕事が更に軌道に乗ってきた矢先に、彼の一番大切な人が亡くなった。


「明日六時半から通夜、告別式が明後日の…………」

 会社に戻ると、月山さんから、社を代表して参列するように私へ指示が出た。
 月山さんは、どうやら死の間際には会わせて貰えなかったようだ。
 祖父母を始め、親戚に拒絶されたとのこと。

「……月山さんは、行かなくていいんですか?」

 これが、本当に最期のお別れだ。

月山さんは、首を横に振って、斎場の地図を私と飯田くんに渡した。

「俺が行くと、ご両親の悲しみが増すから」

  月山さんの目は赤かった。
 複雑な思いでその地図を見る。

 私なんかが、お別れに行っていいのだろうか?
 ただのヨシの仕事関係の人間に、お別れの挨拶をされてどう思うだろう?

 そんな疑問を抱いて直ぐに、その心配は無用だと分かった。

 故人は、もう、そんな感情すら抱かないのだから。


   通夜には、ヨシの仕事関係者が多く訪れていた。

「俺、こういう場、マジ苦手なんだよね」

「得意の人はいませんよ。経験でしょ……」

 加納さんが不謹慎な事を言う横で、私は弔問名簿に記入。
 続々と斎場内に人々が入っていき、それに紛れ込むように後に続いた。

 自然と目は、親族席のヨシの姿を探した。けれど、目立つはずのその姿はない。

 まさか、こんな日も仕事をこなしてるとか?

 そういえば、喪主の名前がヨシではなかった。若い彼の代わりに彼の祖父がつとめるの?

 加納さんに続いて御焼香を上げていると、斎場内の参列者の視線が入り口付近に集中していることが分かった。

「息子の美徳さん………」

「……大きくなられて」

 ヨシが少し遅れて入ってきたからだ。



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