美獣と眠る

光月海愛(こうつきみあ)

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危機

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  パソコンから目を離して事務所を見渡せば、そこにはニヤニヤしている加納さんしかない。

「え? そうなんですか? あ、もう10時なんですね」

「小さい仕事に随分と時間かかってるね」

「……はぁ」

 ちょっとムッとしたけれど、反論できない。

 最近、本職以外の仕事が増えてしまった私は、元々抱えていた案件の勘を思い出すのに、正直、手間取っていた。

 厳密なチェックをするべきところを、何度も見落としている。
 パソコンを見る素振りをしながら、私の側に寄ってきた加納は、マウスを握る私の手に自身の手を添えてきた。

また、悪寒が走る。

「月山さんが無能な新人にKanedoとか、大きな仕事任せるからだよねぇ? 彼は私欲に左右され過ぎて、採用の基準を見落としてる」

「私欲……?」

「Virtueのヨシのファンのあんたを取り込みたくて、そのヨシをCMに使うように企画を練るあたり、相当腹黒いと思うぜ?」

 後からやって来て、何も知らないくせに、月山さんのことを悪く言い始めた。

「……勝手な見解で風潮するのだけは止めてくださいね。月山さんの実績も知らないくせに」

 口から先に生まれたきたような男。全てが信用できない。

「あんたも未練がましいね、去っていった男に」

 加納の野太い声が神経を逆撫でする。

 未練がましい?

「何でそんなことまであなたに言われなきゃいけないんですか?」

 睨み付けて、加納さんの手を振りほどくと、

「そんなに怒るなよ、いくら図星だからって。月山さんにそそのかされて本気になったあげく、処女差し出す気マンマンだったのに受け入れて貰えなくて可哀想だと思ってるんだよ、俺は」

 半分当たっている早口言葉を聞かされた。
 屈辱的。

「もう帰ります。退いてください」

 いつの間にか、私の膝に置かれていた手も払いのけようとすると、

「だから、俺が代わりに処女貰ってやるって言ってるんだよ」

 腕を取られて、あっという間に椅子から床へ引きずり下ろされてしまった。

















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