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隙間
しおりを挟むえ……?
「それって……どういう意味ですか?」
「言葉のまんまだよ。後藤なら、アイツのこと理解してやってくれそうな気がするから」
「買いかぶりです」
この間までは、自分と恋人の間を引き裂いた、直接の原因のヨシに、私を取られたくないって、私がヨシとそうなるのはあんまり快く思えないって、そんな風に言ってたのに。
「俺は、人を見る目はあるつもりだぞ」
今度は、心の支えの一つを失った気むずかしい我が息子に、寄り添ってくれと……渾身せよと、そう言ってるの?
「……」
黙りこむ私を見て、少しだけ微笑んだ月山さんは、
「脱毛器……使ってるか?」
また、デリカシーの無いことを言う。
「……使ってません」
私の全部を見せる人なんて、いませんから。
「そっか。……じゃあ、俺、また本社に行かないと行けないから」
「……はい」
月山さん。
「不在中、色々 頼むな……」
あなたは、
「……は……い……」
もう、私のことを、好きになることはないんですね。
閉められたドアの向こうで、
「月山さん」
月山さんに話しかける戸崎さんの甘い声が聞こえた。
「本社に行かれるんです? なら私も便乗させてください」
「何か用があるの?」
「はい、研修のことで……」
月山さんに分かりやすくアプローチする戸崎さんより、ずっと、不謹慎なのは、私だ。
心のどこかでヨシのお母さんが亡くなったら、私のこと好きになってくれるかもしれないと思っていたから。
一方で、振り回されつつも、憧れていたヨシに触れられると、ドキドキしていたくせに。
″ あんたを支配する意味も無くなった……″
″ ヨシノリを頼んでいいか? ″
どちらも、いっぺんに消えちゃうから、さ迷っていた私は、どうしたらいいか分からないじゃない。
――――
「えーと、今までの映像広告というのは、TVの方で、ガン!と派手に宣伝して、とりあえず始めは商品は売れなくてもCMが話題になれば、ジワジワと後から数字が伸びていって、クライアントから文句言われることはなかったわけです」
所長代理がいない間。
加納さんが自身のゲームクリエイターとしての経験から得た、【これからの映像広告】という研修が、夜に応接室で行うようになった。
月山さんから依頼を受けたと言っていたけれど、それも本当かどうかは分からない。
「だけど、これからはそれじゃダメなんだよ!これからの時代はスマホ!ゲームの宣伝だってまずはスマホからなんだ!それで行き届かなかった世代にTVで伝えるという逆行が生まれて……」
オペレーターの女子と、手の空いた営業マンが饒舌な加納さんのパフォーマンスに引き込まれて有り難がっていた。
『声、デカイなぁ……』
しかし、私は、本来のDTPオペレーターの仕事の締め切りが迫っていたため、一人だけ事務所でそれをこなしていた。
「もうみんな、帰っちゃったよー、後藤さん」
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