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変化
しおりを挟む″ 解放 ″ というより、私を突き放すようにして、ヨシが、再び撮影現場に入っていく。
目は優しかったけれど、その瞳にやっぱり私は映っていなかった。
お母さんが亡くなってしまった今、月山さんに対する憎しみも薄れてしまったのかもしれない。
「次ワンカットいくよー」
白いスタジオに、白い衣装のヨシが天使のように現れる。
施された、印象的なアイメイク。
そのヨシの上から薔薇が落とし散りばめられていき、あっというまに赤い絨毯が出来上がっていた。
実際のCMには、ユニコーンがヨシのそばを駆け抜けていくらしい。
風をあびて、髪が流れる方向に、目線を長すヨシは本当にキレイだった。
あんな人と、私、沢山キスをしたんだ。
なんだか信じられない。
もう、感触も忘れそう。
……それにしても、あっという間の一月だったな。
身勝手極まりなく、ヨシに振り回された感は拭えない。
だけど、……憎めない。
だって、ますますVirtueのヨシのファンになってしまったんだから。
同時に、自分の心の、小さな穴が空いたような虚しさも否定できなかった。
ただのバンギャに戻った私が、本当の恋を知るのは、もう少し先なのかな。
――――
「月山さんが、こっちに出勤してきてる!」
ヨシの出生に関する報道が少し落ち着いた頃、月山さんが会社に来ていた。
加納さん以外は、ホッとしたように、自然と彼の回りに集まっていた。
「良かったー、ボスがいないと社内が中弛みしちゃって!」
「いてもダラッとしてただろ? それに、戻ってきたわけじゃないんだ」
「え、そーなんですか?!」
だけど、すぐにここで所長代理を勤めるわけにはいかないとのこと。
「ちゃんと引き継ぎ出来てなかったからな、皆に仕事振り分けるぞ」
月山さんが持ってきたKanedoの案件に、息子のヨシが関わってしまったことが原因らしい。
″ 息子をごり押しした親バカな広告代理店の男 ″
そういう噂が広まるのは、会社にとってな不利益なことだし、今後の信用問題にも関わるからだ。
「後藤……」
「は、はい」
「ちょっといいか?」
朝のミーティング後、月山さんに一人だけ応接室に呼ばれる。
「……なんでしょう?」
聞きながらも、多分、ヨシのことだろうと思った。
「ヨシノリにあれから会ったか?」
やっぱり。
「会いましたよ、撮影現場で」
不思議な親子。
こんなにそっくりで、普通の親子よりお互いが気になるくせに、″ 親子 ″の絆も、情もないという。
「……元気、だったか?」
「体は元気そうでしたよ」
「体は? 他は?」
「気になるようでしたら、ご自身で連絡取って会えばいいじゃないですか」
「俺が奴に嫌われてるの知ってるだろ?」
「でも、状況は変わってきてますよ」
「人の感情なんてそう簡単に変わるもんじゃない」
この先、二人の間に愛情が芽生えることはないんだろうか?
「なら、まず月山さんが変わらないとダメじゃないですか?」
「なに?」
″ アイツを、子供として可愛いと思ったことはない ″
一緒に生活してないのだから、それもわかる。
でも、スタンディングライヴの時や、私の部屋のヨシのポスターを見つめる時の月山さんの目には、確かに愛情があった。
本人が、認識してないだけじゃないのかなって思う。
「月山さんから歩み寄らないと、ヨシは心を開かないんじゃないんですか?」
幼少時代の記事が本当かどうかは分からないけれど、通夜で見たお祖父さんの態度は普通ではなかったもの。
ヨシは、少なからず普通の人より肉親の愛情に飢えていたはずだ。
「……後藤、さすがアイツのファンだな」
「……え、えぇ、まぁ」
ファンの域を越してしまったけどね。
月山さんは、応接室の時計にチラッと目をやると、先にソファーから立ち上がり、
「え?」
私に手を差し出してきた。
「ヨシノリを頼んでいいか?」
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