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愛しさと解放
しおりを挟む毎日毎日、朝とお昼のワイドショーで、【Virtueのヨシ】の名前が出てくるようになった。
なるべく観ないように心がけてはいても、その一方的に入ってくる情報は絶え間なかった。
おまけに、報道記者というのは何処にでも現れるもので、
「ヨシのお父様がこちらに勤務されているとお聞きしてますが、どんな方なんですか?」
本部からは、何も答えるな、と釘を刺されている私達にも直撃取材をしてくることがあった。
「ヨシさん、だいぶ落ち着かれましたか?」
不幸なイメージが着いてしまったヨシの元にも、喪があけてなかろうがお構いなしに彼らは当然のように訪れて、彼の顔をカメラに収めようとしていた。
「いたいた!現場入りしたヨシた!」
極秘としていた撮影現場にも、カラスのように現れるものだから、おかげで撮影が出来ないこともあった。
カットを2テイクしたところで、一旦休憩。
控え室に消えていくヨシの姿を見守っていると、
Ririririri
久しぶりにヨシから電話がかかってきた。
呼ばれて、出向いたヨシの控え室のドアをノックする。
「入れよ」
「失礼します………」
入室すると、自分がイメージし、クライアントと共に決めた白い衣装を着た彼の姿に、一瞬見とれた。
近くで見ると、また一段とキレイ…………。
目映い。
ファンタジー映画に出てくる王子みたいだ。
二人きりの空間、特別な空気が漂う。
「母さんの通夜、ありがとな」
ボンヤリ見とれる私に、ヨシがまともな事を言うから拍子抜けしてしまった。
前みたいな毒は感じられない。
「……電撃結婚はお母さんを安心させたかったからだったのね」
「まぁな。今となっては、そんなに心配されてたのかも、想われていたのかも分からないけどな」
また、切なくなることを言うから、
「…なんでそんな否定的なの?」
天使のようなヨシに、そっと、抱きついてしまった。
私がヨシの背中に腕を回すと、ピクリ…と彼の体が動いたのが分かった。
「……そう。俺は否定的な卑屈の塊なんだよ」
「そこまで言ってないよ」
クスリと笑う身長155㎝の私の頭を撫でて、
「前、こうやってアイツと抱き合ってたよな」
小さな罪悪感を植え付ける。
……そう、あの時も月山さんの心の穴に気付いて、抱き締めずにはいられなかった。
それを恋だと思っていた。
じゃ、ヨシを抱き締めている今は?
私、いったい……どちらをーーー
「もうあの写真をネタに、あんたを脅すことも出来なくなったことだし、お試し期間の解消してやるよ」
「……え」
笑っているのに、切ない瞳を潤ませている、美しき獣を、
「解放してやる、俺が支配する意味も、もう無くなった……」
――私は、好きになり始めていたんじゃないの?
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