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親子
しおりを挟む″トラブル″ という言葉に、強く反応した加納は、
「いくら自分の父親の勤める会社だからって、何でも知りたがるのは良くないっすよ? それとも何ですか? 父親の部下は自分の部下だとでも勘違いしてるんですか?」
「……は?」
急に俺を責め始めた。
「 ただ、アイツのケガの具合聞いただけだ。 女が顔を打つなんて、殴られたりしない限りねぇだろ?」
俺と加納が大きな声で言い合い始めたものだから、周りのスタッフがこちらを心配そうに見ていた。
「″ アイツ ″……?」
それでも加納は食ってかかる。
「へぇ!後藤さんのことをそう呼べるほど仲が良かったんですか? いやぁ、初耳ですねー、父親と同様に女をたぶらかすのがお好きと見える。バージン、最高っすよね?」
「……なんだと?」
もうすぐ撮影が始まるというのに、俺はシカトすることができなかった。
「なんで後藤がそうだとわかる?」
「気になりますか? あなたが後藤とどのくらい仲良かったか知りませんけど、やっぱり処女だけに後藤のおっぱいは固かったですよ」
俺もゲスだが、こいつの場合はそれを上回る。
「……お前、やっぱり……」
「誤解しないでくださいよ! 月山さんに受け入れて貰えなかった後藤さんの身体を慰めてあげたんですよ? 彼女、処女の癖にイヤイヤ言いながらも喜んでたし」
加納の目は黄色く濁っていた。
俺は女を支配するのは好きだったけれど、その女を殴ったりしたことはなかった。
「……お前、一回 死ね」
人を殴ったのは、高校のケンカ以来だった。
スタッフが悲鳴をあげていた。
加納が大袈裟によろめいて、パイプ椅子が大きな音を立てて倒れたからだ。
「どうしたんですか?!」
「ヨシっ?! 暴力はダメだって!」
Kanedoの宣伝部のヤツと、事務所の人間が俺と加納の間に入る。
「いってぇー!いってぇー!」
……アホらし。
「もうこっちは準備できてますので、すぐ入ります……」
俺の拳が汚れた。
足早にスタジオに入ろうとする俺に、
「……は、やっぱり親子だなぁ!? こうやって簡単に人に手あげるところとかさー!!」
まだ罵倒しようとする加納をチラリと振り返る。
小賢しい顔。
「二度と俺の前にそのツラ見せるな」
後ろでまだ何か叫んでいたけれど、知らね。
「ヨシ、あの人凄いこと叫んでたわよ」
「なんて?」
スタッフが耳打ちして来た。
「″ 月山と一緒に堕ちろ″ って」
「地獄に、か?」
言うことガキか。
その時は、加納をただの頭の悪いクリエイターぐらいにしか捉えてなくて……。
それよりも、アイツのことが気になっていた。
「2テイクいきまーす!」
自分を追うカメラワークに目線を送りながら、
『後藤晶のケガは酷いのか?』
とっくに、解放したはずのアイツの事を思っていた。
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