美獣と眠る

光月海愛(こうつきみあ)

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 「お前、俺の悪口で電話をシメるパターンやめろ」

 苦笑いしながら、給湯室にひょっこり顔を見せた月山さんは、……やっぱりヨシに似ている。

 真正面から近くで見ると、性懲りもなくドキドキするのだから、私は生粋の美形好き。


「わ、悪口じゃありませんよ。これでも月山さんの事心配してるんですよ」


「同情なら要らねーよ、大人のケジメでこういう流れもあるっていうだけ」

 月山さんは、淡々と言って、いつものように自身の湯飲みを洗い始めた。


「……ですよね、月山さんがメソメソしてるとこなんて見たことないですもん。それ、一緒に漂白しましょうか?」

 洗った湯飲みを、布巾で拭くところまでやる月山さんに手を差しのべるものの、


「いいよ、もう、ここに置いとく必要もないから、今日持って帰るから」

 月山さんは、ほんのすこし寂しげな顔をしてそれを断ってきた。


「使いふるしたやつだから捨ててもいいしな」
 
 
  捨てる……。

 何だか、聞きたくない言葉だ。

「……もう、ここには戻ってはこないんですか?」

「あぁ。クライアントに完全な引き継ぎの挨拶したらもう今日は……」

「今日だけじゃなく、月山さんはもう、私達の所へは戻ってこないんですか?」

「……え?」

 確かにKanedoのkシリーズの仕事は、結果は思うように成らなかったけれど……。
 今まで手を出さなかった動画広告の出稿をスマートに勝ち取るまで、私や他の社員を成長させてくれた、

「月山さんがまた戻ってきてくれるって、そう思いたいので、湯のみ、置いて行ってください」


 あなたは、とても、必要な人。


「後藤……」

「なので、漂白しておきます。貸してください」

 これでお別れなんて、悲しい。
 部下としてなのか、それとも、女としてなのか。もう、わからなくなってきたけれど、

「キレイにしときますね」

 滲み出る涙を見せないように、月山さんの手から、それを受け取った。

 
 「……あれから、どうなった?」

 湯飲みを洗い桶に沈めた私の手を、月山さんがそっと触れてきた。

「……あれから?」

 仕事のこと?
 加納のこと?

「ヨシノリだよ」

 ドキっとして見上げた私の目は、泳いでいただろうか?

「お前に任せるとか言って、心の何処かで後悔してる自分がいた」

 ちゃんと、月山さんの目を見れていただろうか?


「今の状況次第では、撤回したいくらいだ」

 冷たい水を触っていた私の手を掴む月山さんの手は、

「何で、……今頃そんなこと言うんですか?」

 ヨシの手より大きくて、温かく感じた。

















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