美獣と眠る

光月海愛(こうつきみあ)

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LOVEソング

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  防音室には、ギターやベースもドラムまであった。

「俺のはギターだけ」

 ヨシが、立て掛けてあった一本を掴んで、ソファーに座った私の前で、出来たばかりの曲を弾き始める。

 ♪~♪~♪~

 なんだろう?
 この照れくささと、高揚感。

 ヨシがマイク以外のものを持っているのも初めて見るし、弾き語りのように歌い出す姿は超貴重で、デビュー当時からファンだった身としては涙が出そう。

 何よりも、Virtueでは聴けなかった、初めてのLOVEソングだ。
 
 好きとか、愛とか、恋とか、そんな陳腐な歌詞は乗っていないけれど、他人を愛しく想う、優しい歌詞に、亡くなったお母さんをも想像させたし、私やファンを勘違いさせそうな甘い妄想を抱かせる。

今まで観たどんなライヴよりも、涙腺を刺激されたのは、間違いなかった。

 おまけに、素人ながらに感じた、確かな予感。

 この曲、売れるーーー

 私。やっぱり、この人の声が好きだーーー

 
 「……は、なんか一人の前で歌うってめっちゃ恥ずかしいな」

 歌い終わったヨシは、ギターを置いて照れた笑顔を見せていた。
 そのヨシがまた、カッコ良くて、可愛くて……。

「……なん?  お前……泣いてんの?」

 だから、余計に自分が最悪な女に思えて……。

「良い曲過ぎて……」

「だからってオーバーだろ」

 ヨシが、テーブルの上にあったティッシュを何枚か取って、私に渡してくれた。

「ファン待望のLOVEソングだもん……」

 今までのVirtueの音楽は大好き。
 ダークで耽美で、カッコ良くて、バンドのカラーにピッタリだった。

 だけど、それ故に、どこかマイナーで、国民的なバンドには成れない、そんな残念な兆しもあって、

「この曲、シングルにしたら、絶対みんな、Virtueの事、好きになると思う……」

 ヨシの今の心が映し出されたメロディは、暗転しかけたバンドの運命も変えてくれると……。
 そう思えて、嬉しくて、子供みたいに涙が出てきた。


「……皆から好かれるバンドは目指してないけどな」

 さらに照れたヨシは、乾き始めた私の目元に手をあてて、

「この曲……。俺は、お前にだけ認めてもらえれば良かったんだ」

 自然に私の瞼を閉じさせた。

 この瞬間もドキドキする……。


「今日は俺からする」


 こうやって、甘い夢を見させるヨシを、私は、男として好きなんだろうか?

 ……それとも……。

 このまま、特別なファンのままでいたい、
 そんな気持ちも有ることに気付いていながら、私の唇は、今日もヨシのキスを受け入れた。

 優しく、重くのしかかるヨシの身体をソファーの柔らかさも借りて、今日こそ、全部受け止める……つもりだったのに。

「お前、なんつー顔してんだよ?」

「……え」

 私を見下ろすヨシの顔は、笑っていた。
 目を閉じていただけなのに、そんなに面白かった?

「今から、切腹する武士……、いや、投身自殺しようとする修道女みたいな顔してたぞ」

「……  そんな切なそうな顔してた?」

「キレイにまとめるんじゃねぇ、悪霊払いに挑む陰陽師みたいに指突っ立ててさ」

 言われて、ハッとする。
 いつの間にか胸の前で自身の手を組ませていた。

「無理やりしないって言ってんのに、キスだけでそんなに身構えるなよ、萎えるわ」

 勝手な覚悟が、ヨシの気を悪くしてしまった。

「……それとも、なに?  アイツが転勤になって、キスどころじゃなくなったか?」

 ヨシのカンは、相変わらず冴えている……。

































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