美獣と眠る

光月海愛(こうつきみあ)

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マンション

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 ヨシの自宅マンションに着く。

 干されているとはいえ、ついこの前までは、色んな意味で旬だった芸能人だ。

 私は駐車場に着いてからも、車を降りてからも、ヨシからサングラスを借りて、キョロキョロと注意深く人が居ないか確認していた。

「どっちが芸能人なんだよ? アホか」

 吹き出したヨシは、私の頭をぐしゃぐしゃにしてきた。

「え、だって、ヨシは噂されるの仕事だからいいけど、私はそうじゃないって言ってたじゃないの」

「新しいアルバム発売されたら、どーせ結婚するんだろ?」


 ーーあ……。

 確かにそう言った。


「なら、もう、逃げも隠れもしなくてよくね?」

「……あー……うん……」

 あの夜は、出任せで言ったつもりは無かったんだよね。

 本気で、Virtueの再生を願っていたし……。

「マジで良い曲作れたから、楽しみにしてろよ」

 ヨシに自分から歩み寄りたいと思っていた。

 それなのに、わたしったら……。


「もうここからは、住人しか入れねーから」

 乗ったエレベーターの中で、溶けてしまうんじゃないかと思うほど、力強く、キャンディを2つ握りしめていた。

 
 ―――1LDKプラス防音室の高級マンション。

 「お邪魔します」

  緊張しながら入る。

 物はあんまり置いてないけれど、アンティークな絵画が印象的な、意外にも柔らかい色調の部屋だった。

「ここで、録音したの?」

「そう、宅録できる事が購入する条件だった」

「え、ここ、賃貸じゃないの?」

「賃貸なんて金捨てるようなもんだろ? それに、母さんの実家は俺にとっても帰れる家でもなかったしな」

「……」

 あの、お祖父さんがいる家じゃぁねぇ……。

 それにしても、22歳で、こんな不安定な仕事でマンション買うとか凄くない? ファンとかにバレたらどうすんの? 引っ越せないよ?

「でも、結婚したら売るけどな」

 ドキッ。

 さっきからずっと、あんまり実感の湧かない夢の中の話をされてるみたい。

「二人……もしくは、三人、四人じゃ、狭いじゃん?」

 だけど、言葉を続けるヨシの目は、夢なんか見てなかった。


「マンションに、女入れたの、初めて……」

 私の方が夢を見てるみたい。

 ヨシの初めてを、私、たくさん、貰ってる。







 





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