美獣と眠る

光月海愛(こうつきみあ)

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虚しさ

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 【Kanedoのkシリーズの冬バージョンがオンエア開始! 】

 暴露されたヨシの奔放な素行により悪影響が出たとされながらも、12月に入って公開された、″ホワイトカラー″ のヨシのCMは、かなり好評だった。

 社内でも、ここまでの完成度は期待されてなかったらしく、


「″ 黒 ″ のイメージが強いV系のバンドのボーカリストが、ユニコーンの姿で、白い雪の中を処女に向かって駆けいく。……このアイデア、僕が打ち出したものなんだよねぇ♪」

 私から担当を引き継いだ加納が、偉そうにオペレーター達に吹いていた。

 ……良く言うよ。
  
「加納が生み出すアイデアなんて、たかが知れてるのに……会社も馬鹿なことしたわよね」

 Kanedoの担当を外され、雑務ばかりをこなすようになった私を、戸崎さんだけが慰めてくれた。
 
「本社の庶務では、もう企画に携わる仕事は出来ないんですよね?」


いきなり、月山さんに企画作成を任命された時は、正直、とても面倒臭かったのに、いざやってみると、楽しかったしやり甲斐があった。


「どうかな? また拾ってくれる神が現れるかもしれないわよ。……それにしても今回のCMのヨシって、本当にキレイよね、まさしく″ 美しき獣 ″ って感じ!
キャッチコピーも後藤さんが考えたんだよね?」

「……はい」

 ーー ″ その美しさは背徳 ″ ーー

 そう。ヨシと一緒に考えた。


 「ユニコーンってのはさ、カッコ良くて、良くベカサスと間違えられるけど、本当は処女厨だし、悪の化身とも言われてるんだぜ? Virtueのヨシにピッタリのイメージだと始めから睨んでたんだよなぁ!」

「へぇ!加納さんてばスゴーイ! 物知りー!」

「俺に分かんないことはないよ、何でも聞いて!」

 女子達にチャラい加納といい、人気バンドのボーカリストであるはずのヨシといい……

 あんな風に、力でねじ伏せて女性を抱くことに、背徳感は生まれないの?
 
 ないんだろうね。
 だから、まだこの会社に居座っている。

 あともう少しでオサラバとなるこの事務所には、僅かながら、月山さんとの思い出がある。

 ここを去る寂しさの1つはそれだ。

 恐らく罪悪を感じたんだろうヨシからは、あれから連絡はなくて、月山さんのことを好きだと再確認したのに、それはそれで妙な虚しさがあった。

 あんな風に抱かれて、私は、ヨシの事分かってなかったんだと思い知らされたし、ヨシの彼女にも、もうなることはないし、特別なファンになることも、もうない。

  こんな私だけど、やっぱり、月山さんだけは失いたくなかった。



「後藤、今夜、会えるか?」

 数日後、九州に発ってしまう月山さんから、電話がかかってきた。

 失いたくないと思ってるのに、こちらから連絡を取らなかったのは、やっぱり、ヨシとのことが後ろめたいから。
 

「……あ、あの」

 会いたいのに、怖いと感じていた。


「後藤の転勤の話もしたいし、軽く飲みにでも行こう」

 それでも、大人の月山さんに全てを委ねたくなった。

 大好きだったバンドも、やり甲斐を感じ始めていた仕事も、失ってしまうのなら、もうどうでもいいとさえ。


「……わかりました。終わったら連絡します」










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