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別れの
しおりを挟む緊迫した宴会の席を、変装したヨシが複数の人とももに眺めていた。
「広告代理店の飲み会って楽しそうだな?」
いつの間に?
いたの気が付かなかった。
「あ、先に行っててよ」
スタッフに示唆するヨシに気付いた加納は、チッと舌打ちして、視線を月山さんから料理の方へと移す。
「なんだ?オカマ野郎、お前には関係ないだろーが、見世物じゃないんだ。さっさと消えろ、クソガキが」
突然現れたロン毛の美形が、まさかVirtueのヨシだと思ってないのか、タコ課長はシッシッ!と追い払った。
専務達も同じらしく、
「ほら、他の客の迷惑になるから、月山くんももう頭を上げて……」
課長発端の侮辱劇を早々と終わらせようとする。なのに、このタコの陰険さは更にヒートアップ。
「人に見られたくらいで土下座止めちまうのか? ハッ! お前の、部下を思う気持ちはそんなもんなのか? 本当にお願いする気あるなら俺の靴でも舐めやがれ! 」
「キャッ!」
月山さんに、靴を脱いで投げつける始末だ。
その靴のかかと部分が月山さんのおでこに当たってしまい、切れたのか、そこから微かに血が滲んでいる。
「ハハハ!!ざまーみろだ!! これで靴なめは勘弁してやるよ!!」
それなのに、タコは嬉しそうに高らかに笑っていて私がキレた。
「このタコ!!!いい加減にしなさいっ……」
その靴を掴んで、すかさずタコに投げ返そうとしたら、
「かせ!」
ヨシが靴を奪い取り、
「……ア……グッッ……?!!」
馬鹿みたいに笑うタコ課長の口の中にねじ込んでしまった。
「キレイにしたかったら、まず自分で舐めろ」
ヨシの凄味ある声が爽快なくらい――
「そして、あんたも」
「……え?」
プハーッと靴を吐き出し反撃しようとしたタコ課長を長い脚で押さえながら、ヨシは、月山さんを睨み付けている。
「プライドはないのか? 好きな女の前でみっともないことすんな。そんな弱腰だから大事なもの、かっさらわれるんだよ」
まだ、月山さんが知らない事実をほのめかすようなことを言って、スタッフらしき人達の元へと向かって行った。
「麗しき親子愛、見ちゃったな」
ヨシのことを気付いた加納だけが、バカにしたように笑っていた。
「……後藤、行こう」
おでこの傷を軽く押さえて、月山さんが私の手を取った。
タコ課長に、こそこそと耳打ちする加納の姿と、
「なに?? さっきのが息子かっ!?」
驚くタコの声を後にして、二人で店を出た。
……まさか、ヨシが月山さんのためにあんなことするなんて思わなかった。
この間、悲しい抱かれ方をしたのに、気まずい空気を感じる暇もないほど、さっきのヨシは、月山さんを侮辱をする課長に怒りをぶつけていた。
いつも、憎まれ口叩いてるけど……ヨシは、本当は、月山さんのこと…――
タクシー乗り場に向かう月山さんの背中は、やっぱり広いと思った。
付いていきながら、そこに顔を埋めたくなる衝動にかられる。
さっきのヨシの行動にもジン…ときたけど、月山さんが私なんかのために、課長に土下座までしてくれようとしたことが、とても嬉しかった。
「後藤…」
「え?、は、はい」
月山さんはが突然振り返り、一人勝手に高揚していた私をドキドキさせる。
好きだと言って貰えない私は、このとき、何か期待したのか、
「元気でな」
突然のお別れの言葉に、呼吸が止まってしまった。
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