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空港
しおりを挟む「日本航空 長崎行き、10時24分発…125便…ご利用のお客様は……」
空港ロビーにアナウンスが響き渡る。
九州なんて行くのは初めてじゃないのに、妙にドキドキ。
「あ、CAL制作会社の人も、Kanedoの山口さんも既に来てるよ!」
待ち合わせの二階ロビーの時計台のところに、撮影スタッフが集まっていた。
「おはようございます!」
「お、大電広告代理店の美人看板娘が二人も揃ったらテンション上がるね!」
私は美人ではないけど、山口さんの社交辞令に悪い気はしなくて、戸崎さんの隣でニコニコとしていた。
「本日は宜しくお願いしますねー」
うちの会社からは、私と戸崎さんだけが同行。
加納は、私が再起用された事に腹を立てて、この件からは自ら降りた。
「あとは、メインキャラクターのヨシだな」
「え、ヨシも同じ便なんですか?」
普通……こういう場合、主役というか、芸能人は後から別の便でくるものじゃないの?
「我々もそう言ったんですけどね、スケジュールも色々あるだろうし、そのつもりで航空券手配してたんですが……」
私の疑問に、制作スタッフの方が答えてくれた。
「ですが?」
「んー、どういう風の吹き回しか、今日は絶対スタッフと同じ便で行くと言い張って……」
「…へぇ…そうなんですか?」
群れるのキライなイメージなのに、なぜに?
そうこうしているうちに、
「あっ、ヨシだ」
ヨシが前方からゆっくりとキャリーバックを引いてやって来た。
変装してるのに、超目立ちまくり。
昔、流行った映画のデジタル人間のようなロングコートが印象的で、サングラスも超高級ブランドものだし、どこからどう見ても、芸能人だった。
「遅れてすみません……」
さほど遅れてもいないのに、傲慢さを何処かに置いてきたのか、皆に頭を下げる。
「まだ、搭乗までに時間あるから朝食でもどうだね?」
クライアントの山口さんが、ヨシと事務所スタッフをカフェに誘うも、
「あ、俺、朝メシ食わないんで」
ヨシはそれを軽く断り、私の方をチラリと見た。
サングラスをかけていても、視線の先が私だったことは分かった。
あの波止場の夜から、口は殆どきいていない。何か言いたげ?
「後藤さん、羽田って初めてなんじゃない?」
「え?」
初めてじゃないけど。ヨシから悟ったのか戸崎さんは、
「地方から出てきた後藤さんなら、きっと羽田空港は珍しいはずよ、六階の展望デッキに行ってみなさいよ!」
「なんでそんな……」「いいから!」
地方から来たわけでもないのに、やたらと私を展望デッキへと行かせたがる。
「あー……俺もそこ、行ったことねーわ」
ヨシまでそんなこと言うから、手続き等を済ませたあと、二人でそこに行くことになった。
「搭乗時間 忘れないようにね!」
戸崎さんがニコニコと手を振る。
やっぱり、どこか鋭い女性なんだ。
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