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玩具
八割
しおりを挟むスカーフを抜こうとした、先輩の手がピクリと止まる。
「……″ろくでなし″……?」
長めの前髪の間から私を見つめる漆黒の瞳が、更に冷たく光ったような気がした。
この人、本当に、ドM……ーーーー?
「お前、俺がいっちばん嫌いなこと言ったな……?」
え、え?
私を捕らえる金髪男の方を振り返ると、「へへっ」と、笑って、舌を出していた。
う、嘘?!
真逆ーーー?!
美徳先輩の顔がひきつって、本当に本当に、悪魔みたいに怖くなった。
「俺、こんな女とヤりたくねーわ。あとは、こいつらを楽しませてやれよ」
吐くように言い放った言葉も怖い。
ちょ、ま、
「待って!」
勿論、美徳先輩が私を待つわけもなく、ピシャッ!と勢いよく部屋を出ていった先輩は、こちらを振り向くこともなかった。
…………そして、
「ヨシのオコボレシリーズ」
再び鍵をしめる音が聞こえて、恐怖の渦に飲み込まれてしまう。
「複数って、やってみたかったんだよな」
ここに、本当の獣がいたーー。
こんなことってある?
好きな人に、生け贄のように差し出された。
「先輩っ!」
もう姿も見えないのに、美徳先輩を呼んだ。
「バカだな。となりは軽音部で、ここも防音設備のある視聴覚室だぞ、聞こえるわけねーやん!」
私を掴んで離さない金髪男をキッと睨み付ける。
「……始めから、このつもりだったんですか?」
「お前のパンツ見た時から、皆ヤりたいってきかなくてな! のこのこ付いてくるから悪いんだろ?」
だけど、全く悪びれのない獣は、さっきと同じように舌をべっと出しておどけて見せた。
……全然可愛くない。
「付いてきてない、強引にここに引っ張ってきたんじゃないですか……」
確かにバカだなって自分でも思うから、自然と悔し涙が溢れてくる。
「うるせーな。俺らに目を付けられる方が隙があるんだよ! ヨシの事好きな女って大概が頭悪いから、このパターンでいけるよな」
……え、いま、なんて?
″ 女と付き合っても1ヶ月以上続かないらしーよ″
″ 付き合ってた女って、先輩のこと悪く言わないから真相は不明″
ーーまさか。
「……いつも、こんなことしてるんですか?」
美徳先輩と歴代彼女の交際を終わらせるような事してきたのは……、
「まぁ、八割くらいか。 こんなふうに付き合う前の女とするのも、ヨシが差し出すのも初めてのパターンだけどな」
この人達が原因だったんだ。
″ 裸の写真とか撮られて、きっと、脅かされてるんだよ!″
美嘉の妄想がリアルな予感となるーー
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