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第二章 大伍と挫折

失敗、残された本当の気持ち

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   独立するにあたって必要なのは、まずカメラと機材、パソコン、そして、事務所。
   
  アシスタント時代から持っていたのは、Canon Eos 20Dという820万画素のデジタル一眼レフだったが、色んな仕事を請け負う為には他のカメラも必要だった。
     
  それも、
   
「才能を引き出す為の資金は惜しまないから」
   
  英子がお金を出してくれた。
  マンションも広い所に移り、兼事務所として使うことに。
     
   環境は整った。
   ……が。
   
   撮影技術もスタジオ時代に鍛えられ、スキルを上げたつもりだったけど、俺には足りないものがまだあった。
    
   ーー 集客のノウハウ。
    
   それだけは、英子の力があっても、どうしようもなかった。

  
   英子の紹介というツテだけでは、さほど新規の仕事は増えなかったし、
 
 「え、なんであそこ辞めちゃったの?」
    
   俺を、業界大手だった会社を裏切った、″ 愚か者 ″ として捉える客もいたからだ。
   
   何より、スタジオ時代に、営業的をしなくても仕事を回して貰えた事が仇となり、勘違いなプライドが仕事の邪魔していた。
     
  そうこうしているうち、
 
「最近、性欲がめっきり減ったのよね」
     
  英子が更年期とやらを迎えてしまった。


   ″ 一緒にいてくれるだけでいいの  ″
    
   そう言っていたのが嘘みたいに、性行為を求めなくなった英子は、急激に俺への関心も薄れていったようだった。
   
 「そのうち、連絡するから」
 
   以後、   英子からの連絡は途絶えた。
     
   英子の助けを失い、ますます仕事を選べなくなった俺は、危ない仕事を引き受けてしまい、クライアントがギャラ未払いのままトンズラするという不運にも見舞われた。
    

   それからは、写真への情熱も薄れて、カメラを持つことにも嫌気がさした。
     

   そして。
   独立して一年で、俺はとうとう事務所を畳み、地元の九州へ戻ってきた。
    
   俺に残されたのは、プライベートで見せる、ナチュラルな片桐英子のヌード写真だけ。
    
  それを見て、つくづく、俺はこの女にハマっていたのだと思い知らされた。




   地元に帰ってきたものの、これといった仕事も見つけられず、ボンヤリとした日々を過ごしていた。
    
  挫折はしても、写真以外に、やりたいことも、やれることがなかったからだ。
  
   そんなとき、【ストップ フォトコンテスト】の募集が目に止まった。
    
   テーマは、【日本の風景】。
     
   グランプリ 1名 賞金100万円。
   金賞3名、銀賞3名ーー
   その他多数の賞が用意されていた。
     
   俺は、これに賭けてみようと思った。
     
   これで何も賞を取れなかったら、もう写真で生計を立てることは諦めようとーー
    
  それで、南部観光バスの桜の名所巡りツアーに参加することに決めたのだった。











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