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2.変化
62.王子様
いじめられていることを全部話した。
「噂では聞いてたけど、相当やばいね」
なぜか永那は楽しそうに笑った。
彼女が笑うから、なぜかあたしも笑った。
「そんな男好きなの?」
そう聞かれて、あたしは即答した。
「男は嫌い」
永那が驚く。
「じゃあ、なんで男に媚売ってんの?」
“男に媚売りまくってて気持ち悪い”
女から言われる悪口ナンバーワン。
でも永那に言われるとなぜか嫌な気はしなくて、それが不思議だった。
「昔、ストーカーされたことあって、怖くて、守ってもらうため。…彼氏がいれば、一時的にでも学校でも1人じゃなくなるし」
「ふーん」
永那は、まるでなんでもないことのように頷く。
「変なの」
その言葉には少し苛ついた。
仕方ないじゃん、それしか自分を守る方法がわからなかったんだから。
「それでいじめられて吐いてるなら、本末転倒じゃん」
そう言った彼女の笑顔が、今でも忘れられない。
校舎裏で2人で並んでしゃがんでいた。
陰になっていたのに、ちょうど太陽が顔を出して、彼女を照らした。
それがあまりに綺麗で、あたしは見ていられなくなって、俯いた。
「…でも、どうすればいいかわからない」
「んじゃあ、私を好きってことにすれば?」
「え?」
「男嫌いなんでしょ?でも向こうが勝手に言い寄ってくる。それでいじめられる。ストーカーといじめが怖いから彼氏作ったけど、彼氏と手を繋ぐのも気持ち悪くて、結局振られて、みんなの人間関係ぶち壊して、もっと酷いいじめを受けてる…そうでしょ?」
まるで簡単なことみたいに完結にまとめられて、私はただ呆然とした。
「言い寄ってくる男に言ってやれよ。“私は両角永那が好きだから、お前なんか興味ない”って」
彼女がケタケタ笑った。
あたしの王子様だと思った。
ちょうど学年が変わるときで、すぐにクラス替えがあって、永那と同じクラスになった。
奇跡に思えた。運命の人だとも思った。
あたしは永那に言われた通り、みんなに言ってやった。
「お前の彼氏なんか興味ない。あたしは永那が好きなんだ」って。
「あんた誰?…あたし、永那が好きだから、ごめんね」って。
そしたら、みんなのあたしを見る目が変わった。
最初は好奇の目で見られていた。
でも永那は人気者だったし、そのうち当たり前みたいになった。
あるとき、永那の首筋に痣みたいなのができていた。
「永那、これ、どうしたの?」
聞いたら、彼女はスマホのカメラで確認して、舌打ちした。
あたしだけに見せる姿。
普段の彼女はいつもニコニコしていて、ノリも良くて、優しい。
でも、あたしの前では違う。
よく怒っていて、イライラすると舌打ちする。
永那は首筋の痣を擦る。
「もう我慢の限界だわ、ちょっと行ってくる」
そう言ってどこかに走り去って行った。
あたしは校舎裏で、そのまま彼女が帰ってくるのを待った。
しばらくボーッと空を見ていたら、永那は帰ってきた。
「どこ行ってたの?」
「先輩のとこ」
「長かったね。なんだったの?」
永那の眉間にシワが寄る。
「振ってきた」
振ってきた?
意味がわからなかった。
「どういうこと?」
永那の冷たい視線があたしに降り注ぐ。
「先輩が“好き”って言うから、振ってきた」
それが、痣とどういう関係があるんだろう?
「私、ずっとその人とセックスしてたんだ」
永那がニヤリと笑った。
キーンと耳鳴りがして、頭が真っ白になった。
「これ」
永那が痣を指さす。
「キスマーク」
目の錯覚なのか、痣だけが浮き出るみたいに強調された。
「永那は、よくセックスするの?」
なんとか放った言葉はそれだった。
「まあ、たまにねー」
予鈴が鳴ったから、永那は立ち上がる。
あたしが立ち上がらないでいるから、手が差し伸べられた。
そっと手を重ねると、そのまま引き上げてくれる。
あたしはよろめいて、そのまま彼女の胸に寄りかかった。
見上げると、彼女が薄く笑っていて、ドキドキした。
永那は毎日家まで来てくれたし、帰りは送ってくれた。
毎日それが嬉しくてたまらなかった。
先輩の話を聞いたとき(浮かれちゃだめなんだ)って思った。
永那は、断れなくて先輩とセックスしていたと言っていた。
でもそのうち調子に乗られて、恋人面されて、わかりやすいところにキスマークまでつけられたから、腹が立って振ったのだと。
だからその話を聞いて、永那は私を守るように振る舞ってくれるけど、それで浮かれちゃだめなんだって。
浮かれたら、永那に嫌われちゃう。
それだけは絶対に嫌だった。
ずっとそばにいられれば良い。そう思ってた。
「昨日、初めて男とセックスしたんだけどさ」
いつも通り校舎裏で2人で話す。
朝なのに、永那はおかまいなしに、普通に話す。
ここで初めて、あたしは永那の初めての相手が女だったのだと知る。
「なんか、ちょっと嫌だったわ」
いきなりいろんなことを知って、正直パニックになりかけた。
でも“浮かれちゃだめ”と思っていたあたしは、必死に冷静を装った。
これは“浮かれる”じゃなくて、“驚いた”だけだったんだけど、そのときのあたしは常に普通にしていることが大事だと思いこんでいたから、必死に普通のことみたいに話を聞いた。
「そうなんだ」
「千陽ってセックスしたことある?」
その質問にどう答えるのが正解なのか、あたしにはわからなかった。
でも、これだけ永那がセックスの話をするのだから、あたしが話についていけないと思われるのはだめだと思った。
だから「あるよ」と嘘をついた。
「噂では聞いてたけど、相当やばいね」
なぜか永那は楽しそうに笑った。
彼女が笑うから、なぜかあたしも笑った。
「そんな男好きなの?」
そう聞かれて、あたしは即答した。
「男は嫌い」
永那が驚く。
「じゃあ、なんで男に媚売ってんの?」
“男に媚売りまくってて気持ち悪い”
女から言われる悪口ナンバーワン。
でも永那に言われるとなぜか嫌な気はしなくて、それが不思議だった。
「昔、ストーカーされたことあって、怖くて、守ってもらうため。…彼氏がいれば、一時的にでも学校でも1人じゃなくなるし」
「ふーん」
永那は、まるでなんでもないことのように頷く。
「変なの」
その言葉には少し苛ついた。
仕方ないじゃん、それしか自分を守る方法がわからなかったんだから。
「それでいじめられて吐いてるなら、本末転倒じゃん」
そう言った彼女の笑顔が、今でも忘れられない。
校舎裏で2人で並んでしゃがんでいた。
陰になっていたのに、ちょうど太陽が顔を出して、彼女を照らした。
それがあまりに綺麗で、あたしは見ていられなくなって、俯いた。
「…でも、どうすればいいかわからない」
「んじゃあ、私を好きってことにすれば?」
「え?」
「男嫌いなんでしょ?でも向こうが勝手に言い寄ってくる。それでいじめられる。ストーカーといじめが怖いから彼氏作ったけど、彼氏と手を繋ぐのも気持ち悪くて、結局振られて、みんなの人間関係ぶち壊して、もっと酷いいじめを受けてる…そうでしょ?」
まるで簡単なことみたいに完結にまとめられて、私はただ呆然とした。
「言い寄ってくる男に言ってやれよ。“私は両角永那が好きだから、お前なんか興味ない”って」
彼女がケタケタ笑った。
あたしの王子様だと思った。
ちょうど学年が変わるときで、すぐにクラス替えがあって、永那と同じクラスになった。
奇跡に思えた。運命の人だとも思った。
あたしは永那に言われた通り、みんなに言ってやった。
「お前の彼氏なんか興味ない。あたしは永那が好きなんだ」って。
「あんた誰?…あたし、永那が好きだから、ごめんね」って。
そしたら、みんなのあたしを見る目が変わった。
最初は好奇の目で見られていた。
でも永那は人気者だったし、そのうち当たり前みたいになった。
あるとき、永那の首筋に痣みたいなのができていた。
「永那、これ、どうしたの?」
聞いたら、彼女はスマホのカメラで確認して、舌打ちした。
あたしだけに見せる姿。
普段の彼女はいつもニコニコしていて、ノリも良くて、優しい。
でも、あたしの前では違う。
よく怒っていて、イライラすると舌打ちする。
永那は首筋の痣を擦る。
「もう我慢の限界だわ、ちょっと行ってくる」
そう言ってどこかに走り去って行った。
あたしは校舎裏で、そのまま彼女が帰ってくるのを待った。
しばらくボーッと空を見ていたら、永那は帰ってきた。
「どこ行ってたの?」
「先輩のとこ」
「長かったね。なんだったの?」
永那の眉間にシワが寄る。
「振ってきた」
振ってきた?
意味がわからなかった。
「どういうこと?」
永那の冷たい視線があたしに降り注ぐ。
「先輩が“好き”って言うから、振ってきた」
それが、痣とどういう関係があるんだろう?
「私、ずっとその人とセックスしてたんだ」
永那がニヤリと笑った。
キーンと耳鳴りがして、頭が真っ白になった。
「これ」
永那が痣を指さす。
「キスマーク」
目の錯覚なのか、痣だけが浮き出るみたいに強調された。
「永那は、よくセックスするの?」
なんとか放った言葉はそれだった。
「まあ、たまにねー」
予鈴が鳴ったから、永那は立ち上がる。
あたしが立ち上がらないでいるから、手が差し伸べられた。
そっと手を重ねると、そのまま引き上げてくれる。
あたしはよろめいて、そのまま彼女の胸に寄りかかった。
見上げると、彼女が薄く笑っていて、ドキドキした。
永那は毎日家まで来てくれたし、帰りは送ってくれた。
毎日それが嬉しくてたまらなかった。
先輩の話を聞いたとき(浮かれちゃだめなんだ)って思った。
永那は、断れなくて先輩とセックスしていたと言っていた。
でもそのうち調子に乗られて、恋人面されて、わかりやすいところにキスマークまでつけられたから、腹が立って振ったのだと。
だからその話を聞いて、永那は私を守るように振る舞ってくれるけど、それで浮かれちゃだめなんだって。
浮かれたら、永那に嫌われちゃう。
それだけは絶対に嫌だった。
ずっとそばにいられれば良い。そう思ってた。
「昨日、初めて男とセックスしたんだけどさ」
いつも通り校舎裏で2人で話す。
朝なのに、永那はおかまいなしに、普通に話す。
ここで初めて、あたしは永那の初めての相手が女だったのだと知る。
「なんか、ちょっと嫌だったわ」
いきなりいろんなことを知って、正直パニックになりかけた。
でも“浮かれちゃだめ”と思っていたあたしは、必死に冷静を装った。
これは“浮かれる”じゃなくて、“驚いた”だけだったんだけど、そのときのあたしは常に普通にしていることが大事だと思いこんでいたから、必死に普通のことみたいに話を聞いた。
「そうなんだ」
「千陽ってセックスしたことある?」
その質問にどう答えるのが正解なのか、あたしにはわからなかった。
でも、これだけ永那がセックスの話をするのだから、あたしが話についていけないと思われるのはだめだと思った。
だから「あるよ」と嘘をついた。
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