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2.変化
67.王子様
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「あたしはね、中学のときからずっと永那だけが好きだったの」
空を見上げる。
「永那ってホントエロいから、何度も誘ってみたりするんだけど、全然ノッてくれなくてねー」
水を飲んでいた優里が咽る。
「ちょ…そんな、いきなりの暴露やめてよ!」
優里の反応がいちいち面白い。
「暴露っていきなりするものでしょ?」
「いや!でもさ!もうちょっと…少しずつ、さ!」
「えー?少しずつ言ったつもりだけど?」
優里が唇を尖らせて、ペットボトルの口に突っ込んでる。
「永那って、そんななの…?」
伺うようにあたしを見る仕草が好奇心旺盛な子供みたい。
「そんなだよ」
「キャー!」
両足を上げて、手で顔を覆う。
「ああ、でも。誰彼かまわず手を出すわけじゃないよ?もちろん」
「え?うん、わかってるよ」
少し永那のことを悪く言い過ぎたと思って焦ったけど、優里は勘違いしていなさそうで安心した。
「誰にでも手を出すなら、もう千陽と…そういう関係になってるでしょ?」
「そりゃそーだ!」
2人で笑う。
「あたし、もう少し頑張ってみようかな」
「え?」
「永那のこと」
優里の顔がパッと明るくなる。
「うん!私、応援するよ!」
「…振られたら、慰めてくれる?」
そう言うと、あからさまに悲しそうな顔をする。
「私にできることなら、なんでもするよ」
困ったように笑う優里。
「ありがと」
宣言した通り、あたしはちょっと頑張ってみることにした。
翌日、空井さんに声をかけた。
空井さんは心底驚いた顔をして、呆けてる。
まずは、2人の関係を確認する。
でも返事がないから、あたしは彼女を揺さぶることにした。
彼女の瞳が揺れる。
…ああ、嫌だ。…こんな瞳、しないで。
自分で話して、昨日の胸の痛みが蘇ってくる。
彼女から言葉を聞けたわけではなかったけど、確信できるだけの反応を見せられてしまった。
2人は両想いで、きっともう、付き合ってる。
きっとあたしに勝ち目はほとんどない。
そもそもこれだけ長い時間永那と一緒にいて何もないんだから、今後も可能性が低いって、嫌でも思い知らされる。
…それでも。
永那の過去を話したら、この、大真面目で正義感の強い人なら、“自分じゃ不釣り合いだ”って思ってくれるかもしれない。
そんな期待を込めて、永那の過去を話した。
なんてあたしは性格が悪いんだろう?って思う。
こんなんで、永那に好きになってもらえるわけない…って、わかってる。
永那に嫌われるかも。
こんなことバラして、永那に嫌われるかも。
嫌だ、嫌われたくない。
…そう思うと、視界がボヤけてきて。
もうだめだと思ったときに、チャイムが鳴った。
あたしは机に突っ伏して、必死に鼻をすすらないように泣いた。
永那にいつバレて嫌われるのかと不安だった。
でも、何日経っても永那はいつも通りだった。
木曜日になって、あたし達の輪に空井さんが入ってきた。
どういう心境の変化なのか、永那にノートを渡す。
永那には、あたしがノートを書いてあげてる。
毎日、前日の授業のノートを全部永那のノートに書き写して渡している。
だからわざわざテスト用にまとめたノートなんて必要ない。
永那はそれで今までちゃんと良い成績を取ってるし、空井さんだってそれをわかってるはずなのに…。
そうだ、喧嘩を売られてるんだ。
前にあたしが空井さんを挑発したから。
喧嘩を買われた…という言い方のほうが正しいのかな。
ふいに永那が頭を上げた。
あたしは永那の真後ろに立っていたから、ちょうど胸元の辺りに頭が当たる。
ドキドキしないわけがない。
こういう、不意をつく、全く悪意のない、全く下心のない行動で、何回あたしが永那にドキドキさせられたか。
…でも、永那が普通に「穂」と空井さんの名前を呼んで、気持ちが冷めていく。
優里が「“穂”って、空井さんの名前?」と聞く。
永那はニヤニヤしながら「そうだよー、綺麗な名前だよね」なんて言った。
周りの女子も話に参加してくる。
永那と空井さんが名前を呼ぶようになったのは2週間前で、掃除のときに仲良くなったと。
…なるほど、あたしが知らないわけだ。
その頃から付き合い始めたとすると、2人が話すようになったのはもっと前か。
付き合ったのは…永那がみんなに掃除をするように言った日…?
突然空井さんの腕を掴んで出て行って、教室に戻ってきたとき、今まで見たこともない顔をしていた。
ああ、だめだ。
グサグサと胸が抉られていく感覚。
認めたくない。
知りたくない。
あたしが知らない永那を見せつけないで。
あたしが見たこともない永那を見ないで。
永那は、あたしの王子様なのに。
空を見上げる。
「永那ってホントエロいから、何度も誘ってみたりするんだけど、全然ノッてくれなくてねー」
水を飲んでいた優里が咽る。
「ちょ…そんな、いきなりの暴露やめてよ!」
優里の反応がいちいち面白い。
「暴露っていきなりするものでしょ?」
「いや!でもさ!もうちょっと…少しずつ、さ!」
「えー?少しずつ言ったつもりだけど?」
優里が唇を尖らせて、ペットボトルの口に突っ込んでる。
「永那って、そんななの…?」
伺うようにあたしを見る仕草が好奇心旺盛な子供みたい。
「そんなだよ」
「キャー!」
両足を上げて、手で顔を覆う。
「ああ、でも。誰彼かまわず手を出すわけじゃないよ?もちろん」
「え?うん、わかってるよ」
少し永那のことを悪く言い過ぎたと思って焦ったけど、優里は勘違いしていなさそうで安心した。
「誰にでも手を出すなら、もう千陽と…そういう関係になってるでしょ?」
「そりゃそーだ!」
2人で笑う。
「あたし、もう少し頑張ってみようかな」
「え?」
「永那のこと」
優里の顔がパッと明るくなる。
「うん!私、応援するよ!」
「…振られたら、慰めてくれる?」
そう言うと、あからさまに悲しそうな顔をする。
「私にできることなら、なんでもするよ」
困ったように笑う優里。
「ありがと」
宣言した通り、あたしはちょっと頑張ってみることにした。
翌日、空井さんに声をかけた。
空井さんは心底驚いた顔をして、呆けてる。
まずは、2人の関係を確認する。
でも返事がないから、あたしは彼女を揺さぶることにした。
彼女の瞳が揺れる。
…ああ、嫌だ。…こんな瞳、しないで。
自分で話して、昨日の胸の痛みが蘇ってくる。
彼女から言葉を聞けたわけではなかったけど、確信できるだけの反応を見せられてしまった。
2人は両想いで、きっともう、付き合ってる。
きっとあたしに勝ち目はほとんどない。
そもそもこれだけ長い時間永那と一緒にいて何もないんだから、今後も可能性が低いって、嫌でも思い知らされる。
…それでも。
永那の過去を話したら、この、大真面目で正義感の強い人なら、“自分じゃ不釣り合いだ”って思ってくれるかもしれない。
そんな期待を込めて、永那の過去を話した。
なんてあたしは性格が悪いんだろう?って思う。
こんなんで、永那に好きになってもらえるわけない…って、わかってる。
永那に嫌われるかも。
こんなことバラして、永那に嫌われるかも。
嫌だ、嫌われたくない。
…そう思うと、視界がボヤけてきて。
もうだめだと思ったときに、チャイムが鳴った。
あたしは机に突っ伏して、必死に鼻をすすらないように泣いた。
永那にいつバレて嫌われるのかと不安だった。
でも、何日経っても永那はいつも通りだった。
木曜日になって、あたし達の輪に空井さんが入ってきた。
どういう心境の変化なのか、永那にノートを渡す。
永那には、あたしがノートを書いてあげてる。
毎日、前日の授業のノートを全部永那のノートに書き写して渡している。
だからわざわざテスト用にまとめたノートなんて必要ない。
永那はそれで今までちゃんと良い成績を取ってるし、空井さんだってそれをわかってるはずなのに…。
そうだ、喧嘩を売られてるんだ。
前にあたしが空井さんを挑発したから。
喧嘩を買われた…という言い方のほうが正しいのかな。
ふいに永那が頭を上げた。
あたしは永那の真後ろに立っていたから、ちょうど胸元の辺りに頭が当たる。
ドキドキしないわけがない。
こういう、不意をつく、全く悪意のない、全く下心のない行動で、何回あたしが永那にドキドキさせられたか。
…でも、永那が普通に「穂」と空井さんの名前を呼んで、気持ちが冷めていく。
優里が「“穂”って、空井さんの名前?」と聞く。
永那はニヤニヤしながら「そうだよー、綺麗な名前だよね」なんて言った。
周りの女子も話に参加してくる。
永那と空井さんが名前を呼ぶようになったのは2週間前で、掃除のときに仲良くなったと。
…なるほど、あたしが知らないわけだ。
その頃から付き合い始めたとすると、2人が話すようになったのはもっと前か。
付き合ったのは…永那がみんなに掃除をするように言った日…?
突然空井さんの腕を掴んで出て行って、教室に戻ってきたとき、今まで見たこともない顔をしていた。
ああ、だめだ。
グサグサと胸が抉られていく感覚。
認めたくない。
知りたくない。
あたしが知らない永那を見せつけないで。
あたしが見たこともない永那を見ないで。
永那は、あたしの王子様なのに。
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