261 / 595
5.時間
260.修学旅行
しおりを挟む
■■■
“味わって”と言われて、彼女の指についた蜜を舐めてから、彼女から手を差し出されるようになった。
“3人でする”
私にはまだそのことが、どういうものなのか、全然わからない。
でも…やっぱり、彼女がひとりでするのを見るのは少し悲しくて。
私が彼女にシてあげることで永那ちゃんが悲しむなら、やっぱり、永那ちゃんが彼女を愛してあげてほしいと思ってしまう。
彼女から手を差し出されるようになって、余計に、その気持ちが強まった。
千陽には、それを“バカ”と言われたけれど…。
私、欲張りなのかな。
“いつか離れる”と言われて、私、“絶対嫌だ”って思ってる。
千陽が…幸せになるのは、嬉しい。
私達以外の人と心から繋がって、幸せになるのなら、喜べる自信がある。
でも、離れてほしくない。
ずっと、一緒にいたい。
永那ちゃんにも思う。
絶対、手放したくないって。
…それって、欲張り、だよね。
どうしてそんなふうに思うのか、自分でもわからないから戸惑う。
千陽の寝息が聞こえてきて、気づけば私も眠っていた。
アラームの音で起こされる。
目を開けると、彼女もちょうど目を開けたところだった。
彼女が笑う。
「好き」
「可愛い」
同時に言って、笑い合う。
彼女の顔が近づいて、唇が重なる。
「ねえ、永那からあたしに乗り換えない?」
「だめ」
彼女からの愛は、相変わらず熱烈で。
むしろ、どんどん増している気さえする。
“浮気者”と言われて、私が落ち込んでいたら“そうやって言い合える関係のほうが、気が楽でしょ”と言われた。
だからこういう言葉も、そのうちのひとつだと思っている。
…思って、いいんだよね?
みんなで朝ご飯を食べて、登校する。
「穂の家からだと近くて楽」
「“空井さん”じゃなくていいの?」
「穂が破ってるんでしょ?」
千陽に睨まれる。
「私は千陽と穂ちゃんが仲良くなってくれて嬉しいな~」
優里ちゃんが笑う。
「永那と千陽の仲も戻ったし、安心したよ~ホントに」
千陽が「ハァ」とため息をついて、優里ちゃんが「なにため息ついてんのさー!」と怒る。
「べつに」
千陽は鞄をかけ直して、スタスタ歩く。
小学生ぶりに誰かと登校する。
こんなふうに楽しく話しながらなんて、初めてかもしれない。
教室につくと、もう既に寝ている永那ちゃんが席に座っていた。
テストが始まる前に起こしてあげると、嬉しそうに微笑まれて、今日のデートがグッと楽しみに思えた。
テストが終わると、前回と同じように誰かが「カラオケ行こうぜー!」と言った。
永那ちゃんが立ち上がって、私のそばに来てくれる。
「穂、行こっか」
「うん!」
手を差し出されて、重ねる。
「千陽、優里ちゃん、また月曜日ね」
「じゃなー」
私達が言うと「楽しんでー!」と優里ちゃんに手を振られた。
千陽とは、目が合うだけ。
水族館は、電車で30分ちょっとのところにある。
もう少し遠くに行けば大きな水族館があるけれど、時間に余裕があるわけでもないから、一番近いところにした。
早歩きすれば1時間ちょっとで見て回れるほどの大きさの水族館。
電車のなかで、私が手すりに寄りかかると永那ちゃんは手すりを掴んだ。
手を繋いでいるし、距離が近くて、変に鼓動が速くなって、目をそらしてしまう。
「穂」
「ん?」
「ずっと、デートしてあげられなくてごめんね?」
永那ちゃんの薄茶色の瞳にまっすぐ見つめられる。
「ううん!全然!…今までだって、ずっと、楽しかったよ?」
「そう?」
「うん」
「良かった」
彼女がニコッと笑って、ポンポンと頭を撫でられる。
「先お昼食べようか」
「そうだね」
水族館の近くにあるレストランに入る。
永那ちゃんがドアを開けて「どうぞ」と言ってくれる。
「あ、ありがとう…」
私が中に入っても、永那ちゃんはドアを持ったままだった。
「ありがとうございます」
「いえ」
私の後ろからベビーカーを押す女性が入ってきた。
ベビーカーに乗る赤ちゃんがジッと永那ちゃんを見ているから、永那ちゃんは顔を綻ばせて手を振った。
かっこいい…。
「可愛いね」
永那ちゃんが笑う。
「そうだね」
席に座って、メニューを見る。
「やっぱ水族館に来たんだし、エビフライかな」
「水族館だとエビフライなの?」
「水族館だよ?」
私は首を傾げながらも、頷く。
「私はカレーにしようかな」
「たー…っ」
永那ちゃんがテーブルに勢い良く顔を突っ伏す。
「穂はすぐカレーって言うんだから!」
「永那ちゃんが面白いから」
私が笑うと、永那ちゃんは左眉を上げてから、口元に弧を描く。
「そっか。…んなら、良いや」
…良いんだ。
「じゃあ、シーフードパスタにしよ」
「あれ?カレーは?」
「冗談だよ?」
「そーですか」
2人で笑い合う。
“味わって”と言われて、彼女の指についた蜜を舐めてから、彼女から手を差し出されるようになった。
“3人でする”
私にはまだそのことが、どういうものなのか、全然わからない。
でも…やっぱり、彼女がひとりでするのを見るのは少し悲しくて。
私が彼女にシてあげることで永那ちゃんが悲しむなら、やっぱり、永那ちゃんが彼女を愛してあげてほしいと思ってしまう。
彼女から手を差し出されるようになって、余計に、その気持ちが強まった。
千陽には、それを“バカ”と言われたけれど…。
私、欲張りなのかな。
“いつか離れる”と言われて、私、“絶対嫌だ”って思ってる。
千陽が…幸せになるのは、嬉しい。
私達以外の人と心から繋がって、幸せになるのなら、喜べる自信がある。
でも、離れてほしくない。
ずっと、一緒にいたい。
永那ちゃんにも思う。
絶対、手放したくないって。
…それって、欲張り、だよね。
どうしてそんなふうに思うのか、自分でもわからないから戸惑う。
千陽の寝息が聞こえてきて、気づけば私も眠っていた。
アラームの音で起こされる。
目を開けると、彼女もちょうど目を開けたところだった。
彼女が笑う。
「好き」
「可愛い」
同時に言って、笑い合う。
彼女の顔が近づいて、唇が重なる。
「ねえ、永那からあたしに乗り換えない?」
「だめ」
彼女からの愛は、相変わらず熱烈で。
むしろ、どんどん増している気さえする。
“浮気者”と言われて、私が落ち込んでいたら“そうやって言い合える関係のほうが、気が楽でしょ”と言われた。
だからこういう言葉も、そのうちのひとつだと思っている。
…思って、いいんだよね?
みんなで朝ご飯を食べて、登校する。
「穂の家からだと近くて楽」
「“空井さん”じゃなくていいの?」
「穂が破ってるんでしょ?」
千陽に睨まれる。
「私は千陽と穂ちゃんが仲良くなってくれて嬉しいな~」
優里ちゃんが笑う。
「永那と千陽の仲も戻ったし、安心したよ~ホントに」
千陽が「ハァ」とため息をついて、優里ちゃんが「なにため息ついてんのさー!」と怒る。
「べつに」
千陽は鞄をかけ直して、スタスタ歩く。
小学生ぶりに誰かと登校する。
こんなふうに楽しく話しながらなんて、初めてかもしれない。
教室につくと、もう既に寝ている永那ちゃんが席に座っていた。
テストが始まる前に起こしてあげると、嬉しそうに微笑まれて、今日のデートがグッと楽しみに思えた。
テストが終わると、前回と同じように誰かが「カラオケ行こうぜー!」と言った。
永那ちゃんが立ち上がって、私のそばに来てくれる。
「穂、行こっか」
「うん!」
手を差し出されて、重ねる。
「千陽、優里ちゃん、また月曜日ね」
「じゃなー」
私達が言うと「楽しんでー!」と優里ちゃんに手を振られた。
千陽とは、目が合うだけ。
水族館は、電車で30分ちょっとのところにある。
もう少し遠くに行けば大きな水族館があるけれど、時間に余裕があるわけでもないから、一番近いところにした。
早歩きすれば1時間ちょっとで見て回れるほどの大きさの水族館。
電車のなかで、私が手すりに寄りかかると永那ちゃんは手すりを掴んだ。
手を繋いでいるし、距離が近くて、変に鼓動が速くなって、目をそらしてしまう。
「穂」
「ん?」
「ずっと、デートしてあげられなくてごめんね?」
永那ちゃんの薄茶色の瞳にまっすぐ見つめられる。
「ううん!全然!…今までだって、ずっと、楽しかったよ?」
「そう?」
「うん」
「良かった」
彼女がニコッと笑って、ポンポンと頭を撫でられる。
「先お昼食べようか」
「そうだね」
水族館の近くにあるレストランに入る。
永那ちゃんがドアを開けて「どうぞ」と言ってくれる。
「あ、ありがとう…」
私が中に入っても、永那ちゃんはドアを持ったままだった。
「ありがとうございます」
「いえ」
私の後ろからベビーカーを押す女性が入ってきた。
ベビーカーに乗る赤ちゃんがジッと永那ちゃんを見ているから、永那ちゃんは顔を綻ばせて手を振った。
かっこいい…。
「可愛いね」
永那ちゃんが笑う。
「そうだね」
席に座って、メニューを見る。
「やっぱ水族館に来たんだし、エビフライかな」
「水族館だとエビフライなの?」
「水族館だよ?」
私は首を傾げながらも、頷く。
「私はカレーにしようかな」
「たー…っ」
永那ちゃんがテーブルに勢い良く顔を突っ伏す。
「穂はすぐカレーって言うんだから!」
「永那ちゃんが面白いから」
私が笑うと、永那ちゃんは左眉を上げてから、口元に弧を描く。
「そっか。…んなら、良いや」
…良いんだ。
「じゃあ、シーフードパスタにしよ」
「あれ?カレーは?」
「冗談だよ?」
「そーですか」
2人で笑い合う。
25
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる