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7.向
416.舞う
「調べたら、過眠症ってでてきたけど…お医者さんに行ってみたら?」
「行く時間なんてないよー…」
なんだか、八方塞がりだ。
お母さんが帰ってきたことが、永那ちゃんの無意識の中で、かなりのストレスになっているのかもしれない。
私と2人きりになれないことに苛ついていたし、それをお母さんにも当たってしまっていた。
鬱病の看病は大変だと聞く。
介護者が鬱病になってしまう、介護鬱という言葉を聞いたことがある。
一緒に生活していた時、永那ちゃんは、私に出会っていなかったら死んでいたかもと言っていた。
きっと、それくらい追い詰められてしまうことなんだ。
私に出来ることが思い浮かばなくて、ため息が出る。
「そんなことより、明後日、9ヶ月記念日だね」
「そうだね」
「何しよっか?…その日くらい、ちょっと遅くなってもいいよね」
永那ちゃんが“いい”と言うなら、私は頷くしかない。
“じゃあ…いつできんの?”と、バレンタインの日に千陽の家で言った永那ちゃんの顔は二度と見たくない。
あんな、酷く傷ついた顔。
「通説では、3の倍数がヤバいって聞いたけど、私達は全然別れる気配がないよね?」
「え!?な、なに?…通説?」
日住君のことがあって意識していたからか、鼓動が一気に速くなる。
「知らない?3ヶ月、半年、9ヶ月、1年…飛んで2年、3年…だったかな?別れるカップルが多いんだって」
「し、知らない…」
日住君と金井さんは、8月末に付き合い始めたから、あの涙が別れの涙なのだとすれば、約半年…。
その通説、本当なんじゃない…!?
「そっか。…まあ、そういう説があるんだよ。実際、何かの研究で、人のトキメキって2、3年でなくなっちゃうことがわかってるらしいんだよね」
「そしたら…別れちゃうの…?」
「いや、別れるか別れないかは人それぞれでしょ。何十年も結婚生活送ってる人達はどうなるのさ?」
…両親が離婚してるから、わからない。
おじいちゃんは早くに亡くなっていてあまり記憶がないし…。
そう考えると、身近に長年連れ添った相手がいる人を感じたことがない。
何十年も一緒…憧れる。
「愛情に変わるかどうかが大事なんだってさ」
「愛情?」
「そう。トキメキは2、3年でなくなっちゃうけど、それが家族としての愛情?に変わるかどうかが、別れるか否かの境目らしいよ?」
「じゃあ、私はもう、永那ちゃんのこと、家族って思ってるから、大丈夫かな?」
「な…っ」
永那ちゃんの顔が、見る間に赤くなっていく。
そして、しゃがみ込んでしまう。
「永那ちゃん?」
「穂…ずるいよ…」
「え?なんで?」
「ハァ」と彼女が深く息を吐く。
腕に隠れた顔が少しだけ上がって、彼女の瞳が見える。
「好き」
「私も永那ちゃん好き」
「穂と家族…。そうだね…。家族か」
「永那ちゃんは、違う?」
「違くないよ。私も、穂のこと家族って思ってる。…でも、トキメキもある」
「私も、永那ちゃんにキュンってするよ?」
「キュンってするの?」
「…うん」
自分で言っておきながら恥ずかしくなって、前髪を指で梳いた。
「じゃあ、私達はまだまだ安泰そうだ」
「うん!」
永那ちゃんが立ち上がって、再び歩き出す。
どうやら駅方面に向かっているらしく、そろそろ今日のお散歩は終了なのだとわかる。
「明後日、どうしよっかな~」
「桜が少し、咲いてるかもね」
「まだ咲いてないんじゃない?」
「じゃあ、桜を見つけるお散歩にしない?」
「なにそれ、めっちゃ可愛い。いいよ」
「私、何かおやつ作ってこようかな」
「9ヶ月記念日のプレゼント?」
「うん」
「楽しみ」
永那ちゃんの顔が私の耳元に近づくから、立ち止まる。
「エッチもしたいな」
その囁きだけで、一瞬で下腹部が疼く。
「…ネ、ネットカフェ…行く?」
「ハハハッ」と永那ちゃんがお腹を抱えて笑った。
「な、なに?」
「穂はホント、ネカフェ好きだなあ」
「だ、だって…そこしか思いつかなかったから…!」
「可愛い。…まあ、たしかに、出来る場所限られてるしねー。でも、この前みたいに個室が空いてない可能性があるんだよね。私は、絶対シたいんだよ」
“絶対”を強調される。
流し目に見られて、それが濃艶で、ゴクリと唾を飲む。
「ど、どうしようね?」
「また公園でする?」
「だ、だめ!」
「なんで?」
「しばらくはいいって言ったでしょ?しばらくって言うのは、何年後かの話をしてるの」
「なんだー、そんな後の話かー」
口調は残念そうだけど、表情は柔らかくて、全然残念そうに見えない。
「そうだ!」
「ん?」
「穂の家に行こう」
「え!?た、誉いるよ…?」
「大丈夫大丈夫、あいつ出かけるから」
「え?…え?なんで知ってるの?」
「仲良しだからね」
彼女がニヤリと笑う。
背筋がゾワゾワして、なんだか嫌な予感がした。
「どういう意味?」
「えぇ?意味なんて他にないよ?仲良しだから、知ってるんだってば」
知りたくないから、これ以上聞くのはやめた。
「永那ちゃん」
「なに?」
「明後日さ?」
「うん」
「ピアス、してきてよ」
「ピアス?」
「うん、最近してないでしょ?久しぶりに、見たいなって思って」
「じゃあ、穂」
「ん?」
「お揃いの指輪、つけてきて?」
「わかった」
「行く時間なんてないよー…」
なんだか、八方塞がりだ。
お母さんが帰ってきたことが、永那ちゃんの無意識の中で、かなりのストレスになっているのかもしれない。
私と2人きりになれないことに苛ついていたし、それをお母さんにも当たってしまっていた。
鬱病の看病は大変だと聞く。
介護者が鬱病になってしまう、介護鬱という言葉を聞いたことがある。
一緒に生活していた時、永那ちゃんは、私に出会っていなかったら死んでいたかもと言っていた。
きっと、それくらい追い詰められてしまうことなんだ。
私に出来ることが思い浮かばなくて、ため息が出る。
「そんなことより、明後日、9ヶ月記念日だね」
「そうだね」
「何しよっか?…その日くらい、ちょっと遅くなってもいいよね」
永那ちゃんが“いい”と言うなら、私は頷くしかない。
“じゃあ…いつできんの?”と、バレンタインの日に千陽の家で言った永那ちゃんの顔は二度と見たくない。
あんな、酷く傷ついた顔。
「通説では、3の倍数がヤバいって聞いたけど、私達は全然別れる気配がないよね?」
「え!?な、なに?…通説?」
日住君のことがあって意識していたからか、鼓動が一気に速くなる。
「知らない?3ヶ月、半年、9ヶ月、1年…飛んで2年、3年…だったかな?別れるカップルが多いんだって」
「し、知らない…」
日住君と金井さんは、8月末に付き合い始めたから、あの涙が別れの涙なのだとすれば、約半年…。
その通説、本当なんじゃない…!?
「そっか。…まあ、そういう説があるんだよ。実際、何かの研究で、人のトキメキって2、3年でなくなっちゃうことがわかってるらしいんだよね」
「そしたら…別れちゃうの…?」
「いや、別れるか別れないかは人それぞれでしょ。何十年も結婚生活送ってる人達はどうなるのさ?」
…両親が離婚してるから、わからない。
おじいちゃんは早くに亡くなっていてあまり記憶がないし…。
そう考えると、身近に長年連れ添った相手がいる人を感じたことがない。
何十年も一緒…憧れる。
「愛情に変わるかどうかが大事なんだってさ」
「愛情?」
「そう。トキメキは2、3年でなくなっちゃうけど、それが家族としての愛情?に変わるかどうかが、別れるか否かの境目らしいよ?」
「じゃあ、私はもう、永那ちゃんのこと、家族って思ってるから、大丈夫かな?」
「な…っ」
永那ちゃんの顔が、見る間に赤くなっていく。
そして、しゃがみ込んでしまう。
「永那ちゃん?」
「穂…ずるいよ…」
「え?なんで?」
「ハァ」と彼女が深く息を吐く。
腕に隠れた顔が少しだけ上がって、彼女の瞳が見える。
「好き」
「私も永那ちゃん好き」
「穂と家族…。そうだね…。家族か」
「永那ちゃんは、違う?」
「違くないよ。私も、穂のこと家族って思ってる。…でも、トキメキもある」
「私も、永那ちゃんにキュンってするよ?」
「キュンってするの?」
「…うん」
自分で言っておきながら恥ずかしくなって、前髪を指で梳いた。
「じゃあ、私達はまだまだ安泰そうだ」
「うん!」
永那ちゃんが立ち上がって、再び歩き出す。
どうやら駅方面に向かっているらしく、そろそろ今日のお散歩は終了なのだとわかる。
「明後日、どうしよっかな~」
「桜が少し、咲いてるかもね」
「まだ咲いてないんじゃない?」
「じゃあ、桜を見つけるお散歩にしない?」
「なにそれ、めっちゃ可愛い。いいよ」
「私、何かおやつ作ってこようかな」
「9ヶ月記念日のプレゼント?」
「うん」
「楽しみ」
永那ちゃんの顔が私の耳元に近づくから、立ち止まる。
「エッチもしたいな」
その囁きだけで、一瞬で下腹部が疼く。
「…ネ、ネットカフェ…行く?」
「ハハハッ」と永那ちゃんがお腹を抱えて笑った。
「な、なに?」
「穂はホント、ネカフェ好きだなあ」
「だ、だって…そこしか思いつかなかったから…!」
「可愛い。…まあ、たしかに、出来る場所限られてるしねー。でも、この前みたいに個室が空いてない可能性があるんだよね。私は、絶対シたいんだよ」
“絶対”を強調される。
流し目に見られて、それが濃艶で、ゴクリと唾を飲む。
「ど、どうしようね?」
「また公園でする?」
「だ、だめ!」
「なんで?」
「しばらくはいいって言ったでしょ?しばらくって言うのは、何年後かの話をしてるの」
「なんだー、そんな後の話かー」
口調は残念そうだけど、表情は柔らかくて、全然残念そうに見えない。
「そうだ!」
「ん?」
「穂の家に行こう」
「え!?た、誉いるよ…?」
「大丈夫大丈夫、あいつ出かけるから」
「え?…え?なんで知ってるの?」
「仲良しだからね」
彼女がニヤリと笑う。
背筋がゾワゾワして、なんだか嫌な予感がした。
「どういう意味?」
「えぇ?意味なんて他にないよ?仲良しだから、知ってるんだってば」
知りたくないから、これ以上聞くのはやめた。
「永那ちゃん」
「なに?」
「明後日さ?」
「うん」
「ピアス、してきてよ」
「ピアス?」
「うん、最近してないでしょ?久しぶりに、見たいなって思って」
「じゃあ、穂」
「ん?」
「お揃いの指輪、つけてきて?」
「わかった」
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