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7.向
480.序開
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「いやいや!永那も千陽も、頭良すぎて勉強なんか教えてくれないよ!?」
初恋の人の名前が耳に入ってきて、思わず声の方を見る。
バドミントン部の子達がストレッチをしながら雑談していた。
「教えてくれるのは穂ちゃんだけだよ~」
「空井さんって性格キツくない?1年の時、同じクラスだったけど、性格キツすぎて正直怖かったもん、私」
「全然!めちゃくちゃ優しいよ!!教え方もわかりやすいし、先生より先生って感じ」
「なにそれ」
「私、絶対空井さんと話せないわ。さすが優里、天然なだけある」
「天然だからこそ仲良くなれる相手だよね」
「私は天然じゃないー!!」
「何回言われてもシャトルを手でキャッチしてた奴がなに言ってんだよ~!」
和気あいあいと話している様子が微笑ましくもあり、羨ましくも思える。
ウチだったら、篠田さんを通じて、初恋の人にお近づきになりたいと思ってしまう。
1年生の時も2年生になってからも、あの人と同じクラスなのは、心底羨ましい。
2年から3年に上がる時にはクラス替えがないから、つまり3年間同じクラスということ。
そしてウチは3年間別々のクラスで、仲良くなるキッカケがない。
「そもそも、永那と佐藤さんと、あれだけ仲良くできる時点でおかしいと思うわ」
「そうかな~?」
「え、わかる。2人とも美しすぎて近づけないもん。一緒にいると自分の醜さが際立ちそう」
「え!?さすがに私はそこまでではないわ!普通に話すは話すし」
「いきなり突き放すなよ~!」
「永那はマジで適当人間だから大丈夫だって、ホントに」
「いや~、無理無理」
「まあ、でも確かに、同じクラスになんなきゃ無理か。佐藤さんは特に、結界張られてる感じするし」
「結界って!千陽はそんなんじゃないけどな~?おっぱいも揉ませてくれるし」
篠田さんの表情が「うへへへ」と蕩けていく。
「それできるの、優里と陽キャだけだからね!?」
「そうそう。まともな人間には無理ー」
「私がまともじゃないみたいじゃん!!」
「「まともじゃないでしょ」」
「ひどい!!」
「うーちゃん?どうしたの?」
彼女に声をかけられ、慌てて振り向く。
「あ…いや…なんでもない。バド部の人達、楽しそうだなって思って」
「あ~、バド部はいつも声かけてくれるし、仲良さそうだし、いいよね」
「うん」
ラケットのグリップを、手の中でクルクル回す。
「麗良、いきなりバド部に入るとか言い出さないでよ!?」
数少ない、部活の同級生が縋り付くように言う。
「言わないよ」
篠田さんとは何回か話したことがある。
話すと言っても、長くてせいぜい1、2分のことで、仲良くなれるほどではない。
バド部のシャトルがこちらに飛んでくることがあって、それを渡す時だったり、休憩時間中に話しかけてくれたり更衣室で着替える時に挨拶をしたりと、場面は様々だ。
仲良くなりたいとは思っても、人数も多いし、なかなか機会がない。
…機会がない、と思い込もうとしていただけだった。
高2のむし暑い夏休みが明けて、数日後、ウチの初恋の人である佐藤さんが、両角さんと付き合っていないことが発覚した。
衝撃だった。
きっと、ウチと同じように佐藤さんを目で追うしかなかった男子諸君も同じように衝撃を受けただろう。
彼女は両角さんじゃない、他の相手がいると言っていたけど、どれだけ噂話を聞き漁ってみても、その相手がどんな人物なのかまるでわからなかった。
だからウチはすぐに気がついた。
これは、言い寄ってくる人間を追い払うための嘘で、本当は相手なんかいないのだと。
ウチの中の何かのスイッチが入った瞬間だった。
バド部は男女一緒に練習しているから、男子は部室で、女子は更衣室で着替える。
ウチら卓球部は、人数が少なすぎて、そもそも部室をあてがわれていない。
だから更衣室は話しかける絶好の機会だった。
「篠田さんのクラスは、カフェなんだ」
バド部の人達が文化祭の話で盛り上がっている中、ウチが声をかけると、彼女が頷いてくれる。
「高野さんのクラスは?」
「ウチのクラスはお化け屋敷」
「へえ!楽しそうだね!」
「準備、かなり大掛かりになりそうで、今から大変だけどね。…ちなみに、両角さんとか佐藤さんは、カフェの店員的なのやるの?」
「う~ん?どうかな?去年は2人とも文化祭、不参加だったんだよね」
「そうなんだ」
どおりで、探したけど見つからなかったわけだ。
「でも今年は、千陽は参加するみたい。文化祭委員になってたし」
「え!?あの佐藤さんが!?」
佐藤さんと元同じクラスのバド部の子が驚愕する。
「そ~!めちゃくちゃ意外だよね!」
「佐藤さんがカフェ店員やったら、繁盛しそうだね」
ウチが言うと、篠田さんの目が輝く。
「確かに!売り上げが良かったら、その分打ち上げ代が安くなりそ~!…絶対千陽に接客やらせよう!」
篠田さんが「高野さん、ナイス!」とサムズアップする。
初恋の人の名前が耳に入ってきて、思わず声の方を見る。
バドミントン部の子達がストレッチをしながら雑談していた。
「教えてくれるのは穂ちゃんだけだよ~」
「空井さんって性格キツくない?1年の時、同じクラスだったけど、性格キツすぎて正直怖かったもん、私」
「全然!めちゃくちゃ優しいよ!!教え方もわかりやすいし、先生より先生って感じ」
「なにそれ」
「私、絶対空井さんと話せないわ。さすが優里、天然なだけある」
「天然だからこそ仲良くなれる相手だよね」
「私は天然じゃないー!!」
「何回言われてもシャトルを手でキャッチしてた奴がなに言ってんだよ~!」
和気あいあいと話している様子が微笑ましくもあり、羨ましくも思える。
ウチだったら、篠田さんを通じて、初恋の人にお近づきになりたいと思ってしまう。
1年生の時も2年生になってからも、あの人と同じクラスなのは、心底羨ましい。
2年から3年に上がる時にはクラス替えがないから、つまり3年間同じクラスということ。
そしてウチは3年間別々のクラスで、仲良くなるキッカケがない。
「そもそも、永那と佐藤さんと、あれだけ仲良くできる時点でおかしいと思うわ」
「そうかな~?」
「え、わかる。2人とも美しすぎて近づけないもん。一緒にいると自分の醜さが際立ちそう」
「え!?さすがに私はそこまでではないわ!普通に話すは話すし」
「いきなり突き放すなよ~!」
「永那はマジで適当人間だから大丈夫だって、ホントに」
「いや~、無理無理」
「まあ、でも確かに、同じクラスになんなきゃ無理か。佐藤さんは特に、結界張られてる感じするし」
「結界って!千陽はそんなんじゃないけどな~?おっぱいも揉ませてくれるし」
篠田さんの表情が「うへへへ」と蕩けていく。
「それできるの、優里と陽キャだけだからね!?」
「そうそう。まともな人間には無理ー」
「私がまともじゃないみたいじゃん!!」
「「まともじゃないでしょ」」
「ひどい!!」
「うーちゃん?どうしたの?」
彼女に声をかけられ、慌てて振り向く。
「あ…いや…なんでもない。バド部の人達、楽しそうだなって思って」
「あ~、バド部はいつも声かけてくれるし、仲良さそうだし、いいよね」
「うん」
ラケットのグリップを、手の中でクルクル回す。
「麗良、いきなりバド部に入るとか言い出さないでよ!?」
数少ない、部活の同級生が縋り付くように言う。
「言わないよ」
篠田さんとは何回か話したことがある。
話すと言っても、長くてせいぜい1、2分のことで、仲良くなれるほどではない。
バド部のシャトルがこちらに飛んでくることがあって、それを渡す時だったり、休憩時間中に話しかけてくれたり更衣室で着替える時に挨拶をしたりと、場面は様々だ。
仲良くなりたいとは思っても、人数も多いし、なかなか機会がない。
…機会がない、と思い込もうとしていただけだった。
高2のむし暑い夏休みが明けて、数日後、ウチの初恋の人である佐藤さんが、両角さんと付き合っていないことが発覚した。
衝撃だった。
きっと、ウチと同じように佐藤さんを目で追うしかなかった男子諸君も同じように衝撃を受けただろう。
彼女は両角さんじゃない、他の相手がいると言っていたけど、どれだけ噂話を聞き漁ってみても、その相手がどんな人物なのかまるでわからなかった。
だからウチはすぐに気がついた。
これは、言い寄ってくる人間を追い払うための嘘で、本当は相手なんかいないのだと。
ウチの中の何かのスイッチが入った瞬間だった。
バド部は男女一緒に練習しているから、男子は部室で、女子は更衣室で着替える。
ウチら卓球部は、人数が少なすぎて、そもそも部室をあてがわれていない。
だから更衣室は話しかける絶好の機会だった。
「篠田さんのクラスは、カフェなんだ」
バド部の人達が文化祭の話で盛り上がっている中、ウチが声をかけると、彼女が頷いてくれる。
「高野さんのクラスは?」
「ウチのクラスはお化け屋敷」
「へえ!楽しそうだね!」
「準備、かなり大掛かりになりそうで、今から大変だけどね。…ちなみに、両角さんとか佐藤さんは、カフェの店員的なのやるの?」
「う~ん?どうかな?去年は2人とも文化祭、不参加だったんだよね」
「そうなんだ」
どおりで、探したけど見つからなかったわけだ。
「でも今年は、千陽は参加するみたい。文化祭委員になってたし」
「え!?あの佐藤さんが!?」
佐藤さんと元同じクラスのバド部の子が驚愕する。
「そ~!めちゃくちゃ意外だよね!」
「佐藤さんがカフェ店員やったら、繁盛しそうだね」
ウチが言うと、篠田さんの目が輝く。
「確かに!売り上げが良かったら、その分打ち上げ代が安くなりそ~!…絶対千陽に接客やらせよう!」
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