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私の予感なんて、大体的外れだ。
*
10月に入ったある日の昼休み。
『ごめん。今日そっち行けない』
いつもよりそっけないメッセージが晴臣から届いた。
私に好きだと言ってから、誰の目もはばかることなく毎日付き纏っていた癖に。
急に何で??
でもまあ、ネットストーカーからの嫌がらせは、遼平くんとの写真の件以来、ほとんどなくなっているし。
お昼は白黒コンビと行けば良いし、別に晴臣がいなくても大丈夫だよね。
不思議に思いつつ、『了解』とこちらも短く返事を送った。
ところがー
「え?今日に限って椎名くん来ないの?」
「ごめん!これから私と飛鳥、次の撮影先で打ち合わせなの」
お財布を手に二人を誘うと、こんな具合でバタバタと出かけるところだった。
「嫌がらせの犯人、まだ捕まってないんだよね?危ないから社長でも誘ってランチに行けば?きっと喜ぶわよ」
私が、遼平くんを、ランチに誘う…?
思いもよらない提案に首を傾げる私に、真由先輩は意味ありげに微笑んだ。
まだ私と遼平くんがどうこうなることを諦めていないのだと、ようやく思い当たった頃には、真由先輩は販促部を発っていた。
そんなことできるわけないと首を振り、仕方なくこの間白黒コンビと行った会社の近くのカフェで一人ランチをすることにした。
少し出遅れたものの、お一人様ということもあり、何とか席にありつけた。
とは言え、ランチタイム真っ只中ということもあり、結構待たされる羽目に。
仕方なくコスメ好きさんのブログやコラムを眺めて時間を潰していると、やっと注文したオムハヤシライスが、デミグラスソースの芳醇な香りをさせてテーブルに運ばれてきた。
「いただきます」と手を合わせ、まさに一口目を口に運ぼうとした時。
「蓮見さん」
と肩を叩かれた。
渋々スプーンを置き、聞いたことのあるような、ないような男性の声を頭の中で検索しながらゆっくりと振り返る。
「…ごめんなさい。誰だっけ?」
顔を見てもピンと来ないので素直に尋ねると、相手は派手にコケる真似をした。
「小宮山!同期の小宮山!!この前祝研修明け☆新入社員親睦会で話したじゃん」
思い出した。
この人に絡まれて、晴臣にキスされたんだった。
名前すら知らなかったけど。
「あの…その節はどうも。小宮山くんもお昼?」
「いや、俺は社食で済ませた」
「え?じゃあ、何でここに?」
「それは、コレ見て」
見せられたスマホの画面に戦慄が走る。
それは紛れもなくついさっき、この店で、オムハヤシライスを待っている間、スマホを眺めている私の姿だった。
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10月に入ったある日の昼休み。
『ごめん。今日そっち行けない』
いつもよりそっけないメッセージが晴臣から届いた。
私に好きだと言ってから、誰の目もはばかることなく毎日付き纏っていた癖に。
急に何で??
でもまあ、ネットストーカーからの嫌がらせは、遼平くんとの写真の件以来、ほとんどなくなっているし。
お昼は白黒コンビと行けば良いし、別に晴臣がいなくても大丈夫だよね。
不思議に思いつつ、『了解』とこちらも短く返事を送った。
ところがー
「え?今日に限って椎名くん来ないの?」
「ごめん!これから私と飛鳥、次の撮影先で打ち合わせなの」
お財布を手に二人を誘うと、こんな具合でバタバタと出かけるところだった。
「嫌がらせの犯人、まだ捕まってないんだよね?危ないから社長でも誘ってランチに行けば?きっと喜ぶわよ」
私が、遼平くんを、ランチに誘う…?
思いもよらない提案に首を傾げる私に、真由先輩は意味ありげに微笑んだ。
まだ私と遼平くんがどうこうなることを諦めていないのだと、ようやく思い当たった頃には、真由先輩は販促部を発っていた。
そんなことできるわけないと首を振り、仕方なくこの間白黒コンビと行った会社の近くのカフェで一人ランチをすることにした。
少し出遅れたものの、お一人様ということもあり、何とか席にありつけた。
とは言え、ランチタイム真っ只中ということもあり、結構待たされる羽目に。
仕方なくコスメ好きさんのブログやコラムを眺めて時間を潰していると、やっと注文したオムハヤシライスが、デミグラスソースの芳醇な香りをさせてテーブルに運ばれてきた。
「いただきます」と手を合わせ、まさに一口目を口に運ぼうとした時。
「蓮見さん」
と肩を叩かれた。
渋々スプーンを置き、聞いたことのあるような、ないような男性の声を頭の中で検索しながらゆっくりと振り返る。
「…ごめんなさい。誰だっけ?」
顔を見てもピンと来ないので素直に尋ねると、相手は派手にコケる真似をした。
「小宮山!同期の小宮山!!この前祝研修明け☆新入社員親睦会で話したじゃん」
思い出した。
この人に絡まれて、晴臣にキスされたんだった。
名前すら知らなかったけど。
「あの…その節はどうも。小宮山くんもお昼?」
「いや、俺は社食で済ませた」
「え?じゃあ、何でここに?」
「それは、コレ見て」
見せられたスマホの画面に戦慄が走る。
それは紛れもなくついさっき、この店で、オムハヤシライスを待っている間、スマホを眺めている私の姿だった。
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