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本当の嘘

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高嶺くんが再会してから一番ご機嫌なのは、私が高校時代の瓶底眼鏡姿を披露したから。

「やっぱお前はこう・・じゃないとな」

なんて言いながら、私のアパートの6畳のリビングで笑い転げている。

ソッチの展開を想像した皆さん、ごめんなさい。

オシャレにはとにかくお金がかかる。
瑞希と出会って、痛感した。
洋服、靴、スキンケア、コスメ、美容室からエステまで。
転校してから高校と大学時代はバイトに明け暮れていた。
Love Birdsだってベンチャー企業だから、副社長といえ贅沢三昧の生活ができるわけではない。

今までハードコンタクトでトラブル知らずだった私は、眼鏡作りを後回しにし続け、その結果、コンタクトが割れた今、視力を矯正する道具が高校時代から使っている瓶底眼鏡しかなかったのだ。

とりあえず、機嫌が直ったみたいで良かった。
このままお腹がいっぱいになれば暴れだすことはないだろう。

「お弁当、温め直すね。お味噌汁もいる?」

ご所望のお茶を出し、そそくさとキッチンへ向かおうとすると、スカートの裾がぐん、と引っ張られた。

「ちょっと待て。飯の前に大事な話があるからここに座れ」

言いながら、高嶺くんは大真面目な顔で自分の膝の上を指差している。

やっぱり、そんなに甘くはなかった。

─近い。

「あのさ、俺はお前のなんなわけ?」

──近すぎる。

「おい、聞いてんのか?」

「は、はいっ!か、カ、彼…氏ですっ!!」

超至近距離で顔を覗き込まれ、やっと返事をした。

膝に座れと言われても「はい、分かりました」と言える訳もなく。
横向きで座るか、後ろ向きで座るか迷いながら、犬みたいに高嶺くんの周りをぐるぐるしていたら、腕を掴まれ、向い合せで座らせられてしまったのだ。

「じゃあ何で俺じゃなくて東海林アイツに頼ってんだよ。近くにいるって知ってただろ?言えよ」

「でも、あの…高嶺くんずっと忙しそうだったから」

「そんなこと気にすんなよ。お前、俺の彼女だろ」

自覚が足りないとか小言を言われているのに。
どうしよう…すごく、嬉しい。

なんて浸っていたら、急に話が変わった。

「それと…お前の例の設定・・・・ってLove Birdsの公式情報にでもなってんの?」

「え…と、うん、まあ。けっこう瑞希が言いふらしちゃってて」

「マジかよ…。『嘘・大袈裟・紛らわしい』にもほどがあるだろ。JAR●に通報してやろうか」

それは困る。
せっかく瑞希と苦労してようやく軌道に乗りかけたのに。
高嶺くんが通報したら、普通の人が通報するより影響力大きそう。

「で、でも、真っ赤な嘘ってわけでもないし!」

焦って口をついた常套句が気に入らなかったのか、高嶺くんが眉を顰めた。

「じゃあ、本当の嘘にしてやるよ」
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